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2010.06.14

『エヴォリミット』プレイ中…その1

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現在、propellerの新作『エヴォリミット』をプレイしています。真面目にエロゲーをやるのも久しぶりな気がするなあ。最近はデモンズソウルをやってたら余裕がなくて積みゲー化していたからなー。

ただ『エヴォリミット』のシナリオライター、東出祐一郎氏は、実は、自分にとって評価している部分と出来ない部分が極端に分かれているライターなので、実は始める前はちょっと不安でした。前々作にあたる『Bullet Butlers』が未だにプレイ出来ていないんですが、これは駄目な部分が序盤に集中していて、挫折してしまったのです。今回もそうなるんじゃないかなと思っていたんですが、まあ、とりあえずがんばってみました。

そして、紆余曲折ありながらもヒロインの一人目、カズナルートをクリア。どうも良くわからなかったんだけど、これクリアする順番がFateみたく制御されていたりするのだろうか。なんかものすごく消化不良感が満載だったんだけど…。まあ次のルートに行けばわかるのかな。

あ、いきなり脱線するけど、このあたりの”ヒロインを選択する”と言う概念が死ぬ程嫌いな自分ですが、今回は自分の中に「ルートごとの主人公は別人でありパラレルワールドであってプレイヤーとは乖離しているのだ」と言い聞かせながらカズナルートに入りました。今のうちに「ヒロイン毎に攻略する」ことについて自分の中で納得をしていないと、マジでプレイが出来なくなるかもしれないという危機感がそうさせたのですね(めんどくせえやつだなあ)(うるせえよ)。

閑話休題。

で、カズナルートをクリアしたことについて雑感。まあそうねえ…東出氏の良い部分の悪い部分が極端に表出しているって感じ。良くも悪くも東出ゲーでした。

正直ですね、序盤から中盤にかけては超面白かったです。東出先生特有の”かっこつけ”感が溢れる中二マインド溢れる冒頭、そして見知らぬ世界で目覚め、何もかもが分からないままに新しい世界に”好奇心”と言う武器を手に飛び込んでいく。わりと熱血な行動力と冷静な判断力を兼ね備えているという、エロゲーのテンプレからは半身ほど踏み出している主人公像も魅力的です。声も某いちばんうしろの大魔王様なので、好きな人にはたまらんものがあるでしょう(オレとか)。

ところが、中盤までは無類に面白かった物語が、後半に行くにつれてどんどん”ガッカリ”感が増していくというのは本当にどうにかしてもらえないでしょうか…。たぶん東出先生は物語全体を俯瞰しては構成しないタイプだと思っているんですが(どちらかと言うとその瞬間のライブ感を大事にしているような気がする)、どうも伏線の仕込み方が良くないんですよねー…。なんか後付け感が満載と言うか。あるいは伏線の回収が早すぎるというか。

どうも東出先生の伏線回収と言うのは、「実はこういうことだったんだよ!」「な、なんだってー!」と言う感じではなく、「実はこういうことだったんだよ!」「…で、それには何か意味があるの?」って感じなんですよ。回収したのはいいけど、どうも前の描写と辻褄が合わない感じがして、素直に受け取れないんだよな。それ、今、書きながら決めてない?みたいな。
あと、伏線の回収が早すぎると言うのも問題で…。ある場面でなんか怪しげなことが匂わされたと思ったら、次の次の場面ぐらいには回収されてしまったりして、早っ!と思ってしまう。まあこれぐらいのスピードで回収しておかないと、プレイヤーが伏線を忘れてしまう可能性があるので、一概に悪いとも言えないのだけど(小説と違って、AVGは読むのに時間がかかりますからね)、伏線回収の醍醐味は読者が伏線を忘れた頃に死角から一撃を加えることだと思っている自分としては、一体、どういう反応をすればいいのか、非常に困りました。「そんなどや顔で言われても…」と言う心境です。

