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2010.06.09

『ハイドラの告白』

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ハイドラの告白』(柴村仁/メディアワークス文庫)を読んだ。

いやーまさか『プシュケの涙』の続きが出るとは。前作が明らかにライトノベルの枠からはみ出した良作だっただけに、続きは難しいのだろうと思っていただけに、これが出版できただけでもメディアワークス文庫が創刊された価値はあったな、と思ったりもしました。

痛ましい青春の暗黒を描いた前作に続き、描かれるのは、前作に登場した”ある人物”を中心にして描かれております。前作の登場人物の関わりからすると、今回登場したある人物に対する由良の関わりには考えらさせられるものがありますなー。感慨深い、と言いますか。

前作のような切ない恋の物語を期待しているとちょっと肩透かしを食うかもしれない。今回の焦点は、ひどくつらい過去があったとしても、それでもなんとかやっていかないといけないと言う話なのだろうな。ハルさんが視点人物となる前編の話は、まさしく前作の後始末編と言う感じ。前作で、とある人物に深くかかっていた”布施正道”と言う人物に肉薄するハルと由良の二人。この由良の考えていることと言うのが、前作を知っているとある先入観に囚われてしまうのだが、最後の最後に明かされる出来事によってすべてが引っくり返ってしまう。そうなると”由良”の考えていたことは…結局、なんだったんだろうねー。なんか、暗黒な展開も、綺麗な話のどっちも考えられるんだよな…。結局は、由良彼方に対する”彼”の感情がどんなものなのかが、ある程度、想像するしかないところがなー。最初はまあ良い話なのかな、と思っていたのだが、良く考えてみると、そんなに良い話ではなくなる可能性があることに気がついてしまって…。

特に”A”が視点人物となる”彼”の感情のねじれを知ってしまうとなー…。後編を読んだ後に、前編を思い返すと見えてくる絵が変わってしまうと言うのは前作を踏まえているんだな。それでも、それぞれの人々は、不器用に生きて、不器用に恋をしている。何かを明らかにしたところで何かが救われるわけでなく、死んでしまった人間は戻ってはこない。ただ生きている者達はそれを受け入れて生きていくしかない、と言うシビアな倫理観も美しいと思うのでした。

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