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2010.09.12

『ミネルヴァと智慧の樹―始原(ウロボロス)』

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ミネルヴァと智慧の樹―始原(ウロボロス)』(浅生楽/電撃文庫)を読んだ。

とても面白く読みました。やっぱり登場人物が大人なのはいいね。中二病も悪くは無いが、あんまり社会性と言うか、日常生活から遊離しすぎているキャラクターはどうも共感しにくい。自分の人生観と言うものがある程度固まっているのならば、共感し難くとも理解することは出来るのだけどね。と言うわけでこちらの作品ですが、大学生と言う、子供でも大人でもない時期の話と言うのは、けっこう面白いところだと思うので大学生ラノベがもっと増えないかなあと思うのでありました。なんて事を思っていたら竹宮ゆゆこ先生が書いてくれたので密かにヒャッホー!と喜んだのですがそれはここでは関係ありません。

人生を見切ったことをいう主人公や、その主人公に薫陶よろしい”師匠”の先輩の関係とか、とてもよろしい。こういう師匠的な存在って、確かにいるんだよな。同世代の中で、「こいつはすげーなー」と思える相手ってのが。さらにいえば、自分がもうちょっと歳をとると、実はすごいのではなくて成熟がやや早かっただけに過ぎないことに気がついたりもするんだけど、そういう不安定な人間関係と言うか、そういうのも思い出したりしました。恥ずかしいけど、でもけっこう楽しい時期だったんだよなー。

で、そんな風に自分の生き方を決めて、ちょっと得意気な主人公が、自分の予想だにしない出来事に出くわして、自分の行き方に修正を迫られるところなんて最高でした。けっけっけ、大学生程度で生意気なこといってんじゃねえぜー、と大喜びの自分。最低ですね。みんなこんな大人にはならないようにしてください。

キャラクター的な事を言うと、あんまりラノベ的なキャラ造型をしていない感じですね。主人公なんかも平凡な大学生といえばそうだけど、彼個人には複雑な思いを抱えていて、その感情の表出も一面的ではない。ヒロインも、無口でエキセントリックと言う、ある意味、萌えると言えば萌える長門系のヒロインのように見えるけど、その内面と言うか、内面の表出部分がすごく分かり難い(そもそもコミュニケートが難しい)。表面的なわかりやすいキャラ造型に、人間的な複雑さを付与しているあたり、よろしかったのではないかと思いました。

物語的には、哲学的なモチーフを使ったSFと言う捉え方でよいのかどうか。時間跳躍の理論構築のあたり、実に衒学的であり好ましい。こういうの好きなんです。頭良さそうげで、と言うとそのまんま過ぎるけどねー(いいじゃん)。その理論に妥当性があるかどうかは、そのタイムリープによる影響とか含めてそれなりに納得したのでいいかな。客観的に見てどうなのかは知らんが、人間的な情念と理論が絡み合っている(理と情が並列する)感じはいい。理屈だけでも感情だけでも納得しにくいけど、両方でやってくれれば僕は満足でありますね。このあたり、舞台が大学であるという意味が生かされているんじゃないでしょうか。

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