あと、どんどん謎が解明されていくにつれて、反比例して物語のスケールが小さくなっていくという構成は、もう一週回って新しいとさえ思いました。冒頭を読んだときは、(以下ネタバレなので反転)星と人類の運命をかけた人外の存在との戦いかと思っていたんですけど→実は”パッチ”を手に入れただけの人間が狂った思想を手に入れただけでした!→実はその思想は洗脳されていただけでした!→実はただの私怨でした!(反転終了)と、すさまじいスピードで敵の格がダダ下がっていくという展開は、失礼ながら真剣に東出先生の正気を疑ってしまいます。これが面白いと本当に思っているのかなあ…。

まあ、このあたりはあくまでもカズナルートをプレイしただけの雑感なので、今後の展開にもしかしたら仕込みがされている可能性もあります。もしかしたらここで感じた感想がひっくりかえるかもしれません(と言うかそうであって欲しい)。

あ、あとこれは東出先生の特性と言うか個性の問題になってしまうので仕方のないところだと思うんですが、ちょっと物語の刈り込みに足りないところが気になりました。刈り込みと言うのは、物語上それほど重要ではないところを削り、主軸を明確にする手法を勝手にそう読んでいるんですけど、東出先生は、この重要ではないところを削るという事が本当に出来ないタイプなんだと思うんです(どうしても登場人物全員に見せ場を与えたくなってしまうのかもしれない)。前半は主人公の不知火義一の視点に固定されているんですが、後半から突然視点がブレはじめていって、ヒロインの内面や敵キャラや脇役の描写が増えてくるんです。これは適度なら世界観に厚みを与えるという意味では有効な手法だと思うんですが、下手に中盤から敵や脇役のキャラを立ててしまったせいで後半においても活躍をさせないわけにはいかなくなって、そして最終的に敵:5人VS味方:多数の同時中継バトルですよ。ただね、同時中継バトルは確かに熱いしカッコイイんですが、文章で描写するのはよっぽど上手い人でもない限り、2組か3組が限度だと思うんですよね…。今回は5組のバトルをやってしまったためか、それぞれのバトル描写が薄くなること薄くなること…。主人公のバトル描写さえ薄くなってしまったため、ラストバトルの緊張感がかえって削ぎ落とされてしまったように思いました。まあこれでバトル描写を濃くしていたら、逆に読み手にすさまじい負荷をかけてしまうことになるので、仕方のないところはあると思うんですが…。正直、主人公以外のバトルは描写しないで、文章数行くらいで片付けても良かったのではないかなあ…(このあたりが刈り込みが足りないと思った理由です。東出先生は、描写を薄く出来ても、描写をカットすることが出来ないタイプなんだろうと思うわけです)。

えーと…あとはそうだな…あ、そーだ。東出先生は自分がまったく興味がないことを、さも重要そうに語るのはよした方がいいよ!東出先生、実は基本的に超人バトルで超カッコイイ台詞を吐いて超カッコイイ必殺技とかぶちかましたい人だと認識していたんですが、今回は、突然物語の後半で「人と人は個人でありつつ繋がっていく」なんてお題目を主人公が言い出して非常に困惑してしまいました。少なくとも東出先生はこのお題目にまったく興味を持っていないのは、いきなり「進化の階段」とか主人公補正以外何ものでもないパワーで解決してしまったあたりを見れば明らかであろうと思われます。このお題目を成立させるには、作中のテーマとしてきちんと扱ってもらわないと…せめて序盤でそれらしい描写を入れてもらわないと、物語の前半と後半にテーマ的なつながりが弱くなってしまうと思うのですが…。

まあ、これも東出先生の特徴と言うか特性なんで非難するところではないのかもしれないんですけどね。実のところ、自分は東出先生は「何かを語るために」物語を書いている人ではないと思っています。ひたすら「快楽」に奉仕しているタイプ。ある瞬間のカッコよさ、キャラクターの魅力など、とにかく”その瞬間の快楽”を描き出そうとしている。その場面の描写がすべて。だから、キャラクターや物語に”メッセージ”をつけることにまったく興味がないのだと思います。それはそれでストイックな姿勢であり、自分のような「物語とは語るものだ」と思っているタイプには決して追いつけない領域にいる作家ではあるとおもうのですが、「エヴォリミット」では(と言うか東出先生がライターをやっているエロゲーでは)物語の要請上で倫理を語っているところが美しくないなーと思うのです。姿勢が徹底されてないんですよ。

