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2010.06.07

最近のラノベとこれからのラノベについて雑感

ファミ通文庫の『空色パンデミック』とか、さっき感想を書いた『舞面真面とお面の女』とか、とにかく最近デビューするラノベ作家において、いきなりラノベと言うものを徹底的に解体した、アンチラノベと言うかメタラノベって言うか、とにかくライトノベルと言うジャンルを十分以上に理解しつつ、その上でライトノベルのお約束を積極的に用いながら、そのお約束を解体し、メタ的なガジェットとして機能させるという作品がやたらと目につくようになったような気がすんのよねー、といきなり本題から入る。

なんつーか、ライトノベルと言うジャンルもいい加減に爛熟の域に達していて、やりつくせることをやりつくした所まで来ているので、新しくデビューする作家はライトノベルを解体するところまで来ているのではないか(しなくては新しいものが生み出せない)、と思うんですよ。つまり、ラノベジャンルの崩壊と拡散が目の前まで来ていますよー、という事ですね。かつてSFであったように、あらゆるジャンルに広がり、あるいは取り込まれるということが起きる、いや、すでに起こっているのではないか。

アスキー・メディアワークスがメディアワークス文庫を創設して、ラノベと一般文芸の垣根を取り払おうとしたりしているし(こうした動きは昔からちょろちょろあったけど、ここまで大々的にやり始めたのは時代を感じさせますなあ)。2009年から2010年にかけては、ライトノベル史において爛熟と転換の時代として後世で論じられるのではないかと思ったりもしたのだが、まあたった5分前に思いついただけなので、たぶん普通に勘違いだろう。まあそれはそれでもいいんだ。けど、これからのライトノベルの方向性を考えると、冒頭のような作品が現れたことは、今後の大きな布石になるんじゃねえかなあ、と思ったことをとりあえずここで述べおく。あと5年したらどうなっていくのか、楽しみだぜ。

以下雑感、と言うか脱線。

こうしたラノベジャンルの解体と言うのは、実はすでに西尾維新が10年前にやっていることでもあったりするのだよな。ほんと、西尾維新は10年ぐらい時代を先取りしていたな、と改めて思う(当時は自分は全然気がついてなくて、ちょっと変わったラノベ作家程度にしか思っていなかったのだけど、最近になって西尾維新すげー!と思うようになりました)。西尾維新については、デビュー後の一年ぐらいは、内容は薄いにキャラもうすっぺらいしトリックもしょぼいし、これが評価されたのはミステリの分野だったから珍しがられただけだよね、とか思っていたんだけど、時が経つにつれて自分の中で西尾維新の株が上がっていき、今ではストップ高。時代を先取りしまくった天才性の持ち主だと言うのが現在の評価です。10年たって、ようやく当時の西尾維新の目指していたものが理解出来るようになったというか…。

まあ今の西尾維新はまた別の何かを目指しているっぽいけどね。

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コメント

構造的にメタな作品だと、部分的にメタな態度を取っていた、たとえば入間人間のようなタイプとは違ってきますね。
かと言って、メタラノベorベタラノベの二極化になってしまうと、それはそれで……という気もしますが。
B.A.Dの二版以降の帯で見て思ったのですが、低年齢層にも旧来のベタな要素でウケている部分もあるのだろうなあという部分もあるようなので。
狼と香辛料ですが、あれなどは扱う題材を他所にすれば、至極真っ当なライトノベルでありつつ、ベタな要素に頼らずに書いているなと、奇妙に新鮮な印象を受けました。
そう考えていると、最近でぱっと思い付くのだと電撃の川原礫などですが、ラノベ然としたラノベの需要はこれからも依然として顕在なのかどうか、少し疑問かもしれませんね。
禁書目録などは、『話題を共有する為の作品』として読めるのかなとは思っていたのですが。

