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2010.06.10

『マスター オブ エピック~戦禍の果実~』

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マスター オブ エピック~戦禍の果実~』(鳥居羊/HJ文庫)を読んだ。

おおう、まさかこれがシリーズ化するとはなー。オンラインゲームのノベライズらしいのだけど、まあそっちは良く知らないので単品での評価すると、まあ興味深くはある、と言う感じ。

いろいろとゲーム独自の設定があるみたいだけど、そのあたりはわりと物語中に溶け込んでいるので良いのではないかと思われます。近い未来に訪れる戦乱の時代を前に、予言(だか時間移動だか)でその事を予測している平和な時代の指導者たちは、未来を変えるべく、あるいは戦乱を勝利に導くべく、現代で、そして未来へ戦士を送り込むと言う、いわゆるライト・ファンタジーでありながら、タイムリープものでもあると言うあたりがユニークなところ。前作はほとんどが現代での戦いだったので、そうした特異性はラスボスの存在からしか意識させるところは無かったけれども、今回は主人公たちが”現在”で広まりつつある「赤い果実」の謎を追って、”未来”に向かう事から始まるあたり、実に時間跳躍ものの展開になっていて楽しい。現代での知人が未来では成長した姿で現れるとか、なかなか心憎いツボを付いているよなー。

ただ、そんなにも美味しい設定でありながら、どうも、その、なんと言うか、上手く使いこなせていないような気がしてならない。まああくまでも主はファンタジーの側面であり、時間跳躍要素は舞台設定だけだと言うことなのかもしれないのだが、どうも時間跳躍が、単に”現代”と”未来”を行き来するだけの移動手段としてしか使われていないような気がする。これ、時間跳躍を異世界移動に変えても別に違和感ないよな…。そのあたりがなんとも残念である。

あと、主人公の成長譚としては、実は前作で「盾になる」と言う決意を固めてしまっているので、ちょっとそこから発展させるのに作者が苦労していたな、と言う印象。完成された人格を持っている主人公は動かし難いねー。ただ、「盾になると言う決意」と、「現実とのギャップ」(本当にお前は皆の盾になれるのか?)と言う問いは、主人公の成長過程としては極めて正しいと思いました。自分の実力が届かない相手に対しても、自分は盾として後ろにいる人たちを守れるのだろうか、と言う問い。その問いに答えようと、考え、そして行動する主人公は、なんかいいなあと思う。困難が立ちふさがっても、過剰に考え込まない。常に彼は行動することによって答えを得ようとする姿勢が、極めて健全であり、しなやかで、たくましい。主人公としてはこの上なく動かし方は難しいのだけど(何しろ”守る”と言うことを行動原理の最優先に上げているので、相手からの一撃を受けないと行動しないんだよね。比喩的な意味で)、その面白い主人公の特性は、もっときちんと評価されてもいいのではないかなー。こんな主人公、日本のライトファンタジーでは、つーか、ファンタジー全体でも珍しいような気がするよ。

ま、オレが無知なだけで知らない可能性もあるが…。まあそのあたりを楽しんで読んでいます。

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