« 買ったもの | トップページ | 方針 »

2009.12.16

『僕の小規模な奇跡』読了

41tm0kogvyl__ss500_

僕の小規模な奇跡』(入間人間/アスキーメディアワークス)読了。

ちょっとユーモラスな…なんだ?恋愛小説?青春小説?ミステリ風味?まあ良く分からないけどいつもの入間人間だった。登場人物たちの思想とかにはあまり触れるつもりはないけど、一見、奇矯な言動、行動をしていても、根っ子の部分は常識人と言うあたりも作者らしい。そうそう、最近、気がついたんだけど、この人の書く物語は実は良識的だよね。ちょっと違うか。物語は非常識で悪意に満ちているかもしれないけど、人間そのものには愛がある、って感じかな。青臭かったり、偏狭だったり、断定的な部分もあったりするけど、根本的なところには愛があるので、まあいいんじゃないかな、と思えるのです。

物語は、空気の読めない青年と、引きこもりの少女の視点から語られる。なんかこの二人の描写がとても丁寧で(作者らしい韜晦に満ち溢れているものの)、ペダンティック…ともなんか違うけど、そう、村上春樹っぽいというか、内相的な印象を受けた。青年は本当に感受性があるの?と思えるぐらいに空気を読まないのだけど、それでも彼なりには自分の人生について思うところがあり、そして彼女に惹かれ、行動する。少女もまた戯言が多めで閉鎖的な性質ながらも、日々を過ごしている。それぞれちゃんと自分の青臭さ、未熟さを自覚しているところが今までの入間作品とは異なるところかもしれませんね。まあ入間キャラだけあってペシミスティックで悲観的な人生観の持ち主(とくに女の子)ではあるんですが、まあそれでもなんとかやっていきましょう、と言う前向きさを感じる。まあ前向きだからなんだ、と言う感じではあるんですが…(本当に作者は厭世主義的だな!)。

二人の物語は交互に描かれ交差して行くことになるのだが、あまりその交わり方に感心は、残念ながら出来なかった。ストーカー事件を経由して、ある一つのミスリードが仕掛けられているのだけど、その結果がなあ…。ネタバレになるので詳細は書かないけど、もうちょっとミステリ的になんかあるのかと思うじゃない、普通。ところが伏線無しで済ませたりと、すごく残念感が漂う。これから読む人はミステリとしての期待はしない方が楽しめるでしょう。自分はちょっと期待してしまったのでガックリ来てしまった。まああくまでもミステリは味付け程度に考えて、前向きなのか後ろ向きなのかわからない若者たちの青春劇として捉えるのが良いのではないでしょうか。

あと、細かい事なんだけど、いや、そんなに細かくも無いところなんだけど…最後に出てきた女の子はなんだったの?最後に突然出てきて物語を締められても困ってしまうんですが…。え?あなたなんかフラグありました?みたいな。どっかで読み落としたのかもしらないけど…わからんなあ。この作者は全作品の間にクロスオーバーを仕掛けることがあるから、別作品の登場人物だったりするのかもしれない。まあその辺りはだれか他の人が頑張って調べてくれることを期待したい(他力本願ですね)。

|

« 買ったもの | トップページ | 方針 »

コメント

最後の女の子、ホントに誰か分からないの?

投稿: オアシス | 2010.08.23 18:33

分かるんですか?

投稿: 吉兆 | 2010.08.23 19:48

最後の女性は最初に告られた人、つまりあの会社員の奥さんですよ。
 
この作品は他の入間作品にもいろいろと味付けを施してくれている作品です。
種島くんとか橘川とか病気の息子のお父さんとか。

投稿: もなど | 2010.08.30 18:41

んん…?なんかちょっと違うような。ちょっと良く覚えていないですが、ここで書いているのは”妹”が出会った(たぶん同年代ぐらいの)女性のことを書いた、んだと思います。なにぶん、読んだ記憶が曖昧になっていて、自分でも何を気にしていたのか良く覚えていないのですが、機会があれば調べてみます(ダンボールに埋もれてしまっているので本が見つかったらですが…)。

投稿: 吉兆 | 2010.09.01 00:58

吉兆さんが言ってるのは最後じゃなくひとつ前の七章 奇跡の行方で出たドリョク・オンナと呼ばれてた人ですね
妹(私)が過去に絵の努力賞を取った時に並んで努力賞をとった女の子、といった扱いだったかと

投稿: 通りすがり | 2010.12.02 16:23

あ、そうですそうです。この作品は固有名詞が少ないので、そのあたりでごっちゃになっていたみたいですね。ありがとうございました。

投稿: 吉兆 | 2010.12.02 22:48

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/29313/47038281

この記事へのトラックバック一覧です: 『僕の小規模な奇跡』読了:

» 1Q84 BOOK 1 |村上 春樹 [アマゾン情報局]
1Q84 BOOK 1村上 春樹新潮社 刊発売日 2009-05-29 面白い方... [続きを読む]

受信: 2009.12.18 20:42

» 1Q84 BOOK 1 |村上 春樹 [アマゾン探検隊]
JUGEMテーマ:小説全般 1Q84 BOOK 1村上 春樹新潮社 刊発売日 2009-05-29 面白い方だと思います! 2009-12-14 村上春樹さんの著書は、8割読んでいます。 ただ、文学には詳しくなく、書評等も読むことは少ないので、 本を分析して読むタイプではないです。 また、以前、読んだのは5年位前で、学生でした。 社会人になり、初めて読んだ作品です。 感じたことが三つありました。 ・文体は読みやすく、いかにも村上さんらしい! ・村上さんの小説の手法... [続きを読む]

受信: 2009.12.18 21:19

« 買ったもの | トップページ | 方針 »