ミステリの脱格ブームに関しては、あれはトリック優先の本格要素(トリックのみの厳密性)が突出し始めた結果、どんどん畸形化していって(麻耶雄嵩あたりが流れの最終地点付近に立っていたかもしれません)、そこに出てきた清涼院流水が流れを変えて、西尾維新がそれを一気に先へと推し進めたイメージがあります。
と、そんなことを書いていて、大御所の島田荘司も含めた『探偵キャラ特集』みたいなアンソロジーを読んだ時、清涼院流水が丁度少し前の西尾維新のキャラクター百花繚乱状態だったことを思い出しましたw

投稿: | 2010.06.08 00:19

ライトノベルを読み始めて今年で10年か11年目。萌えラノベに限っても読み始めて今年でもう5年目か。

いい加減ベタラノベは飽きてきたっていうのは確かにあるかなあ。でも、ファミ通文庫とかメディアファクトリー文庫とかでやられても注目度が…。

電撃か角川か富士見で思いっきりエポックメイキングな作品が爆誕すると面白いかもしれませんね。

投稿: 幻想 | 2010.06.08 19:54

×メディアファクトリー文庫
○メディアワークス文庫

うん。あまり知らないこと書くと間違えるよなあ(苦笑)。

投稿: | 2010.06.08 19:57


名前が抜けたorz

投稿: 幻想 | 2010.06.08 19:58

失礼します。連続で申し訳ありません。

吉兆さんの仰られているラノベのベタ要素回収から派生するメタラノベ繋がり、というわけではないのですが、少し引っ掛かるかな、という話題がありましたので。
今日yahooのニュースで知ったのですが、「俺と彼女が魔王と勇者で生徒会長」が自主回収騒ぎになっているみたいで驚きました。amazonで注文しようにも売り切れ、書店では並んでいないので購入しようもなかったのですが、検証サイトを見る限りでは「流石にこれは」と思う部分はあったのですが、「でもラノベにはこういう一面もあるのでは?」とも思いました。
これまでにも部分的な類似箇所だけなら空の境界(京極夏彦)にも禁書目録(奈須きのこ)にも、みーまー(西尾維新、舞城王太郎)にも見てきましたし、今回のはそれだけの大事なんだろうか、と。
絵のトレースと違って文章の剽窃は容易く行われてしまいますし、作者側の意識の問題と言えばそれまでなのですが、長い一冊の本という体裁に整えられた時、今回のものが明らかに一際拙い物なのか(いいとは当然思わないのですが)、少し疑問でもあります。
ですが、今回の作品は未読のままですので、全体を読み通して今と同じ心境のままかは解りませんが(苦笑)

テンプレ化はジャンルを読み慣れた読者側の意識にメタ化したレイヤーを作ると思いますが、例えばベタ要素だけをコラージュしていくのも手法なら、今回の件は後々どう位置付けられるのかなと感じました。

投稿: | 2010.06.09 00:06

>名無しさん(と仮にします)

まあ、自分も全部メタに行くとは思っていません。あくまでも方向性の一つではあると思いますが。

あるジャンルが生き残るためには、常に進歩と言うか、新しいことをやっていかないと他のジャンルに押し流されてしまうのは良くあることなので、ライトノベルも新しい道を探してく努力は必要であろうな、と言う素朴な印象がこの分の趣旨です。

>幻想さん

ラノベに飽きたら文芸書を読めばいいじゃない(マリーアントワネット風に)。

と言うのはまあ冗談ですが、実のところ自分はライトノベルの将来を心配しているわけではありません。他にも面白い本はいっぱいありますからね。ライトノベルがもし消え行く文化だとしても仕方のないところでしょう。

ただ、メディアワークス文庫は、かなり本気でライトノベルと一般文芸の垣根を壊そうとしている意図が見えるので、なかなか興味深いと思います。わざわざ一般文芸棚で売り出そうとしたり。これは同じ棚にあるほかのラノベ意外の本に読者の目を向けようと言う意図なんでしょうね。

結局、ライトノベルと言う枠組みはなくしていくつもりのかなあ、と漠然と予想しています。

投稿: 吉兆 | 2010.06.09 00:15

>名無しさん(最初のコメントの方と同じ方ですよね?)

