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2010.02.03

『ビッチマグネット』

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ビッチマグネット』(舞城王太郎/新潮社)を読んだ。

この作品の面白いところは、主人公にはとにかくいろいろな出来事が降りかかって、わりと不幸だったりトラブルにも巻き込まれたりするのだけど、「まあそれはそれとして」生きていく”軽さ”があってすごく良かった。軽いといっても、背負うものが軽いわけでは全然ないよ。主人公は父親に対する複雑な心境を語っているし、その結果、情緒不安定になる。弟と喧嘩したり、その弟はビッチにハマって人生狂わされるし洒落になんねえ。でも、それでも”不幸ならばそれと付き合う方法がある”と言うのがすごくカッコいいなあと思う。

トラウマなんて物語なんですよ。不幸なんてのはドラマなんですよ。いや、勿論トラウマは大変だし、不幸はつらい出来事なんです。夫の浮気に苦しむお母さんは人生を擦り切れる思いだったし、主人公も弟もつらい思いをするとしても、「まあそれはそれとして」人間は”生きていかなくてはならない”。これは不幸に対して耐えろ、って言っているわけではなくて、むしろきちんと向き合うから生まれる軽さなのよね。自己憐憫にも陶酔にも陥らないで、きちんと目の前の不幸と向き合って、不幸との付き合い方を考える。ときには攻撃したり、ときには逃げたり、あるいはそもそもそれが敵なのかどうかを見極めたり。

ただ、だからと言って苦しまないわけじゃない。葛藤しないわけじゃない。悩んだり、苦しんだりすることは常にある。だけど、それはそれとして人間は生きなくてはならないのだ。人は生きて、恋愛をしたり泣いたり怒ったりして、ときどき、いやしょっちゅうすげーバカなことをしたり、浮気したり、騙したり騙されたりするけど、それがなにか特別なことかっつーと…いや、まあ、特別なんだけど、当たり前でもある。うん、なんか上手く言えねーな。まあ女の子がビッチかどうかなんてどうでもいいじゃん!問題なのはビッチか否かではなく、その結果が何をもたらすかってことでしょ!?って感じか。違うな。過程を飛ばしすぎて自分でも良く分からん。

少なくとも、この話はすごく断片的な話だということは言えます。確固たる物語はなく、物語の断片が主人公の語りによってすごくダイナミックに語られる。ただ、そこに起こることは別にすごい大事件というわけではなく、人間関係のこじれとか、恋愛の悩みとか、未来の不安とか、そういう小さな出来事なんだ。ただ、物語が進むにつれて、断片的なものでしかなかった物語は、少しずつ主人公の中に積もっていく。彼女が経過していった出来事が、彼女になんらかの作用をもたらしているんですね。これは別に珍しいことではなくて、大人になるにつれてだれもが経験することでもある。父親と母親の関係について、子供のときは世界が終わるような出来事だったのが、成長して自分も恋愛するようになると、その関係性が実はどこにでもある普通の出来事であるとふと気がつく。そうして彼女は世界を知って、許しはしないまでも、さまざまな出来事を許容するようになる。

その過程を綴る筆致がね、深刻ぶらず、しかし痛切で、もうたまらんなあ、と。すごいね。

追記。まあとにかく、最後の方の最後の花さんの言葉は分からん!分かりそうな気もするけど、わかりたくないぜ!って感じだった。おしまい。

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