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2010.12.27

『狼と香辛料(15) 太陽の金貨(上)』

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狼と香辛料(15) 太陽の金貨(上)』(支倉凍砂/電撃文庫)

ロレンスとホロの関係もほぼ鉄板と言うか、共にいることの喜びも別離の悲しみもすべて一切合切を受け入れた関係になっていて良い関係だなあ、と思いました。いつまでも共にあることは出来ない関係ではあるが、それが今、共にいることの喜びを減ずるものではなく。いま、この一瞬の喜びを享受する、と言うか。まあこれはちょっと綺麗な言葉を使い過ぎかな。実際にはロレンスはまだグダグダしているし、ホロも未練だらけなので、そんなに割り切れているわけでも、悟っているわけでもない。まあそんなもんでいいと思うし、そうであるべきとも思うけれどもね。

以前から何度か名前の出てきたミューリの名を冠する傭兵団を探してレスコの街にやってきたロレンスとホロが、そこで今まで幾度か対峙してきたデバウ商会のもう一つの側面を見るという話になっていて、商人と言うものの二面性と言うか、物事を善悪ではなく利益で語るデバウ商会の良い側面が出ているようであります。今まで物語を読んでいると、デバウ商会がまるで悪の枢軸のような印象さえ受けいてたのだけど、実はその行動にはさまざまな意味があり、時代の流れを読んだ行動であったことが今巻で明らかになる。まあ言い方を変えればあくまでもデバウ商会は己の利益を追求しているだけなんだけど、彼らの行動により、さまざまな雇用や流通は活発になり、変わりつつある時代の中で多くの人々に影響を与えていくことになるわけです。

デバウ商会の本拠地で、思わぬ人々の暮らしぶりを見て、ロレンスの心は揺れ動くことになるわけです。もしかしたらここは自分の夢をかなえる地なのではないか。その賭けに出るための時期なのではないか。正直、こういう未知な状況に飛び込むのは不安がいっぱいで、リスクが高いように思えてしまう。もしかしたらデバウ商会は裏では何かを企んでいるのかもしれない。ここでうっかり乗ってはいけないのかもしれない。ただ、決断をしなくてはならない時と言うのは確かにあって、それで失敗をすることを恐れていては、失敗はしないにしても成功もないというのは、使い古されてはいるが確かなことではあります(勿論、あえて失敗はしないために行動しないという決断も同様に尊重されるべきですが)。

その決断によって、ロレンスとホロの関係も大きく変わることになる。と言うより、はっきりと別れの時が近づいているのが、本人たちにも理解出来るようになって来ます。まあこの二人の結末がどうなるにせよ、後悔を残した終わり方はしないだろうという物語的な信頼はあるので見守りたいと思います。もっとも、デバウ商会がらみでもう一波乱くらいはありそう。これ一冊で見事なカタルシスがあるので忘れがちだけど、なんつっても上巻だしね。

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