『銃姫(10)』『銃姫(11)』
『銃姫(10)』『銃姫(11)』(高殿円/MF文庫J)を読んだ。
これにて完結。ここまで来るのにえらく長かったような短かったような。2004年4月に一巻が出たと言うことは6年近くかかっているのだから、随分と長丁場だったよね。作中でもかなりの時間が過ぎていて、セドリックも変わってきたけど読み手側の意識もかなり変革があったように思う。きっと今から一巻も読み始めたらまた違った感想が生まれるのだろうなー。たぶん、一回ぐらいはやっておきたいな。完結記念と言うことで。
10巻はスラファトに追い詰められたセドリックがアンとともに束の間の平和を得て、そしてそれが突然に終わりを迎えるまで。ついに二人のすべてが通じ合った後の語りはとても平穏なものであって、願わくばこのまま時よ止まれ、と思わせる静寂さがあった。おお、これがロマンスと言うものなんだろうか、と言う感じ。11巻に入って、スラファトに出頭したアンを力を失ったセドリックが追うという展開なのだが、ここでようやく前世代の主役であったオリヴァントやジェスたちが登場する。彼らの力によって、セドリックは再び力を得て、アンを取り戻すことが出来るのか?と言う展開になるわけですが、まあちょっと今回のジェスのやっていることは消化不良な感じですな。伏線をばらまきまくりで結論が語られてないあたりはちょっと気になった。これ、つまりはパルメニアシリーズとのリンクなんだと思うんだけど、正直、またか!って感じ。自分、ちょっとこの作者の世界観の辻褄併せモードって好きじゃないんだ。前にもどっかで書いたと思うんだけど、物語がすごく窮屈に感じられてしまうので、あまり成功しているとは思えないんだよな。いやまあ別にいいんだけどさ。
まああくまでも今回はちょっとしたリンクで留まってくれたのは個人的には安心した。あくまでもセドリックの成長の物語としてはブレてない感じ。オリヴァントとの対話は正直短すぎねえか?と思ったけど、言葉で伝わるものなんてすごく少なくて、オリヴァントのなした行為で感得するのがセドリックにとってもっとも良かったのかなあ、とか思った。
ラストは…これどう解釈すればいいんだ?つまりあれか、「世界よりも君一人を選ぶ!」と言うデジタルデビルストーリーの中島くんみたいな選択をしたと。まあこの場合は歪んだ世界を正常に戻したということでもあるが、それでも世界を一度ぶっ壊したことには違いがなく、後世ではものすごい悪名になりそうですね。ん?ひょっとして作者の他作品で名前とか出てたっけ?もう記憶が定かじゃねえなあ…。
ともあれ、ついに銃姫シリーズも完結。あの生意気なクソガキだったセドリックが、他人の命を背負い、信念に貫き通す男に成長したことにはただ感服します。旅の過程で何度も自分の愚かさ、浅はかさを突きつけられ、のた打ち回りながら前に進んできた過程の描写にまったく妥協のない作者の美学には本当に見事だったと思います。子供だった彼が大人になり、人を愛することを知る。なんと言うか、見事なビルドゥンクスロマンとして完結しましたね。ありがとうございました。
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コメント
無難に終わったと思うし良いエンディングだとは思うけどちょっと消化不良かな?という点は残りましたね
暁帝国の女王のこと(夫の事やバロットの事とか)やアラベスカのセドリックへの想い(諦めるなら諦めるなりに描写を……)とかなくても良かったんじゃ?な恋愛関連の多いし
ギャランヌやジュディットはどうしたのか髑髏王の六つの目のその後とか気になるし(特に後者は活躍さえないないしその後も書く気ないんだったら登場させなくてもよかったんじゃ?)とか
メインはきっちりしてるんですが、世界観広げるタメかサブキャラや設定も描写する割に回収しない点が気になりました
どこぞのファンタジア文庫みたいに別に短編集シリーズをやるとかだといい感じになるとは思うのですが。
パルメニアシリーズ意外にもプリンセスハーツシリーズともリンクしてるらしいし、そこまでやるなら自分のサイトで大雑把なつながりとか解説しておいて欲しいとも想いますし。
投稿: HT | 2010.02.18 10:24
個人的に伏線を回収しないのはまあ別にOK。問題は無理矢理リンクさせているのが好きでないので。まあ銃姫レベルなら別にかまわないかとも思うんですけどね。
投稿: 吉兆 | 2010.02.18 23:46