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2010.03.14

『アクセル・ワールド(4)―蒼空への飛翔』

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アクセル・ワールド(4)―蒼空への飛翔』(川原礫/電撃文庫)を読んだ。

ダスク・テイカー編終了。3巻の凶悪な引きにきちんと応える内容であったと思います。3巻で一度どん底まで叩き落された主人公が、”心意”システムを身につけることで這い上がり、再びダスク・テイカーに挑み、打ち倒す…と見せ掛けてさらに叩き落す、と言う3巻の構成はまさに白眉。作者のドSっぷりが現れていて実に素晴らしいところでした(あれでさらに突き落とすと言うのは、なかなかに出来ることではないよなー)。ただ3巻が素晴らしかっただけに、それに対応する4巻の内容でやや危惧するところはありました。例えば、再び突き落とされた主人公がまたしてもそこから這い上がる展開、つまり3巻と同じことをやったとしたら、さすがに興醒めだなあ、とは思っていました。しかし、さすがにこの作者に対しては杞憂でしたね。すでにダスク・テイカーに対する”抗い方”を見つけ出している主人公たちは、その部分での葛藤はなく、4巻ではダスク・テイカーと彼に協力するチユリを助けるために奔走することに躊躇いがないあたり、実に爽快感がありました。そうだなー、これで今更チユリを疑うなんてことやったら、今までの話はなんだったんだとか思うもんなー。ストレスレスな展開で大変よろしいのではないでしょうか。で、そうなると4巻ではなにをするの?と言う問題になるわけですが、これはおそらく前回はハルユキの個人的な葛藤に焦点が当たっていたがゆえに脇に追いやられていた、能美に関連するバーストリンカーではない”加速利用者”たちの存在の前ふりでしょうね。バーストリンカー同士の”デュエル”とは根本的に異なる、存在意義が根本から異なる異物であり”敵”である者たちの紹介編と言ったところでしょうか。ハルユキたちがダスク・テイカーを調査し、戦っていく過程で、その存在を自然に紹介していくあたり、作者の非凡さを改めて感じました。ただ敵キャラ紹介だけでは読者を飽きさせてしまうので、チユリの謎めいた行動によってハルユキ(と読者)をやきもきさせ、見捨てられる恐怖感とプライドが邪魔をして黒雪姫に助けを求められないハルユキの意思に共感させ、トラウマを克服するタクムに、それでいて主人公的な活躍をするハルユキ、さらに彼の暗黒面フラグも立たせている。実に見事なおもてなしを受けているような感じで、まったく退屈させない手つきは熟練の技とさえ言える。エンターテインメントとして極めて高品質でありながら、次回への布石も堅実に打ち続ける。まったく見事と言う他ないですなー。

あまりにも綺麗に作品内でまとまりすぎているのは良し悪しであると思うけど、作品の枠を超えないように作中の要素を制御しているクレバーさは、きちんと評価するべきではないかと思います。”書きたい事”と”書ける事”のバランスがとれなくて、作品上では不要と思えるほどに過剰な書き込みをしてしまい、歪つな作品になってしまうケースなんて、プロでも良くあることだもんな。ただ、個人的には、”分かり易すぎる”のもどうかとも思うんだけど…まあそれは作品は言外に語るべきことを持たない作品を志向しているわけで、非難するところではないですね。そういう作品が読みたければ別の作品を読めばよいという話ですものね。

(なんか奥歯に物が挟まったような言い方だなー)(今現在、夢枕獏の本を読んでいるせいかも。あれ、バランスは死ぬほど悪いけど、すげー面白いんだもん)

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