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2010.08.07

『アクセル・ワールド(5)星影の浮き橋』

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アクセル・ワールド(5)星影の浮き橋』(川原礫/電撃文庫)を読んだ。

成長して仲間も増えたハルユキに対して迫る加速世界を根底から否定する敵が現れる。怒りと憎悪に囚われたハルユキは、己の中に潜む憎悪の化身との対峙を余儀なくされる…。と言うわけで、少年漫画にお約束の暴走回でした。本当にこのシリーズは少年漫画の王道路線を突き進んでいるなあ。魅力的なヒロインや駆け引きのあるバトル描写、ラブコメ展開、主人公のルサンチマンの昇華など、ライトノベル的な要素をこれでもかと用いながら、物語は少年漫画の王道。ここまでド直球な作品も近年見かけないですが、それでいて非常にハイレベルな王道であると言うあたり、実に作者の非凡さを感じさせます。王道であるがゆえにライトノベルとしては斬新と言う側面もありますが(それはそれでライトノベルと言うジャンルの歪みの表れのように思いますが)、ここまでエンタメ性を高めていると言う点は見事であると思いました。

その辺の王道っぷりは今まで同様なんですが、今回はスカイレイカー関連のエピソードの研着にとても感心してしまった。ぶっちゃけると感動した。なんかこのシリーズで感動すると、作者に感動させられた感があってすごく口惜しくなってしまうのはどういうわけなのか自分でも良くわからないのだけど、とにかく感動してしまったのは仕方が無い。素直に降参する。なんと言うっても、スカイレイカーの持っている望みやその外装は、今まで”ハルユキのそれには及ばない”と言う描写を散々されてきたわけです。スカイレイカー自身がそう述べており、自分の行けなかった領域にハルユキには行って欲しい、と言う完全にキャラとしては「主人公を導く過去キャラ」扱いになっていたんですね。ところが今回のラストにおいて、彼女の願いと能力は、不可能ではなく欠陥でもなく、ハルユキとはまったく別のものであるという事が明らかになる。一見、欠陥にように見えても、見方を変えればそれは長所であり意味を持つ。その点を非常にスマートに描いている点が実に素晴らしいと思いました。ここまで論理的に美しく価値観の多面性を存分にエンターテインメントとして描いているところは高く評価したいと思います。感心しました。

もちろん、黒雪姫を始めとするヒロイン勢(ほとんどが年上)に可愛がられる主人公と言う構図も同様であり、スカイレイカーが本格的にそのあたりに参戦してきたこともあって、お姉さんキャラ萌えな方々にもおいしゅうございますな。ちゆりさんはちょっとやべえんじゃねえの?とか思ったり思わなかったり。

今後の予想ですが、少年漫画の王道を行くのなら、次は今回暴走した能力を克服する方向に行くんではないかな。そして暴走した能力を支配下に置いて、主人公がパワーアップとかするのが少年漫画だと思われます。ただ、そうすると強さのインフレ問題にも足をつっこむことになるので、そのあたりはどう処理するつもりなんでしょうね。まあ作者のことだからそのあたりも真面目に取り組みそうな気もしますねえ。

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