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2010.08.03

『空ろの箱と零のマリア(4)』

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空ろの箱と零のマリア(4)』(御影瑛路/電撃文庫)を読んだ。

「神降ろしの王国」編の完結編との事だけど、なんと言うか実に特殊な作品だった。「神降ろしの王国」編は今までのシリーズの中でも飛びぬけて「ゲーム小説」的な要素の強い作品だったけど、作品の本質は「ゲーム」とはまったくかけ離れたところにある、と言うのが実に特殊と言うか特徴的でした。だって、ゲームに勝つことは物語の勝利条件にはなんの関係もないもんね!前回の一冊まるごとかけてのミスリードにはさすがに驚き…はしなかったけど(そもそも作者がそこで驚かせようと言う意図がなさそうだ)、ものすげえ思い切ったことをするなあと思いました。

このシリーズの主人公である一輝は、それほど頭の回転が速いわけではないし、流されやすいところもあって自己主張は強くないと、ゲーム小説的には主人公としては役者不足のように見えるところがある。事実、ゲーム内では醍哉に負けっぱなしだし、”頭の良い”タイプにはあまり見えない。事実、それほど頭の良いわけではないとも思う。

しかし、一輝はそういった”頭の良さ”とは根本的に異なるところで圧倒的に”強い”のだ。そもそも、ただ”頭が良い”だけでは届かない領域で常に勝負している主人公なんですね。彼が勝負しているのは、ゲームではなく、そのゲームそのものの結果をひっくり返そうとしているのが一輝の目的であって、だからゲームの勝敗には拘る意味がない。誰が勝とうが、それによってもたらされる結果は、対象が誰であれ変わらないことなのだから。

けど、今回はちょっと一輝としては迷走気味であったか。自分の敵がはっきりしないまま、右往左往してしまった。逆に言えば、「神降ろしの王国」のメンバーは全員敵でもなんでもなく、一輝にとってはすべて救うべき、あるいは破滅させるべき相手でしかなかったとも言えるわけですが。醍哉でさえ、一輝にとっては敵ではなかった。

今までは”日常”などと言うイマイチ良く分からんもののために勝利してきた一輝が、自分の望みに気がつく展開と、それによって生じる関係の変化が描写され、そもそもこのシリーズの落としどころさえも道筋が観えて来た。ただ、作者がこの道筋を遵守するのか、あるいはもう一捻りがあるのか、ちょっと読めないところではある。一輝がどのような勝負を行っていくのか、その領域についての語りになっていくと嬉しいのだけど。どうだろう。

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