例えば、自分は東出先生の小説「ケモノガリ」は紛れもない傑作だと思っているんですが、これの良いところは通り一遍のお題目が一切ないと言うところなんです。なぜ主人公は敵を殺すのか?それは敵がクズの外道の鬼畜だからだよ!と言う見事な割り切り。あとはいかに主人公がカッコよく敵を惨殺していくのかと言う”描写のみ”に特化した内容が本当に素晴らしかった。

これは推測ですが、エロゲープレイヤーというのは、わりと保守的なタイプが多いという事なのかもしれません。努力、友情、勝利と言うジャンプの三本柱が好きなんでしょうかね。東出先生が自分の趣味全開にすると、主人公には倫理がカケラもなくなってしまうので、プレイヤーに忌避感を抱かせるのではないかと言う憂慮があるのかも。ま、正直、いかにもオマケみたいに倫理的な要素を追加されても自分はちょっとどうかと思うんですが、これで一人でもファンを増やせれば御の字と言うところなのかもしれませんね。とかなんとか。

しまった、長くなりすぎてしまった。まだルート一つクリアしただけなのに…。別のルートをやったら印象が変わる可能性もあるのに結論めいたことまで語ってしまった…。えーと、今回はあくまでも暫定的な意見ですので、その点、誤解なきようお願い致します。今後の展開次第では、いくらでも前言を翻す用意はあります。

と言うわけで続きをやります。ちょっと時間がかかるかもしれません。

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コメント

僕もまだ全てクリアしてないんですが、少々ご都合主義の悪い部分が出てしまっている気が…。

主観ですが「設定が面白いでしょ?」というのを全面に押しすぎた様に思います。話の展開がそれを十二分に利用出来てないかと。設定を全て使って丁寧に仕事しただけ、という感じがしました。

逆にあやかしびとのすずのようなルートがあり、全体の説明終わったから趣味の赴くまま書く、ようであるなら期待したいです。

投稿: hisasi | 2010.06.15 22:39

まあ東出先生の作品にはよくあることですけど>ご都合主義。

正直、カズナルートは東出先生特有のテンションが感じられなかったので、ちょっと残念でした。

ただ、次のリーティアルートが存外に面白かったので、これは期待が持てそうな気がしてきました。

投稿: 吉兆 | 2010.06.16 22:55

おはつですが、ちょいと思うところがありましたので書き込みします。

このゲームはかなりメッセージ性が強かったかと。一種族としての人類のあり方を問う構成に、私はかなり考えさせられました。まぁ、読者に行間を読む力や哲学・科学に対してある程度の教養があることを前提として書かれている部分がありますので、万人向けではないかもしれませんね。

投稿: 名無し | 2010.11.28 17:36

名無しさんには東出先生の打ち出したメッセージ性や、人類のあり方を感じられたんですね。それはとても素晴らしいことだと思います。どんな作品であれ、”その物語が届く層”と言うのは存在し、それこそが物語の意味だと思うからです。

ただ、東出先生の考えている問題意識にそれほど興味が持てない自分には、それがどんなに重要な問題でも、興味深くは持てないんですね。嫌煙家にタバコの持つ意義を訴えかけても聞く耳を持ってくれないのと同じようなものでしょうか(上手い例えではないですが…)。

で、それはそれ、これはこれなんですが、名無しさんが感じられたというメッセージ性について、もう少し詳しく教えていただけませんか?

自分には残念ながら名無しさんほどにこの作品を汲み取れなかったので、どのような点に東出先生のメッセージが込められ、その問題をどのように展開させていったのか、名無しさんの解釈を教えて欲しいです。よろしくお願いします。

投稿: 吉兆 | 2010.11.28 20:09

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