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2009.12.30

『プールの底に眠る』読了

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プールの底に眠る』(白河三兎/講談社ノベルス)読了。

第42回メフィスト賞受賞作。こーれーはー傑作。メフィスト賞は一時期ハマってたものの最近はさっぱり読んでいなかったんだけど、こういう作品が出てくるのならまだまだ捨てたもんじゃねーなーと思いました。偉そうですねすいません。いや、これは本当に素晴らしい作品でした。悲劇的な物語を淡々とした語り口であくまでも美しく語る文体にはとにかく素晴らしい。どこかで男の子が主人公の『砂糖菓子の弾丸は撃ち抜けない』(桜庭一樹/角川文庫)と言う形容をされていたけど、自分は『カッティング』(翅田大介/HJ文庫)を連想した。あれのラノベ的設定を排除して、より純化された感じ。会話のやり取りや主人公の思考の流れを拾い上げるのが非常に上手く、ラストまで悲劇的な色のままに突き進む物語は息もつけぬ緊張感を孕んでいる。いや、これはg本当にすごいなー。ラノベ的な軽さはあるし、悲劇的なんだけど、とても美しい。

感想を書くために再読してみたんだけど、実は伏線の張り方と言うか、情報の出し方にすごく気を遣っているなと思った。最初からクリティカルな情報が出ているんだけど、それを読者には気がつかせないさりげなさが心憎い。最後まで読んだ後に読み返すと、作者は何一つ嘘をついていないのに騙されていた事に気がつかされる。後半に向けて明かされていく事実に驚かされるのだが、その驚きが物語とリンクしているのもいいよね、などとミステリ的素養がないのに語ってしまった…。まあいい。

読者を引きずりこむような強引さはないけど、一度読み出すと目が離せないような印象的な物語ですね。文章も平易でありながらも美しく、物語の持つ破滅的でひんやりとした雰囲気が読者を安心させてくれない。そしてそこまで積み上げたものが、ラストですべて引っくり返る展開には賛否両論ありそうだけど、これはこれで素晴らしいものなのではないかと思います。深刻な顔で深刻な話をして深刻な結末を語られても何にも解決もないんだよ!すべての失敗も悲劇も、すべてを抱えて生きていくしかないんだよ!すべてを失くしてしまったとしても、失われたものは無意味ではなかったと信じなくては失われたもの自体が無意味になっちまうんだよ!とか思いました。

この作品はもっと話題になってよいと思います。

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