« 『シュガーダーク 埋められた闇と少女』読了 | トップページ | 買ったもの »

2009.12.15

『スプリング・タイム』読了

51qkyrwul__sl500_aa240_

スプリング・タイム』(蕪木統文/ガガガ文庫)読了。

最初に書いておくけど、自分はまだこの作品をきちんと咀嚼出来てない。書きながら考えている感じ。なので結論が出ないでグダグダになる可能性が非常に高いけど、あんまりウダウダ考えているのも飽きたのでとりあえず書くことにする。

これはなんつーかノスタルジーの話、なんだろうたぶん。よく、過去の自分自身のエピソードを思い出して、本当にそれが自分のことなのかわからないと言う経験がだれしもあると思うのだが(自分だけかな?)、昔の自分って本当にわけわからんことを考えていたと思うことがある。今思えば、なんでそんなことを真面目に信じていたの?みたいな。例えば、自分は中学生時代、マジで人類にはコールドスリープが可能だと思ってた。病気になったら未来の科学力に期待してコールドスリープする、と言う小説を読んだせいだと思うんだけど、その時はマジで出来ると思い込んでいた。ちょっと調べてみればわかることなのに、なんでそれに気がつかなかったのか自分でもさっぱりわからないんだけど、ただ、その時に考えていたことはただの間違いに過ぎないのか、って言うとどうなんだろうなあ?いや、客観的には間違いだとは思いますよ?少なくとも今の自分はそれが間違いだと判断しますよ?ただ、その時、その瞬間の自分にとってはそれが本当の事であり世界を理解するフィルターだったと思うんだよね。そのフィルターを通して人間は世界を理解する。そのフィルターってのは、実は成長した今もある。ただ違うフィルターを使っているだけ。いわゆる常識と言う名のそれだ。そのフィルターそのものは、実は正しさは誰にも証明できない。ただ、いくつかあるフィルターの中から、まあ妥当だろうと思われるものを選択しているに過ぎない。まあ選択の余地が無い場合もあるけど。成長して余計な知識をつけてくると余計に選択することが出来なくなってくる。これがいわゆる頭が固くなると言います。で、一般常識に縛られないうちは、いろいろなフィルターを選択できる。今の自分とは異なる論理で世界を見ているんですよね。子供のうちは。その時の自分がどのように世界を見ていたのか。世界はすごく輝いていたかもしれない。もっと薄暗かったかもしれない。少なくとも、今よりも世界に対して希望とか夢とか、まあなんつーか常識では計り知れない”何か”を観ていたはずなんですよ。

で、ようやく話はこの作品の話に移ります。父親が最近死んで、不良に絡まれたりしてなんとなく苛立っている主人公がいます。とくに父親が死んだことは、取り返しのつかないトゲのように彼の心に突き刺さっています。世界は取り返しはつかないし、やり直しもきかない。そんな感じで達観して、あるいはふてくされています。そんな彼が、10年前に行方不明になったはずの幼稚園時代の友達に出会うことになります。10年前、行方不明になったその時の姿のままで。なんだかんだでいろいろあって、その友達、ショウキと暮らし始める主人公なんだけど、かつての親友との間にある10年間の断絶と言うものをしばしば感じるのですね。あの頃の自分たちは、ヘンテコな歌を作って歌い、近所の公園で冒険していた頃のことを語るショウキに主人公は戸惑うわけです。そんなこと、今ではすっかり忘れてしまった。主人公はショウキと供に過ごすことによって、すでに失ってしまったあの頃の記憶を、少しずつ取り戻していきます。ただ世界が輝きに満ちていた頃のこと。不思議が不思議なこととして存在していたときの事を。そうして少しずつかつての世界に対するフィルターを取り戻して行くことになります。言ってみれば、これは世界に対しての信頼を取り戻して行くという流れなんですね。

まあ最終的にタイムトラベル的な展開があるんですけど、まあこれはそんなに作品の主題としては関係ないっぽいので省きます。と言うか、この辺り良く分からないんですよね。おそらく、世界に対する信頼を取り戻した主人公が、世界に対する別の観方を得ることによってタイムトラベルを果たすことになると思うんですが、それが最後とどのようにつながってくるのか…。世界に許された、と言う解釈でいいのかなあ。どうもこのラストはいくつかの解釈が出来そうで悩ましいんですよね。最終的には、”いつかあの頃に戻りたい”と言うノスタルジーに回収されてしまったとも読めるし、世界と和解した主人公が新たな現実を手に入れたとも取れるし…。すいません、この辺りはまだ良く分からないです。でもまあ、そういう多様な読み取り方が出来るよい作品だったんじゃないかな!(無理矢理)

あ、あとヒロインの女の子がいるんですけど、この子もなんだか良く分かりません。なんつーか、すごく面白いキャラなんですけど、すごく良くわからないキャラなんですよね。ただ、主人公の傍にいて、なんだかバカな事を言ったり時々良い事…はそんなに言わなかったかな?まあ主人公にとっては、自分の変化を他者から観てもらう必要があったのかもなーとか思ったりもします。つまり外部の視点であると。うーん、でもそれだけかなー?

まあ、そんな感じですごくつかみどころの無い作品ですけど、良い作品ですね。ふわふわとして不思議な雰囲気に支配されていて、今の自分を肯定してくれる優しさがあり、すでに失われてしまったことへの愛惜がある。そんなような作品だと思います。

|

« 『シュガーダーク 埋められた闇と少女』読了 | トップページ | 買ったもの »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/29313/47030995

この記事へのトラックバック一覧です: 『スプリング・タイム』読了:

« 『シュガーダーク 埋められた闇と少女』読了 | トップページ | 買ったもの »