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2011.02.17

『じんわり君臨!! 邪神大沼(5)』

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じんわり君臨!! 邪神大沼(5)』(川岸殴魚/ガガガ文庫)

相変わらず非常にくだらない。もちろん良い意味で。今まで延々と脇に置き続けたグールCにスポットが上がり、彼の最後の瞬間が描かれる。カリスマと知性と兼ね備えた腐った死体であるグールCが、生徒会長を引退するとき、彼の後継者争いが勃発する。邪神にして生徒A的な本来ならばモブキャラレベルの存在感しかない主人公の(はずの)大沼は、果たして生徒会長選に出馬をするのか?たぶん勝てそうもないのでやめた方が身のためだが、そんな当たり前の行動が許されるのならば、そもそも邪神になどなってはおるまい。ヒロインにさえ(本当に)邪険にされつつ恋愛フラグの立ちそうな相手はスターターキットのナナだけと言う悲しみを背負った大沼の明日はどっちだ、みたいな話。たぶん。

そういうわけで生徒会長選挙の回なのだけど、グールCと言う今まで育ててきた手札をここで切るとは、作者も惜しげも無いといわざるを得ない。正直、グールCが動きときはこの作品が終わる時だとさえ思っていたので、まさかシリーズ終了が近いのか?などと思うと不安でいっぱいだ。まあそれはともく。

基本的にやる気も人気もないのに無理矢理立候補をさせられた大沼が、流されるままに演説、ネガキャン、人気取りなどに奔走しつつ、対立候補を戦っていく話になる。普通、こういう話だと、活動を通じて主人公がなにやら感得するものがあったりするものだろうが、そこは作者一流のセンスによって、見事なまでにろくなことにならない。もともとは乗り気ではなかったとは言え、一応、大沼君とは真面目にやっているのに、まったく報われない上に人間的成長にも結びつかないあたりはさすがと言わざるを得ないところです。このあたり、読者に媚びずに己のユーモアを貫くという姿勢には感福するほかはない。

クライマックスにおけるディベートのシーンさえも、なんとなく場面は感動的なような気がするのだけど、冷静に考えるとはやっぱりグダグダで、それが作中にさえも共通認識になっているところが良かった。大沼君が出せる精一杯であるということは明確に語りつつ、それが持つ限界と、同時に希望(全員には届かなくても、(特定の”誰か”には届いたかもしれないと言う希望)を示しているように思える。そこを物語の安楽さに逃げるのではなく、きちんと言葉に対して向き合っているという感覚がある。

それは、あくまでもユーモアに包みながらも、現実の冷酷さとはかなさから目を背けずにいるという意味で、非常に誠実な描き方であると思えるのです。

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