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2010.09.14

『ヴィークルエンド』

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ヴィークルエンド』(うえお久光/電撃文庫)を読んだ。

イカスわー。サイバーパンクでパルクール(個人的にはヤマカシを思い出す)をモデルに変容しつつある人類の黄昏…になるかどうかは分からんけどな。でも、こういう新しい人類の誕生みたいな話はなんとも好きなので、大変ありがたく。まあ、作品としてはいつも通りのうえお久光でした。つまりラノベではなかった。ほぼSFでした。

作品の世界設定として、ある一定の年代の子供たちが共感覚障害を持つようになったと言うのがあるんだけど、これはあくまでも舞台設定。ここからいくらでも広げられそうな魅力的な設定を、物語を描くだけで終わらせるなんて、恐るべきことよなー。これシリーズ物じゃないんだぜー。

ヴィークルレース、レーサーのイメージが最初に思いつかなくてちょっと悩んだけど、ヤマカシをイメージ出来るようになって解決した。ただ、文章で感じるほどの疾走感までは再現できないのが、ちょっと困らないでもない。ただ、”自分を乗り物として認識する”と言うイメージはなかなか面白く、興味深くはあった。

主人公の羽鳥の性格や行動を見ると、完全に悪魔のミカタの堂島コウのリボーンキャラであった。ひねくれているようで素直なところとか、完全に堂島コウだよな。土葵川徳子との関係もそれっぽいし。今回の話は、自分の感情を”熱”としてしか感じられない羽鳥が、自分の望むものを自覚し、一歩を踏み出す物語であるといえるのだが、その見出したものそのものにはさしたる価値を見ていないあたりがクールだなあ、と思いました。

重要なのは、見出したものに対してどのように相対するべきか。どう付き合っていくかと言うところなんだ。つまり、答えそのものには価値はなく、答えをどのように向き合うべきなのかこそに意味がある。よく、この手の話には、苦心の中で得た答えは無謬性を獲得するのだけど、そこに無価値と断ずるあたり、実に正しいと思いました。

最後のレースも、勝ち負けで決着しなかったあたりも実に素晴らしい。勝つこと、負けることそのものには意味はないんだよな。勝つこと、負けることをどのように受け入れるかと言うことに意味がある。実に一貫している作品だよな。知的と言うのはこういうことだと思うんだ。

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