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2011.01.21

『スノウピー(2) スノウピー、憤慨する』

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スノウピー(2) スノウピー、憤慨する』(山田有/富士見ファンタジア文庫)

前回、ようやく他者との”つながり”を実感することが出来た主人公の次のステージで四苦八苦する感じが妙にリアル。主人公は他の人には理解されない世界を生きてきたこともあり、ある意味において幻想世界の住人であったわけだけど、前巻において、彼は幻想世界の住人であることを止め、現実の世界で生きる事を選択した。それは、それまでは自分一己で完結していた完璧な世界よりも、不完全でイビツな多くの人々の中で生きる事を選んだという意味でもある。それ自体は、ある意味においてめでたしめでたしの物語ではあったものの、今まで人々と共有するスペースを持ち合わせていなかった主人公にとっては、ここからがもっとも大変なことなのだった。

と言うわけで、冒頭から、”関係性”と言うものを根本的に勘違いした主人公の迷走が始まります。その行動は、普通に考えればどうしようもないほどに間違った行為なのだけど、そもそも主人公には”普通”と言うものに対してまるで理解をしていなかったと言うことを意味します。それを非難することは簡単ですけど、自分はあんまりしたくない。誰だって苦手なことはあるし、嫌いなことはどんなに頑張っても好きにはなれないことがあるのと同じように、彼にとってはそれは”他者との交流”であったというだけですからね。それでもなお、なんとか他者と交流しようとしているところは、まだ偉いと思うとともに、若いなーと思いました。

いやね、話はぜんぜん違うけど、年をとってくるとだんだん”相手の事”がどうでも良くなってくるんですよ。それに人間と付き合うのが嫌いなら、無理してやることもない。それは”劣っている”ことではなんでもない。ただ、人間には得手不得手と言うものがあり、たまたま”他者との関係構築能力は社会的には重要”であるに過ぎないからです。社会生活上は不便ですけどね、それはあくまでも”社会”と言う価値基準に則ったものに過ぎないので、社会的に不利になることはあっても”恥じることではない”はず。まあ他者より自分が劣っているというコンプレックスはなかなか拭い難いものではあるんだけど。

閑話休題。

他者との交流スキルに乏しい主人公は、とりあえずなんとかしようと周囲の真似をしようとする。これ自体は至極まっとうな判断で、そうして人間は交流方法も学んでいくことになるのだけど、いかんせん独学の悲しさ。その方法論の本質を理解していないものだから、結果的に人間関係をこじらせることになる。自分では精一杯にやっているつもりなのに、何故、上手くいかないのか苦悩することになるのです。そして、自分の行動で”自分自身が傷ついている”と言うことさえも気がつかない主人公に対して、ついにスノウピーが動くことになります。今回の彼女は怒ります。烈火の如く激怒しています。なぜなら主人公が”まったく自分を見て”くれていないからです。自分を見ないままに言葉を発しているからです。その不満と怒りを直接的に叩きつけること、それを恐れないこと。それこそがコミュニケーションの基本であるとともに、歳を重ねるにつれて、それを実行することは難しくなります。人間関係に計算が生じるからですね。しかし、スノウピーはそうした計算とは無縁の、純粋な感情のカタマリであり、それこそが閉塞し、窒息しかかっていた彼を救うことになるのです。

そもそも主人公やったことが上手くいかなかったのはまったく当然の話であって、なぜなら彼はコミュニケーションをするつもりで、実は”相手の事”をまったく考えていなかった。より正確に言うならば、”相手と自分の事”を考えていなかったのです。それゆえに、彼の行動は、”相手と自分”傷つけるものにしかならなかった。その彼にコミュニケーションの向こう側にいる”相手”の存在を激烈に主張したスノウピーの存在は、おそらく彼にとっては青天の霹靂のようなものだったと思います。コミュニケーションとは相手を理解しようとする行為そのものであり、理解のないところに交流は存在しない。ついに彼はその一端に気がつくことが出来たのです。

それはようやくかもしれないけれども、学ぶことに遅すぎるということはない。一歩づつ、理解していけばいいのです。彼が間違った時は、再びスノウピーが怒ってくれるでしょう。そしていつかは”自分の事を理解して欲しい”と思う時もやってくるでしょう。その時にはまた喧嘩することがあるかもしれないけれども、それはそれでいいのでしょう。大切なことは、きっとそういうところにあるのだろうから。

あと、ちゃんと可香谷さんにも言いたいことは言わなきゃ駄目だぞ。

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