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2011.02.08

『アクセル・ワールド(6)』

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アクセル・ワールド(6)』(川原礫/電撃文庫)

前回、ハルユキに発現してしまったクロム・ディザスターを浄化するために新しい新キャラ登場と、当然の如く順当な展開。クロム・ディザスターが問題になるのは当たり前だし、その問題の解決策をさぐる過程で、浄化能力を持つ新キャラ、そして新キャラのお披露目とキャラ立てをきちんと見せて、その上で浄化を行うための問題を解決しようとする。このあたり実に王道と言うか当然の展開なんだけど、それを陳腐なものにしないで面白いものになっているのはさすがの一言。川原先生は、まったく物語的に奇を衒うことしない人ではあるのだが、その上でエンターテインメントに徹することの意味をきちんと理解しているのが、すごいな。願望充足の物語に過ぎないといえなくもないのだけど、ただの願望充足ではなく、充足するための問題と克服の過程がきちんと描かれているので、文句をつけにくいんですね。もちろん文句をつけるつもりなんてないけども。

新登場の四埜宮謡は、ロリで健気でハンディ持ちと、この上なくあざといキャラ設定でありながら、彼女の持つコンプレックスと、コンプレックスと付き合うための手段としてのバーストリンクの関係から、もう少し底の深いキャラクターになっているように思います。正直、こんな母性に満ち溢れた小学生とか男の願望むき出しなので(少なくとも当初は)辟易してしまった事をここで告白しますが、その裏側の苦しむ心までをきちんと描かれてしまっては何を言うことはありません。まったくやってくれるぜ川原先生は。

内容については、今までモラトリアムと言うか積極的逃避の場として機能してきたバーストリンクの世界で、ついに”克服”の時期がやってきたのかな、という気がします。そもそも設定上からして子供の時期にしか存在しない空間であり、心に傷を抱えた存在がその傷をさらけ出すことによって強くなるという世界だったバーストリンクですが、今回のハルユキは「逃げ場としてのバーストリンクを守るために己の暗黒面であるクロムディザスターを乗り越えなくてはいけない」んですね。逃げるために立ち向かわなくてならない、と言うのは実に納得できます。これならば基本的にヘタレであるハルユキが最後の逃げ場さえ失ってしまうという恐怖から、克服への勇気を振り絞るという後半の展開にも”理”が敷かれているので、ダメダメなハルユキがカッコよくなってもまったく不自然ではない。これは本当に上手いなー。

で、今回は克服への勇気を搾り出したところで終わったわけですが、実際にどのように克服していくのか(あるいは出来ないのか)は次回のお楽しみと言うところですね。おそらく王道を好む川原先生ならば、クロムディザスター(すなわち己の暗黒面)を認めて自分の力として受け入れる展開になるのではないかと思うのですが・・・。さて、どうでしょうね。

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