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2011.01.27

『ココロコネクト キズランダム』

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ココロコネクト キズランダム 』(庵田定夏/ファミ通文庫)

正直、この時点で稲葉姫子を”落としてくる”とは思わなかったので意外でした。もし彼女のキャラクターを”落とす”にしても、もう少し話を積み重ねた、言ってみればクライマックスになるまで引っ張ると思っていたんですね。ところが二巻目にして早々に彼女を事態を超然と見守る役から引き摺り下ろしたあたり、作者はなんかすごく分かっててやっている感があるなーと思いました。と言うのは、彼女は如何なる状況に陥っても常に冷静さを保ち、自体の打開を図る万能タイプのキャラだったからです。涼宮ハルヒで言えば要するに長門エモンと言うか、事態に翻弄される主人公たちと、それを現実的に解決する役回りです。まあ彼女も巻き込まれている被害者ではあるんですが、どこかその状況を客観視し、冷静に事態の推移を見守っている雰囲気がありました。

そうしたある意味においては他の登場人物たちよりも高みに立っているかと思われた姫子ですが、しかし、そうした姿は今回の”欲望解放”によって脆くも打ち壊されます。あくまでもクールで超然としていた彼女の姿は、実は仮面でしかなく、本来の彼女はもっと弱いし臆病なところもあった少女でしかないということがさらけ出されます。これは姫子のようなタイプにとっては本当にキツイ。自分の内面を知られることを恐れる、まあいわゆるムッツリなタイプである姫子は、自分の考えていることが明らかになるなどと言うのは死ぬほど恥ずかしいことでしょう。たぶんエロ本を読んでいた事が発覚してついでに性癖まで暴露されるぐらい恥ずかしい(まあ彼女の場合、本心が明らかになることで人間関係が変化することを恐れるという側面もあるわけですが)。そうやって、それぞれがキャラ性として構築していたペルソナを、情け容赦なく剥ぎ取っていく作者は、ライトノベルと言うものを分かってて崩している感じがあるなあ、と思うのでした。

さらに言えば、2巻の時点でも、未だに主人公の”自己犠牲野郎”っぷりが崩れないのも面白い。主人公の太一は、いわゆる”理由もなく他者を助ける”と言う典型的ヒーローな行動原理を持っているわけですが、欲望解放によって、彼のヒーロー行動によって傷つく人が出てくるあたり、作者は主人公の行動原理を無条件に肯定しているわけではなさそうです。それでいながら、彼の行動が結果的には救いにも繋がって行く。このあたり、”理由なきヒーロー”を突き詰めていくような感じで興味深いです。なんとなく彼の”理由”と言うのも描かれそうな雰囲気もあるけど(作中で何度も太一の行動は批判されている)、それは物語の根本に関わるのかもしれません。彼がこのまま”理由なきヒーロー”を貫くのか、あるいは作中で解析され”理由のあるヒーロー”へクラスチェンジするのか、ちょっと面白いところだと思います。なんかちょっと過去に原因がありそうな気もするけど。

そういや姫子が万能キャラの立場から降りた結果、どうやって物語を展開させるのかと思っていたら、まさかの藤島麻衣子が”覚醒”するとは想像の外でした。事件にはまったく関与しないのになんだこの強キャラぶりは…。いきなりデウスエキスマキナっぷりを発揮しだした時はどうしようかと思いました。なんだろう、彼女の存在は強力すぎて、どんな立ち位置なのかさっぱりわからんぞ…。

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