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2010.07.21

『共和国の戦士』

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共和国の戦士』(スティーヴン・L・ケント/ハヤカワ文庫SF)を読んだ。

ミリタリー系のSFはあまり読んだことがなかったので読んでみた。思ったよりもミリタリー分は多くなかったのは拍子抜けだったけど、その分、普通にエンタメとして読めたのは良かったのかもしれない。きちんと軍隊の一兵士として組織に使われる不自由さみたいなものもあったしね。やっぱり、この手のミリタリー系は、理不尽な命令にそれでも従わなければならない葛藤を描いてくれるのはお約束だもんなー。

ただまあ全体的に大味な印象を受けなくも無い。この作品世界では、末端の軍人はすべてクローン兵士であり、しかも、本人たちは自分(だけ)はクローンだと言うことに気がついていないと言う設定なのだが…ちょっとこれは無茶すぎる設定だろう…。いくら心理的調整を受けて、自分の容姿だけは別に見えているとは言え、自分以外のすべてがクローンだとしたら、自分の素性を疑わないわけがないと思うんだが…。まあ、ここはあくまでもアイディア勝負であって、ツッコミを入れるのは無粋であると言われれば、たぶんそのとおりだ。おそらくは厳格な身分制度によって消費される兵士と言うものを象徴的に描こうとしているのだろう。これは象徴であって、現実的な意味合いで図ってはいけないところなのだろう。

物語そのものはわりとシンプルで、新米軍人として赴任した主人公が、さまざまな陰謀やパワーゲームに翻弄されつつも、危機を脱していくと言う流れなのだが、単に主人公が超人的なパワーを駆使して、と言うよりも、状況を判断して、あるいは仲間の力を借りたり、あるいはちょっとした幸運に助けられたりと、ハリウッド的なご都合主義からは少しずらしているところがなかなか興味深くあった。こういう陰謀に巻き込まれたら、本人に出来ることなんてほとんどなく、助けが必要であると言うのは実に納得がいく。

全体としてはシンプルかつ大味ではあるけれども、きちんとリアリズムを失わないところでコントロールしている作者にはなかなか好感が持てました。まあSF的な面白さとしては、クローン兵士という存在について、もうちょっとスポットが当たればよかったかとも思うんだけどね。続編があればちょっと違うのだろうか。

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