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2010.05.13

『少女ノイズ』

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少女ノイズ』(三雲岳斗/光文社文庫)を読んだ。

文庫版を購入したのだけど、帯の有川浩のコメントがひどい。ひどすぎる。一応ミステリ作品に対して、「ぶっちゃけミステリ部分はどうでもいい」とか書いちゃうのかー。まあそれをのせる作者や編集者も相当なものだと思うけど。まあつまりあざといわーと言いたいだけなんだけど。

犯罪現場の写真を撮ることに固執する主人公や、人間の闇にしか興味を示さないヒロインなど、乙一のGOTHを思わせる暗黒青春ミステリのような印象を読み始めた当初は持ったのだが、読み進めていくうちに、これはものすごくまっとうな恋愛小説なのかもしれないと思ったのだった。少なくとも、人間の闇とか怪物性そのものには焦点が当たっていない。そうした描写はあるにはあるが、そんなものは人間の存在には当たり前であり、誰もが持っているものに過ぎないという割り切りを感じさせられた。そこには諦念とも取れるその描写でありながら、しかし、物語は一貫して明るさを失わない。犯罪を描きながら、犯人の異常性をことさらに書き立てるのではなく、するすると受け入れる軽さがある。それは見方によっては描写の浅さと取れなくも無いが、同時に飄々とした軽さを作品に与えてもいるように思う。例えば、トリック関連については、あくまでも事件そのものはトリックありきで作られているのが興味深い。トリックと言うか事件そのものは主人公たちには何の関係もない(最初の事件を除く。あれだけは唯一主人公の事件だ)、この世のどこにでも起きている悪意と誤解が招いた悲劇に過ぎない。それを過剰に賛美も貶めもしない中庸な態度は好ましく感じるのだ。

事件を通じて、主人公とヒロインは、少しずつその距離を縮めていくことになる。ミステリ部分と並ぶ、この作品のもう一本の軸であるキャラクタ小説的な側面がそこにある。事件の一つ一つが、主人公とヒロインの内面を揺さぶるものになっており、そのことによってお互いを意識していく(主人公側は最初からヒロインに魅せられたところがあるが)。こうした関係性の変化を、丁寧に描いているところは評価したいと思う。

ただ、最終話はミステリ的にもキャラクタ小説的にもやや強引であったように思えた。事件のトリックはものすごい強引というか強弁だし(ほとんどバカミスだぜ)、ヒロインのキャラもやや崩壊気味で、まるでラノベのツンデレみたいになっている。それまでは極めて抑制の効いた描写であっただけに、突然の弾け具合に(とは言っても同作者のラノベシリーズに比べればはるかに抑制されてはいるのだが、相対的な問題として)違和感を感じないでもない。もしかすると本当はもっと続けるつもりだったのが、何らかの事情で最終回にせざるを得なかったのではないか、とか邪推をしてしまったりもするのだが、まあバカミスもラノベキャラ造型も自分は嫌いではないので、これはこれでいいんじゃないかと思わなくも無い。

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