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2009.12.24

『野武士のグルメ』読了

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野武士のグルメ』(久住昌之/晋遊舎)読了。

『孤独のグルメ』の原作者による一人飯の風情に溢れた作品。まあやっていることは孤独のグルメとなんにも変わりません。街をぶらぶらし、その街の空気を感じ、おもむろに飯屋に入って食う。ただそれだけ。ただそれだけなんですが、これがすごく面白いんですね。なんと言っても主人公の器の小ささが最高。この人、本当に人間がちっちゃいです。初めて入る店には勇気が出なくて尻込みしたり、お店のおススメを断りきれずに大量に頼んでしまったり、冷やし中華を食いにいくのに、とりあえず近所の当たり前の出来合いのものに拘ったり、お腹が空きすぎてしまって適当に中華料理屋に入ってみたらこれがヒドイのが出てきて絶望したり。とにかく、つまらないことで一喜一憂しすぎです。どうでもいいことにこだわりが強いので、こだわりがなってないところには文句を並べ立てる(でも口には出さないあたりが小市民)。全編を通じてそんな感じなんですが、いろいろな店に行って飯を食って、思い通りのものが出てきてホクホクしたり、まずいものが出てきてガッカリしたりする姿に、作者の人格が滲み出てくるので読んでいるこちらがホクホクしてきます。

僕が一番面白かったのは「生野菜定食、焼肉付き」。およそありえないこの定食に好奇心から頼んでしまった作者の苦心惨憺ぶりが面白い。「肉って栄養があるんだな」とかしみじみ言っているあたりに思わずニヤニヤしてしまった。冷やし中華の話とかもいいですね。後から来た客がどんな食べ方をしたのか気になってしょうがないけど、知らないほうが夢が広がるよな。「悪魔のマダム」とかもそうだけど、個人的には失敗談の方が楽しい。叙情的、感傷的に語られる話にもなかなか味わい深いものがあるけど、途中に失敗談があるからそうした叙情が際立つと思うんだ。

”野武士的”な食事を理想としながらも、なかなか野武士になれない作者の自意識がとても面白いグルメ小説でした。一応グルメ小説なんだと思います。

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