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2010.02.06

『クシエルの矢(3)森と狼の凍土』

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クシエルの矢(3)森と狼の凍土』 (ジャクリーン・ケアリー/ハヤカワ文庫FT)を読んだ。

物語もついにクライマックスと言うだけあって、冒険にロマンスに合戦も最高潮、と言う感じ。つうか最終局面だけにほとんど全編合戦シーンだらけと言う感じだったなー。物語もスケールアップしてフェードル個人の物語と言うよりも、テールダンジュ国の存亡を巡る物語に推移して行く感じ。もっとも、完全にフェードルの物語から外れているかというとそうでもなく、テールダンジュの存亡を、フェードルの視点から語るというスタンスは変わらず、思ったよりそのあたりブレがなかった。フェードルはちゃんと主人公だったよ。

ただ、事態が完全に一国の運命を動かす状況になっているのだが、あくまでもフェードルの視点からでしか見れないので、いささか状況が分かり難くくなっていたのは痛し痒しと言ったところかなー。物語はあくまでもフェードルが体験したことだけを描写しているので、フェードルの知らないところで何が起こっているのか、基本的に説明してくれないんだよねこれ。だからフェードルと一緒に読者も状況把握に努めないと、あっという間に物語に置いて行かれてしまう。実にスパルタですなー。

しかし、自分としてはこれは欠点ではないと思うんですよ。フェードルに視点が固定されているのは、テールダンジュと言う異世界を、細かい描写を積み重ねることで立ち上げていくという意図があるわけで、その分かりにくさと言うのは”異世界のリアリズム”の証明であるといえるわけで。なんでも神の視点で解説されてしまっては興醒めですからね。異世界とは、まるでホンモノであるかのように思わせる異世界であって欲しいというのがファンタジーオタクとしてのささやかな願いです。俯瞰視点が駄目とは言わないけど、節度を持って欲しいところです(えー具体的な例はカンベンしてください)。

ただ、この作品については、ちょっとそのあたりの各種要素が噛み合ってない感じはしたな。ちょっとだけだけど。繰り返しになるけど、物語はすでにフェードルの手の届く領域からは離れているんですよ。しかし、物語はあくまでもフェードルの視点で語られる。そうするとどうなるかと言うと、フェードルが積極的に陰謀や外交に関わっていくことになるわけですね。まあ主人公なんだし、いろいろ活躍してもかまわないといえばかまわないんだけど、あまりにも八面六臂の活躍に、いささかご都合主義的な感じはしてしまったなあ…。ダルリアナの双子王を口説き落とすのに、結局、フェードルがたらしこんだ形になっちゃって、それでいいのかよおい、と思わずツッコミを入れてしまったし。つまり、状況のダイナミズムが、フェードルの主人公性と対立していると言う感じ。フェードルが活躍しすぎると国の危機が軽くなってしまうし、かといって国の状況に主眼を置いたらフェードルの物語じゃなくなってしまうし。難しいね。まあこれで国の存亡とフェードルの物語は”関係ない”なんてことをやってしまったら、それは七姫物語だもんなー(今更ながら七姫物語の特異性を感じますな)。

話が逸れました。まあ物語的には実にクライマックスのテンションを最後まで維持していて、絢爛たる物語であったよ。早瀬の主あたりはファンタジックなロマンスがあり、合戦もあり、最後の戦いにおいても機転と勇気で立ち向かうフェードルの姿があり、そして宿敵メリザンドとの対峙と、息をつく暇も与えてくれない。まさに激動よなー。一応最後には綺麗に決着をつけつつも、不穏な動静を残したまま第二部へ。また虚実入り乱れる陰謀劇になるんだろうな。近いうちに読みます。

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