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2010.12.08

『とある飛空士への恋歌(2)~(4)』

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とある飛空士への恋歌(2)~(4)』(犬村小六/ガガガ文庫)

4巻が出た時点で、さすがに一巻を読んで放置していたシリーズを読破することにした。2巻~3巻途中まではカルエル君の無邪気(≒バカ)ぶりにハラハラしつつ(意訳:こいつウゼー)、あんまり好きにはなれなかったんですが、そこから4巻にかけて、犬村先生の描写の美しさに気がつき、面白く読めるようになりました。

そもそも、とある飛空士シリーズは、と言うより、犬村小六先生は実は自分にとって必ずしもすべて肯定できる作家ではないんですね。好きな部分もあるけど、同じくらいあまり好きになれない部分も多い作家なのです。時折、ものすごく美しいイメージを描写するかと思えば、一点、ものすごくあかぬけない場面を描くこともあって、びっくりしてしまう。空が広がっていくような美しいイメージを描くかと思うと、一方で耐え難いまでにベタベタなコメディ調になったりする。

まあこのあたりは好きな人もいるんだと思いますが、どうもバランスが悪く感じます。作者自身が自分の作風を徹底仕切れていないというか、悪く言えば”雑”なんですね。なんでわざわざそんな事を書くのか分からないような部分があるので、読んでいて困ってしまう。あと、主人公やその仲間たちの感情の動きについても、納得がいかないわけではないんですが、納得のさせ方が分かり易すぎるのがちょっと困りますね。このあたりは感覚的になってしまうので明確に指摘できないんですが、身も蓋も無い言い方をすると小説的ではなく脚本的と言う気がします。会話描写などは特にそのように感じますね。拭いきれない不自然さがあると言うか……。

しかし、一方でものすごく美しいイメージがあるのも事実。一番強かったのは4巻のラストシーンとか、ただ綺麗なものを見たような震えがある。積み上げているのは王道と言うか一つ間違えば陳腐な描写ではあるのだけど、その積み上げていったものはとてもとても美しいものでした。それまで積んできたクレアや学徒たちの描写を積み上げた結果があったからこそ、その美しさはある。ここは感心と言うか、うっかり感動させられてしまいました。このイメージ喚起力は見事と言うほかありません。他にもけっこう印象的なイメージがあって、空戦シーンはおしなべて空間的な広がりを感じさせる良い描写が多かったように思います。一方で、人間関係の方がドロドロしているんですが、それはそれで良いとしても、ドロドロの解決方法があまりにも力技すぎるかなあ。まあ良いんだけど。

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