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2010.03.19

『白夢(3) 異界よりの転校生』

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白夢(3) 異界よりの転校生』(瀬尾つかさ/富士見ファンタジア文庫)を読んだ。

さすが瀬尾つかさ、ざくざくと進んでいくぜー。前回で覚悟完了した主人公と神楽の話には一応のケリがついて、ついにコー威醒種とのバトルの始まりです。本当に物語の展開に遊びを作らない作者だなー。大変素晴らしいぞ。ただ、今回はいわゆる複数対複数の能力バトル展開に入ったわけだけど…残念ながら、実に残念ながら、能力バトル小説としては残念な結果であったと言わざるを得ない。つーか、そもそも一人称小説は能力バトルに向いてねえんだよなー。一人称では、どうしても状況の把握が個人の視点に限定されてしまうので、状況が俯瞰できないんだよね。なので、いかにバトルして駆け引きを描いたとしても、どうしても限界がある。主人公の見ていないところでの攻防は認識できないし、主人公が理解してない状況は読者にも分からない。まあ一人称の場合、主人公の立場に同化して、その”状況のわからなさ”そのものを体感させるという手段が取られることが多いのは、たぶん、多元中継が出来ないためなんだろう。主人公の知らないところで攻防があっても、読者は理解出来ない。他の登場人物から説明を受けて、ようやく理解するものの、理解したときには状況は終わっているんだよね…。これは能力バトルとしては上手くないよな。だけど、考えようによっては、主人公がいかに頑張ろうとも、主人公に関係の無いところですべての決着はついてしまうという、ある意味、個人と言うものの無力さを強調している効果もあるといえばあるので、描き方次第なんだろうと思いますけどね。シラクモヒメやエイリが、主人公たちとは全然関係の無いところで打ち倒されるところなんか、これは見事にお約束を外してきているものだと感心したぐらいだもの。主人公がいくら強大な能力を持っていたとしても、それだけで勝敗は決まらない。状況によっては、その強さ事態が弱点に変わることさえある。そのあたりの認識戦はきちんと打ち出していたように思うし、それゆえに主人公が決定的な場面に関わることが出来なかったと言うのは、実にシビアな描写だったと思う。ただ…それがラノベ的に許されるのかと言うと、ねえ…。これだと、普通は盛り上がりに欠けているととらえられてしまってもおかしくないよね…。自分はこれは作者のクールな認識の発露だと思うのだけど、ラノベとしては悪手といわざるを得ないですよ。だって、一人称で主人公に感情移入させておいて、主人公がまったくの無力だった、と言う結末なんだもの。これはつらいよね。せめて三人称であれば、並列して活躍する脇役たちの姿を描けたものをなあ…。あー、なんかヤバイ雰囲気が漂ってきた。例によってこれは4巻完結コースか?まったくカンベンして欲しいなもー。これは編集部のミスだぜ。瀬尾つかさの傾向をきちんと認識していないからこういうことになるんだよ。あー、瀬尾つかさも、ハヤカワ文庫あたりに早く移籍すればいいのにねえ。

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