『バカとテストと召喚獣(8)』
『バカとテストと召喚獣(8)』(井上堅二/ファミ通文庫)
6巻が出たあたりで読み始めて、おもしれーなーと読み続けていたのだが、今更1巻から感想を書くのもめんどくさいし、何より書くことが思い出せないので8巻から感想を書くことにするぜ!と言っても、一応、この本を読むスタンスを説明すると、単なる能天気なバカコメディ、よりはもうちょっと面白い作品ではないかなーと思います。キャラクター偏重のいわゆるラノベではあるんですが、キャラクターの使い方が非常に贅沢かつ濃厚で、かなり尖っているんですね。
具体的に言えば、男性キャラの使い方が非常に多彩。ラノベ(あとギャルゲー)において、美少女キャラのレパートリーは大概カオス化しており、もはや極彩色の様相を呈しているものの、男性キャラのキャラ分けと言うのは”主人公の友人”レベルが関の山。(無論、そうでないのもあるけど、あくまでも印象論あるいは一般論ね)。ところがこのシリーズに限っては、主人公の悪友たち(メインが3人いて、それ以外にモブがやたらと出張ってくる)のキャラクターが実に多彩。ややもすると、主人公とヒロインの関係よりも、主人公と男友達との関係に描写が割かれているようにさえ思える。さらに登場してくる美少女キャラの中では、主人公とはぜんぜん関係ないところで人間関係が構築されていたりする。この悪友とわいわいとバカな会話をしたりアホなことをしたりするのが、とても楽しそうに描かれているのが印象的です。自分の記憶だと、ここまで男友達との関係が楽しそうに描かれているのは、ラノベじゃないけど、ヤマグチノボルのグリーングリーン頃まで遡らないと記憶にないなあ。あと、男友達描写が楽しそうと言うのにも通じるですが、恋愛関係に以外の描写にもベージが割かれているのも好ましいですね。主人公のお姉さんとか…は、ちょっと肉親の感情からは外れているような気もするけど、登場人物の親兄弟、あと大人(先生たち)なども、わりと普通にキャラが立っているし、それぞれの関係もきちんと描かれたりしている。相談Q&Aとか変則的な形も多いけど、そのあたりさえも、物語世界を主人公たちの周辺だけに留めるのではなく、もうちょっと大きいところを描こうとしているように思います。
まあ、そうは言っても、基本的にキャラクター偏重のライトノベルの範囲内ではあるんですが、キャラ偏重を極めれば、主人公たちだけではなく、その友人や、友人の友人や、家族や家族の友人や、あるいは先生の、先生同士のキャラクター関係図まで描くことにまで意欲的なこの作品は、関係性の物語としてもう少し評価されてもいいのではないか、と思うのです。
8巻の内容は…まあ、ことさらに語るべき内容は無いです。勿論、つまらなかったという意味ではないですよ。相変わらずものすごく楽しい。その楽しさが、必ずしもラブコメ的な楽しさではないところもいいですね。ただ、多彩なキャラクターがそれぞれにやりたいことをまっとうした結果、面白くなっているという感じなので、細かいところを言うことが思いつかないんですよね。今回はいいけど、今後感想を書くのに苦労しそうだなあ。
あ、あと少し気になるのが、この作品、コメディなんだけど、ツッコミやボケが洒落にならんほどに痛そうなんですよね。と言うか、普通に死ぬだろ、と。これが完全な不条理ギャグとかなら、ギャク漫画時空が発生しているんだな、で済ませられるんだけど、普段は普通にライトノベルをしているところ、なぜかボケとツッコミのところだけにギャグ漫画時空が発生するもんだから、その落差から来るショックを覚えます。この作品の中で、バイオレンスなボケツッコミ部分だけはどうしても素直に笑えねー…。そこが不思議と言えば不思議。
(ぜんぜん関係ないけど、美少女キャラと書くのに対し、男性キャラと書いてしまうのは何故だろう。いや、女の子はみんな美少女描写されているのに、男は別にそんな描写がないからなんだけど…うん、自分の中の偏向に気がついたよ。本来なら美少女/美少年あるいは少女/少年と書かないといけませんね)
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