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2011.01.13

『羽月莉音の帝国(5)』

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羽月莉音の帝国(5)』(至道流星/ガガガ文庫)

今更一巻から感想を書くのがめんどくさいシリーズ。だらだやっているうちにいっぱいそういうのが出来てしまった……。

一介の部活からゆくゆくは世界征服を実行しようとする革命部の活動を、異能も超常現象もなく描くシリーズ。なにはともあれ”世界征服”をリアルなものとして(現実的と言う意味ではない)手順を踏んでいくストイックさは圧倒的なものがある。登場人物たちが資本主義と弱肉強食を是としているので、自分のような負け組タイプにはいろいろきっついところも多いのだけど、”世界征服”を実行しようと言う人間ならばこの世のすべてを敵に回す覚悟はあるだろうし、貪欲であることは美徳と言えるでしょう。ヒロインである羽月莉音からして、目的のためには他者を食い物にすることを恐れないあたり反発を覚える人もいるかもしれませんが、徒手空拳で世界に立ち向かうためには、あらゆるものを利用していく必要がある。それを考えれば、充分に良心的な行動であるとも思えますね。まあ初期革命部の資金集めではヒロインの一人である沙織はわりとひどい目にあってたけど、あそこで資金が稼げなければその後の展開もありえなかったわけで。

一巻のときは相当にひどい行動が目立った莉音についても、5巻まで読んでみれば革命部の先のことまで見据えての行動であったこともわかります。少なくとも彼女は強権的なエゴの持ち主ではなく、むしろ目的のためには自らを度外視することさえも可能な現実主義者であることが分かってきます。そして、そのような現実主義者が、いかに世界征服を成し遂げるのか、と言うおよそありえない前提条件のもとに動くこの物語は、非常にわくわくするものがある。少なくともそこにはロマンがあることは否定できません。ただの高校生が”現実的”に世界を支配していくということ。なんの力を持たない主人公が、経済を経由して世界を動かす流れに参画していこうというものは、やはり熱いものがあると思います。

もともと作者の本業は会社経営であるようで、具体的な事例を用いた経済の説得力はすごいものである。もちろん普通のことをやっていては世界征服なんての夢のまた夢なので、莉音の起す戦略はかなり幸運に支えられたものであることは確かながら、「もしかしたら可能かも…?」と言うギリギリのところを綱渡りをしているところは評価するべきのようにも思います。そして、正攻法ではどうにもならなくなったところで、作者の豪腕で事態を動かす。このあたりは評価が分かれるところかもしれませんが、自分はジャンルラノベを上手く使いこなしているように思えるので好感が持てました。大変クレバーですよね。

そんな感じ。

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