『幕末魔法士―Mage Revolution』
『幕末魔法士―Mage Revolution』(田名部宗司/電撃文庫)を読んだ。
電撃小説大賞“大賞”受賞作。幕末で魔法ファンタジーと言う発想はともかく、それをちゃんと高いレベルで形にしていることをまず評価するべきか。時代劇でラノベをやると言うのはあるようであまりないアプローチなので、これを受けてこれから時代劇ラノベが増えるといいと思うんだ。
いわゆる呪文を唱えて魔法を唱えるシーンを、幕末を舞台にギャグではなく表現するのにどのようにするのかな、と思いながら読んでいたけど、ちゃんと途中で「なんで日本語で呪文唱えるのー?」とか、「この世界の歴史はどうなっているのんー?」とか、いちいち疑問のわいてくるところを、細かく潰しているあたり、なかなか真面目に作っているなあ、と感心しました。どう足掻いても時代劇に魔法なんて不自然も極まりない設定なのだから、いっそのこと開き直ってもいいようなものなのに、その理屈を(まあ説得力があるかどうかは別にして)世界観に組み込んでいるあたり、真面目に作っていることが良く分かるので好感を持たないわけにはいかないなー。
幕末と銘打っているからして、今後は幕末の展開をなぞるように進むのだろうと思うと、これはこれで面白くなりそうな気がする。やっぱ、偽史って楽しいよね。魔法の存在する(ついでに過去にはエルフやドワーフも居たらしい)世界で、果たして日本はどのような結末を迎えるのか。史実をなぞるのか、全然違うところに持っていくのか。このあたりは伝奇作品として、思う存分史実をファックしていただきたいと思います。
あ、内容について書いてなかった。印象としては、ラノベと言うより時代小説の方が強い印象。主人公たちを10歳年を取らせれば、完全に時代小説だったな。と言うか、主人公たちが10代である必然性が全然感じられないくらい。まあときどき若者らしい無鉄砲さを発揮することもあるけど、全体的にそのあたりに青臭さは感じられない。まあこれは元服の関連で、10代であっても社会に参画していることもあり、作者もモラトリアムとしてのラノベを描くつもりはまったくないのだな、と思いました。
以下雑記。それにしてもイラストの椋本夏夜氏の絵を久しぶりに見たんだけど(イラストを描いているのは知っていたが、イラストを描いている本を手に取る機会がなかった)、随分、昔の印象と変わっていて驚きました。もうちょっと少女マンガ的な線の細いイメージが強かったのだけど、繊細な作風はそのままに、非常にアクと言うか、ディフォルメが強くなっている感じ。ぶっちゃけオタクナイズされているという…。まあ悪いとは全然思わないし、むしろ主人公はすごく可愛く描けていると思うし、別に良いんだけどね。まあラノベ業界で生きるのも大変なんだろうな、などど余計なお世話なことを考えたのでした。
あと、今頃になってタイトルの”Mage Revolution”が明治維新と掛けていることに気がついた。そうか発想の根幹は駄洒落だったのか…。
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