『世界平和は一家団欒のあとに(10) リトルワールド』
『世界平和は一家団欒のあとに(10) リトルワールド』(橋本和也/電撃文庫)を読んだ。
急ぎもせず、引き伸ばしもしない実にニュートラルな雰囲気のままの最終巻。前巻でまとめに入る感じはあったけど、その予感を裏切らず、かといって過剰に盛り上げるでもなく、あくまでも”家族の問題”に終始したバランス感覚については見事と言わざるを得ない。
つか、最後に来るのは柚島家の問題だろうと言うのは予測できることではあったけど、ここまで徹底的に柚島家の問題だけの話になっているのはさすがに潔ぎ良過ぎるような気もする…。まあ地球の危機さえも、家庭問題の付随問題に過ぎないのがこのシリーズの特徴であったので、その意味では立ち位置のぶれないストーリーテリングであったよな。むしろ、世界の危機も大事だけど、それと同じくらい家族の事だって大事なのだと言うスタンスからは、軋人にとって柚島の問題は何よりも(それこそ地球の危機よりも)大事なことであった、と言う解釈も出来るので、あらあら、まあまあ、お熱いわねーみたいな感想しか出てきませんな。
で、物語の要請に従って、軋人の前に敵が現れてバトルわけですが、近年のラノベの主人公によくある、自分の正しさと言うものに対する不信に、囚われつつ、しかし、最後までまったく意志がぶれなかった軋人はナイスガイだと思いました。悩むことがあっても、なにに悩むのかにはまったく迷わないところには爽快感がありますな。正しいかどうかではなく、自分がどうしたいのか、そして相手はなにを望んでいるのかをきちんと考えた上で自分の意思を表明するあたりは、無神経でもなくわがままでもなく、自分の行為の愚かさを理解した上で、自分を貫こうと言う態度は、実に良いスタンスなんじゃないかなあ。ネタでもベタでもメタでもなく、その中道を行くって感じ。
この主人公が成熟している感じが実にハードボイルドであり、カッコいい作品でした。そうか、今頃気がついたけど、軋人のキャラクターはハードボイルド作品のキャラだったんだなー。男のダンディズム(=やせ我慢)を完全に体得しているもんな軋人は。
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