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2011.02.10

『死者の短剣 惑わし』

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死者の短剣 惑わし』(ロイス・マクマスター・ビジョルド/創元推理文庫)

以下には作品のネタバレになります。未読の人で、自分のように読みながら呆気にとられたい人は回避をお願いします。

”基礎感覚”と言う特殊な能力を持った「湖の民」とそれ以外の「地の民」と言う二つの人種が暮らす国で、地の民の娘フォーンは、湖の民の警邏隊の出会った事で奇妙な運命に巻き込まれる。過去に妻を亡くした湖の民ダグは、悪鬼との戦いに巻き込まれたフォーンと出会い、助ける。二人は協力して悪鬼に立ち向かうが・・・と言うところから物語は始まります。フォーンは、いわゆる常に前向きで向こう見ずないわゆる行動的ヒロインで、なるほど彼女の行動によって、男やもめで陰のあるタグの背中を支えて活躍する話になっています。・・・・・・少なくとも最初は。いやーちょっとこれはびっくりしたなあわはは。

”悪鬼”と言うのは、一見人間に良く似ているものの、人間の範疇からは外れた不死の怪物で、奴らを倒すためには”死”と言う概念を押し付ける必要がある。そこで必要となるのが”死者の短剣”と言うアイテムの存在ですが、正直、このあたりの設定は”あまり意味がありません”。そもそも、悪鬼との死闘自体はなんと物語の中盤で解決してしまいます。いや、そこに至るまでには、フォーンとダグの交流があったり、ツンデレったり(主にダグが)するんですが、決着があっさりついてしまって、バトルこれで終わりかよ!!と開いた口が塞がりませんでした。

で、残った頁で何をするかと言うと、フォーンとダグは、まあロマンスでキャッキャウフフをしてラブラブになるんですが、なにぶん二人は地の民と湖の民と言う、お互いに隔意のある人種。さらに年齢差も親子ほどに違う(フォーンは確か10代~20代前半で、ダグは推測だけど40歳ぐらいかな?ロリコンか貴様ー!)。まあロミオとジュリエットと言うほどじゃないけど、あんまり結婚は歓迎はされない関係なわけです。

そこで始まるのは二人の”結婚奮闘記”。まずはフォーンの実家に言って、ダグが男らしく「娘さんを嫁に下さい!」と来るわけですよ。勿論、そう簡単には受け入れられなくて悪戦苦闘が続くのだけど、この結婚を認めさせる過程がものすごく詳細に、丁寧に描かれているのです。「あれ?自分は異世界ファンタジーを読んでいたはずなのに、なにこのNHKのドラマは?」と再びびっくり。

その結婚奮闘記パートがまた、いかにして結婚を認めさせるかと言う駆け引きや、強行に反対する家族に、一人賛成してくれるおばあちゃんとか、ものすごく”日常劇”としての品質も高く、作者はガチでやっているのが良く分かるので、決して中途半端な感じはしないし、面白いものになっているように思います。

つまりこの作品は「大変な冒険を共に過ごした男女が恋愛関係になるのはフィクションでは良くあることだけど、それから実際に交際を始めたら大変なのよ?」と言う話なのですね。その恋愛感情が非日常が生んだ幻ではなく、それ以降も継続して持ち続けうる本物であることを周囲に示さなくてはならないという、ものすごく”現実的”な話です。なんと言うか、異世界ファンタジーロマンスの”裏側”を描いているような感じです。意外とありそうでなかったその発想にすごく感心してしまいました。

まあ、こういうことはハーレクインでやれ、とちょっと思ったことは内緒です。

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