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2011.02.07

『θ(シータ)―11番ホームの妖精』

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θ(シータ)―11番ホームの妖精』(藤真千歳/電撃文庫)

これは電撃文庫から良く出版出来たものと感心しました。まあ作品としては、『スワロウテイル』と同様に、人工的で不老不死な少女がすべてから取り残されていく様を情緒豊かに語っているわけで、作者は本当に人工少女が好きだなあ、と思いました。そういう意味で大変に”ガチ”な作品。対象への愛が溢れまくっています。ただ、溢れすぎていて、いささかライトノベルとしてのバランスは完全に度外視されているんだけど、おそらく出版するにあたってキャラ萌え的な描写が追加されているため、ちょっとキャラクター間の会話が長くなりすぎたようにも思います(と言う感想はライトノベルに対してどうなんだ)。そのため全体的な物語のバランスがさらにおかしなことになっています。とくに最後のエピソードがバタバタしすぎている感じで、ちょっと話が詰め込みすぎと言うか、前振りのわりにはそんなに大きな話でもなかったかな、みたいな。とは言え、これ以上会話を削るとキャラクター描写にも支障が出そうだし…ううん。結局、物語に対して、設定が精密すぎたのかもしれないのかもしれません。あまりにも精密に奥行きのある設定を構築してしまったため、物語が否応なしにビッグスケールになってしまうところをなんとかヒロイン達のミクロの物語に落とし込もうとしているところに無理が生じている、のかも?

つまり、何と言うかものすごく勿体無い作品だったとも言えます。これだけのバックボーンがあれば、本来ならばもっと大きな範囲での物語を描けたはずで、事実、作品内で起こっている事件は、どちらかと言えば舞台外での駆け引きがあったのだろうな、と想像させるところもあって、それを11番ホームのみに物語を限定していることから、このバランスの悪いなあ、と感じるところがあるのかもしれない。

ただ、これは作者の責かと言うとそうでもなくて、そこまで視点が移り変わる作品はおそらくライトノベル作品では売れないので、ギリギリの判断ではなかったかとも思います。あくまでもヒロインとその周辺を描くことに集中したと考えれば、充分にヒロインの永遠の少女であることの孤独と悲しみ、そして気高さを描いていると思います。SF的な作り込みは雰囲気だけに留め(しかし、断片的に見える設定の濃厚さには痺れる)、あくまでの少女を描く。これはこれで正しいのでは無いでしょうか(まあ、物語的には断片を見せられているような隔靴掻痒はあるけれど・・・)。

この作品を受けて、『スワロウテイル』が描かれたのだとすれば、確かに正しい、そして理想的な飛躍であろうと思います。人工少女の孤独は描いた。あとは濃密なまでの設定に基づいたSFワンダーな物語があれば、歯車の両輪はまわり始める。作者の書きたかった作品はおそらくあそこにあったのだろうな、と納得するとともに、一巻が出ただけで続編の出る気配のない今作の続きを期待せずには入られません。FBたちの物語はまだまだ語られるところがありそうじゃないですか。あるに決まっていますよ。あるね。

と言うわけで続編が出ないかなあ。

(と思いつつ、これで語りを収めると言うのも広がりがあっていいのかもしれない・・・が、やはりあれが欲しいよう!)。

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