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2010.07.11

『アップルジャック(2)Pousse‐caf´e』

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アップルジャック(2)Pousse‐caf´e』(小竹清彦/幻狼ファンタジアノベルス)を読んだ。

殺人鬼としての衝動を内に秘めたシトロン。自分を認め、受け入れてくれた誰よりも大切な存在だったアップルジャックを失った彼女は、彼の意思をついで殺人鬼を狩る殺人鬼としての一歩を踏み出す。匂いを操る魔性の美女ストレガ、凄腕のナイフ使いスプリッツァーなど、異能であり社会からは阻害される異物でありなにより怪物である二人とともに、生きるために殺すチームの行く末は。と言う展開で、大変ボンクライズムに溢れていて素晴らしいですね。そして、そのボンクラ部分と言うのはえてして癖が強く泥臭いものなんですが、そこは作者のバランス感覚か、会話の軽妙さと物語が纏う洒脱さが、上手くその泥臭さを補っている。このあたりは、なんとも不思議なセンスと言うか…。一見、気障にさえ思える会話にも、きちんと作者特有のユーモアと暖かい視点があって、すごく良いのではないかと思いました。

また、シトロンを守る大人たちが集まっていた前作に対して、今回は桜と言うシトロンと歳のさして変わらない少女が登場して、シトロンサイドの視点も増えてきたように思います。アップルジャックの暮らしていた部屋で、彼の遺したものを向き合いながら、自分がどれだけ大切にされていたのかを実感する。その上で、彼女は彼の後を追うと言う、きちんとした継承の物語になっているように思います。正直、前作で物語はきちんと完結していたので、迷走の可能性もあるんじゃないかと思っていただけに、なかなかにスムーズな主人公の交代を行っていたように思いました。

あー、その意味では、一冊かけてシトロンが自分の立ち位置を定めるまでの物語になっているとも言えるわけで、主人公として確立する回だったのかも。アップルジャックが正直ものすごくキャラ立ちしていただけに(穏やかで愛情深くユーモアのある大人で茶目っ気もある。嫌う方が難しいキャラクターだった)、彼の後継となるにはまだまだシトロンは足りない。むしろ2巻になった方が彼の懐の深さがより描写されているところもあって、存在感はむしろ増しているとさえ言える。それゆえに、彼の後を追いかけようと言うシトロンの決意が重い意味を持つわけですね。なかなか見事な作り方をしていると思います。

そういった継承の物語としても面白いですが、単純に異能集団同士のバトル小説としての側面もあり、そちらについてもいちいちキャラが立っている敵殺人鬼チームの個性の強さもあって面白いです。殺人鬼で外道ながら、どうにも存在にユーモアを感じると言うのか、なんとも不思議なキャラクター描写ですなあ。ほんと、外道なのに魅力的と言うのはどういうことなのか…。まあ、厳密な意味での異能力バトルとしては、やや詰めが甘いような気がしないでもないんですが(なんか結局一対一のタイマンバトルになっているのはちょっとなー。せっかくチームになっているのに勿体無い)、それを含めてもユニークな作品になっていると思いました。

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