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2010.01.10

『アンシーズ(2)刀侠戦姫言想録』読了

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アンシーズ(2)刀侠戦姫言想録』(宮沢周/スーパーダッシュ文庫)読了。

新人のデビュー作の続編と言うのは、大抵の場合、元々が続編を考えていない作品だったりするので、まずシリーズ化するにあたっての地ならしの回になることが多いのだけど、この作品も例外ではなかった。おそらくシリーズを通しての中ボスだかラスボスの登場、ヒカルの謎、物語設定の根幹にアプローチするミツウなど。今後生じうる物語的の伏線の仕込みが始まっている。いささか作品単品としては設定が先行しすぎて正直迷走しているかなあ、と思わないでもないが、今回はしょうがないところだろうね。一応、主人公の戦いに対するモチベーションとか、ヒカルと仲間の関係とかを軸にして物語を作っているけど、そんなに突き詰めているわけでもないしな。まあ主人公はかなりのヘタレ軸がブレまくりなのだが(作中でも言及されている)、周りの人に支えられながら成長していくと言う道筋が見えてきているので、物語としては悪くはないんじゃないかと思う。あと中ボスっぽい生徒会長はなかなか良い感じにゲスな感じですな。他者のことなどモノとしてしか認識しない不気味さと、ヒカルに対する恨みと執着を滲ませるあたりの人間味など、キャラクターとしてブレがあるのが、今後も動かしやすそうな気がする。

えーっと、いろいろ書いたけど、作品としては楽しく読んだ。中身は男だらけだけど絵面は美少女だらけと言う倒錯した空間で繰り広げられるドタバタは、なんつーかやっぱりエロい。話がどうとか言う以前に空間そのものがエロい。だからそこでなにが起ころうともエロいというのは論理的帰結である。新登場の美少女キャラクターが片っ端から実は男と言うのは、うん、まあよくわからんがやっぱりすごいよな。そのエロスの相反するように(意外とそうでもないかもしれないが)、生徒会長を始めとして、アクションパートは実にタナトスの香りが漂う殺伐としたものとなっており、日常パートとの落差を感じる。登場人物があっさり死んでしまいそうな不気味さを感じるのだ。たんなるドタバタアクションでは終わらない、奇妙な緊張感を維持しているところはこの作品の良いところだと思います。一応、今後の展開に必要な要素は出揃った感があるので、以降の展開に期待したい。

以下雑文。この作品における奇妙な緊張感と言うのは、主人公が性転換をしてしまうと言うことを深い関係があるのではないだろうか。と言うのは、主人公のトモはわりとヘタレで気の弱いところのある普通の少年であり、読者は基本的にトモの視点で物語を見ていくことになる。もとものニュートラルな人格なので、読者の感情移入を阻害しないんですね。ところが、トモは作中で女の子になってしまう。トモ自身のパーソナリティは変わらず、女の子として物語に関わることになるわけです。女の子になった結果どうなるか。”搾取される側の存在”になってしまうんですね。読者が。なんつーかこの作品はコメディ要素もあるけど基本が殺伐としていて、殺し合いの話なんです。ガチで欲望と暴力の話をやっているんで、女性には、実はけっこうつらい展開があったりする(2巻で登場した”普通の”女の子であるルナも、なんかものすげえヘビーな過去がありそうだぜ)。視点人物であるトモが女の子になっているため、読者自身が傷つけられる側に立たされてしまう。生徒会長なんかは、実は今作のマチズモの権化みたいなところがあって、トモはけっこうヤバイところまで追い詰められたりする(性的な意味で)。このあたり、男性的視点だけで物を見ていると、ひやりとさせられるところなんではないかな、と思うのでした。まあ女性が読んだらどう感じるのかは知らない。以上。

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