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2010.01.18

『耳刈ネルリと十一人の一年十一組』読了

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耳刈ネルリと十一人の一年十一組』(石川博品/ファミ通文庫)読了。

2009年におけるオレ的最大ラノベニュースと言えば、これはもう石川博品がデビューし、ネルリという作品を書いたことだと言っても過言ではなかろう。…いや、過言かな?まあ、2009年新人の中では一番衝撃を受けたのは間違いないので、ここはあえて言い切ってしまおう。ネルリを読まずして「最近のラノベは元気がないなあ」などと言っている人はネルリを読んでいない自分を懺悔して畏まるように。ん?ネルリを読んだ上でそんなことを言っている人はどうなんだって?そんなやつぁ敵だ!

で、そんなことはどうでもよく。『耳刈ネルリ』の話をしたい。

完結。完結であります。3巻で完結。正直、まだまだいろいろ語れるところがあったと思う。だってそもそも高校も一年目なんだぜ!彼らの高校生活はこれからはじまるんだぜ!レイチとネルリがお互いの差異を認めた上で、それでも一緒にいられる道を捜し求める過程には、まだまだ数多くの語られなかった出来事が合ったはずなんだ!自分はそれが見たかった…。ただ、彼らがくだらない会話をして、どうでもいいことをやって、笑っている姿が見たかっただけなんだ。それってそんなにも欲張りなことかい…?ああ、わかっている。オレだってわかっている。打ち切りですよね!ああそうですね!…ショックが大きすぎて正直感情をもてあまし気味なんだけど、まあ受け入れるよ。エピローグでほのめかされるいくつものエピソードの芳醇さ、それを想像し、悶え苦しむしか読者には許されていない。それはそれで幸福なことなのかもしれないし、それで良いのかもしれない。そう思っておくよ。

とまあ、腹の底にたまったヘドロを吐き出してすっきりしたところで3巻の内容。いつも通りレイチの過剰にネタに塗れた地の文が続くわけですが、これが不思議と読みにくさを感じないのはどういうことなのだろうと思う。例えば”みーまー”とかも地の文で嘘をつく、読み手の心を糊塗することをやっているわけですが、アレは壮絶な読みにくさと苛立たしさを伴います。少なくとも自分は。ところがレイチの独白は、どんなにふざけたことを書いていても、するっと頭に沁みこんで来る。本当に不思議なんだけど、レイチの言葉は常にどこかに”静けさ”とでも言うものがあると思うんです。静かで部屋の中で雨降る様子を窓から眺めているような、そんな静けさを感じるんだよな。つくづく読んでいて思うのは、石川先生は実に文章が美しいな、と言うこと。ネルリってのは言ってみれば普通の学園モノよね。まあ舞台となっている学園が(旧)共産圏っぽい連邦国家にあって、各地から集まってくる生徒たちの文化的な軋轢が物語を駆動するガジェットになっているのが変わっているけど…って書いてて思ったけど、この設定にものすごく美味しくねえ?一人一人の文化を掘り下げていくだけで一作できちまうじゃねえか。長期シリーズ化すればその可能性も…いやいやもうそれは考えまい。ええと、まあやっていることはちょっと変わっているけど学園物で青春なわけです。異能とかもなんにもない。そんな作品のどこが面白いのかといえば、それはレイチの語りを初めとする”文章の美しさ”がその一つとしてあると思うのです。ネタ塗れのレイチの語りの中、時折こぼれるように、あまりにも繊細すぎて大切に大切に、ささやくように送り出されるキレイな言葉があって、そのあたりに作者の言葉に対する慎重な手つきがあって、すごく良いと思うのです。特に、”大切な時には言葉は偽らない”というあたりにいたっては最早感動的とさえ言える。レイチは自分のことはいくらでも偽るけど、他人の言葉を偽ることが無いんだよね。イ=ウの告白シーンは、その数ページ前とは別人のように繊細に言葉を扱うレイチが見れる。「ネルリの明けぬ夜」のシーンは、まさに石川先生がフルスロットルになって、かなり泣きそうになるほどだった(僕はきれいな文章を読むと泣く奴なんだ。うっせうっせばーか!)。あ、個人的にはエピローグの別離と再会の予感に支配された文章も好きです。11人の言葉の一つ一つにそれまで積み上げてきた過去が滲み、それでも八高時代にあった出来事が確かに彼らを繋げているというのが良く分かる。文章だけで、過去と未来につながっている感覚があるっつのかなー。言葉が狭くないんだよね。広がっているんだ。この言葉は”いまここ”に留まらず、”かつてのあそこ”であったし、”いつかのどこか”でもある。この広がりを感じさせる文章を読めただけでも、すごく嬉しいし、満足をした。終わってしまったこと自体は悔しいけれど、この終わり方自体には満足している。その意味では、すごく幸福な作品でありました。また、どこかで合えるといいね。

しかし、言いたいことがグチャグチャになってて何が言いたいのかさっぱりわからんなこれ…。まあいいや。ネルリについてまとまって語れるなんて、これが最後かもしれないしな。書きたいことは書いた。言いたいことは一つだけだ。本当にありがとう!作者にはただ感謝を。

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コメント

> ネルリを読まずして「最近のラノベは元気がないなあ」などと言っている人はネルリを読んでいない自分を懺悔して畏まるように。

すいませぬ。一巻だけ読んでました!
ああいうリビドーだかなんだかをたれながしてるだけのテクストにレスぽんすがあると嬉しいです(笑)。

やってることは王道的なのに、かなりヘンテコな作品でしたよね。3巻完結なら、全部読んでみようかなぁ。

投稿: ub7637 | 2010.01.19 08:17

トラックバックを送ろうかな、と一瞬考えたものの、ちょっとアレかと思い自重したのにub7637さんが釣れちゃった!エサもつけてない釣り針に魚が食いついたような驚き…。

まあそれはともなくとして、ネルリの二巻は間違いなく傑作なのでぜひ一読を。まあ読み手を選ぶことは間違いないので面白がれるかどうかは保障しませんが(予防線を張っておく姑息な自分)、間違いなく新しいタイプの作品であると思います。

三巻は青春の葛藤と切なく繊細な恋物語が語られます。いやマジ本当だって。

投稿: 吉兆 | 2010.01.19 22:07

終わってしまいましたね耳刈ネルリ。レイチは嘘つきだけど、(読者と)ネルリ以外にはたいして嘘を言っていないんですよね(たぶん)。1巻で出てきたイ=ウの千百八十三行詩が読めないってのはてっきり(断るための)嘘かと思っていました。

個人的にはもう少しもう少しだけ彼らの賑やかな日常を、静かで青春で曖昧で懐古なレイチの語りを眺めていたかったです。

投稿: isaki. | 2010.01.24 10:00

まさか一年生で話が終わってしまうとは予想外でした。エピローグはあったけど。

あとレイチが嘘を言っているのは基本的に”地の文”だけで、言動そのものはまともだと思います。ネルリにも嘘はついてないんじゃないかな(本心を喋ってないことはあるけど、常識的な範囲だと思います)。

ギャグだと思ったらマジだったりするところはこの作品らしいところかもしれないですね>千百八十三行詩

投稿: 吉兆 | 2010.01.24 11:05

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