んーまー。文章トレス問題については特に思うところは無いです。ラノベの文章トレスで回収騒ぎになるというのは、自分の記憶のある限りだと初めてのことのように思うので、ちょっと驚きましたけど。

まあ、自分はこの作品を読みましたけど、いろいろなところからの引用は確かに多いです。パッチワーク的と言っても良いです。

まあ、それだけならば、今まで出版された作品にはいくらでもあったと思いますが、今回のは、パロディとしてのそれではなく、剽窃の類いであると判断されたと言うところが重要なんでしょうね。ただ、その判断の根拠が今のところ分からないので、これがどういう意味を持つのかが良く分からないですねえ…。これ、回収で誰が得をするんだろ…。

まああえて個人的かつ無責任な発言をするのなら、ちょっとこの作品は、引用にリスペクトが足りなかったかなあ…とは思いました。そこに何かしらの意味がもっと見えたなら、ここまで非難されなかったんじゃないかなー。

投稿: 吉兆 | 2010.06.09 00:34

>幻想さん
ベタな要素だけ見ていくと、その再生産のループ自体はどこのジャンルでも普通なんでしょうけどね。
ライトノベルのような多方面に跨るサブジャンルが成熟した時にどうなるかというのは、少し特殊のような気もします。

>吉兆さん
申し訳ありません、最初の書き込みと同一人物です。自分が書き込むことはそうはないと思っていたので、最初は名無しのまま書き込み、そのまま度々書かせて頂いていました。

今回の剽窃騒動の本に関しての詳細、ありがとうございます。
当方も概ねそのように感じていまして、この類の問題が起きる度に焦点となる「どこからが剽窃か」という問題が凄く曖昧なのに、今回の処断は一体どこでどう判断されたのか、それが不思議でした。
敢えてパロディと解るような文脈で扱われる引用文章であれば(ハルヒなどにもありました)まるで問題ないのは解りますが、そうでなくても「これはあの本からだな」と思う作品は度々見掛けるので、その基準が明確でないのが少し疑問だな、とは思います。
今回の場合、あちこちで騒動が広がり、それが最終的に回収に結び付いているような印象が強いですね。

長々と失礼しました。お返事ありがとうございます。

投稿: 名無し | 2010.06.09 01:41

偉いこと並べるのならばあなたがラノベを書いてデビューすればいいのでは?
間違ったこといってますか?

投稿: | 2010.06.14 16:56

コメントありがとうございます。

それは一つの真理ではありますが、議論とは関係の無い話ですね。僕が偉そうなことを書くのと、僕が書いたことはまったく別の問題です。その点の切り分けをきちんとしておかないと、議論が成り立たなくなります。

今回は、僕の態度について非難されているのだと解釈いたしますが、ご不快になられたのならば、大変申し訳ありません。それについてはそのように申し上げるしかありません。

ただ、あなたのご非難の論法ですと、野球について偉そうに語る人に対しても「だったら野球選手になれば?」と言わないと理屈が通りませんが、そのあたりの理屈は通していらっしゃいますか?通しているのならば素晴らしいと思います。是非、今後もそのスタンスを貫いて下さい。

あと、余計なことですが、あなたが正しいと思うのならば、相手に正誤を求めるのはあまり品のある行為ではないと思います。あなたは正しいかもしれないし、間違っているかもしれません。僕は的外れなことを言っているのかもしれません。でも、それは本人にしか分からないことです。

ならば、あなたは自分の意見に自信を持てばいい。それによって、今回、僕に対してあなたが批判したように、あなたも批判されるかもしれません。でもそれぐらいは引き受けてもかまわないでしょう?自分が正しいという自信があるのならば。

その上でお互いに理解をしていきましょう。あなたがご不快に感じられたところを述べていただければ、今後、自分も慎むようにいたしますし、それに対して反論したいことがあれば反論させていただきます。

すいません、長文になってしまいました。今後とも宜しくお願い致します。

投稿: 吉兆 | 2010.06.14 17:54

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