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2010.01.30

『空ろの箱と零のマリア(3)』

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空ろの箱と零のマリア(3)』(御影瑛路/電撃文庫)を読んだ。

御影瑛路もキャラクター小説を書くのが上手くなったものだなあ、と感心した。キャラを立てつつ、作者特有の”歪み”もきちんと作中に取り込まれているし、わりとテクニカルな作品なんではなかろうか。今回は非常にコンゲームっぽい展開で、まるでこれじゃあ土橋真二郎みたいだなあ、とか思ったりもしたけど、実際には騙しあいよりも”人間性”の話になっているのはやはり作者らしいところではある。作者のテーマにブレがなくて実に素晴らしいです。

前半のゲーム的な部分も緊張感があって面白かったけど、”ループ”(本当は違う)に入ってからどんどん何が起こっているのか分からなくなっていくところも良い。このあたりからキャラが、とか駆け引きが、とかではなくて、”舞台設定そのものが歪んでいる”と言う不気味さが現れてくるところが面白かった。この作者の明らかな長所として、独特な雰囲気をかもし出す部分にあると思うのだが、中盤から終盤にかけての不気味な雰囲気はさすがと言うしかないな。

ラストで種明かしされる箱の仕組みは、ちっぽけな人間性を嘲笑う悪意に満ちたギミックで、これまた大変よろしゅうございます。構造そのものに悪意が満ち満ちているというあたり、実に作者は悪意と言うものにこだわりがありますね。人間を襲う悪意とは形のあるものではなく、誰かの意思によるものではなく、ただ天然自然にそうであるがごとく当たり前のように悪意は存在すると言う、ものすごく”厭”な認識がクールだ。

と言うわけで、実はこれ前後編の全編なので物語的な部分に触れるのは難しいのだけど、細部に目を向けると作者特有の”悪意”と”歪み”に満ちたガジェットが大変素晴らしく、自分はほくほくと読みました。作者の巧拙はともあれ、この人の世界を認識する目は、実にグロテスクでありながら無機質で非人間的なものに支配されていて、僕はとてもとても好きなのだということを再認識させてくれました。

残酷で無残で乾いている。そこは異形なれど確かに美しい。美しさを描く作家であると、僕は思っているのです。

追記。「はこマリっ!」にちょっと笑ってしまった自分が悔しい。

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