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2009.11.29

『円環のパラダイム』読了

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円環のパラダイム』(瀬尾つかさ/一迅社文庫)読了。

うほほー。これは素晴らしい。まるでデビュー作を彷彿させる超濃密なSFドラマだー。瀬尾つかさと言ったらやっぱりこれだよなー。や、勝手な意見ですけどね。でもまあデビュー時から一貫して瀬尾つかさに注目し続けているウォッチャーとしては、この高密度で圧縮された異常なドライブ感とインフレ感こそが瀬尾つかさの本領と言うか根幹だと思っているので、久々に”それ”が読めてとても嬉しかったです。

普通なら主人公とヒロインの関係を構築するまでに一作かけるぐらいの内容なのに、序盤で早々にヒロインに主人公への気持ちを自覚させ、さらに告白イベントまでの流れるようなシークエンスにはまさしく瀬尾つかさ節。正直、この時点で圧倒的なスピード感にゾクゾクしてくる。ここで踏んだアクセルをまったく落とさず、さらに踏み込んでいくのがすごい。どんどんスピードが加速していく。主人公たちの関係性の物語は序盤でケリをつけて、主人公が属することになる”学校”を襲う外部世界からの襲来者、”学校”内部の反乱分子の暗躍、比較的平穏が保たれていた世界を容赦なく襲う弱肉強食の掟。親しき友人の死、市民のパニックなど、次から次にかろうじて保たれていた共同体を揺らがす試練に必死に立ち向かう”生徒会”だが、事態は圧倒的速度で迫り、友人の死に悲しむ暇も与えられず、主人公たちはもがき続ける。このあたりの絶望的な感覚は、まさしくこの”速度”がもたらす緊張感であるといえるだろう。

その絶望的な状況をひっくり返すのも、覚悟完了した人間の力と言う流れにも一部の隙もない。物語はすさまじいスピーディだけど、物語の手続きをまったく外していないので、唐突な感じはないんだよね。これはちょっとすごいことなんじゃないかと思うわけです。すげーなー。

と言うわけで、大変瀬尾つかさ分を補給できて満足でした。SF的な広がりも十分にありそうで、この先の物語にもわくわくさせられる。まあこのまま終わってもいいぐらいの爽快感なんだけど、それでも続編を望んでしまうのは読者としての意思の弱さか…。まあなんとかしてくれることを期待したい。

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コメント

吉兆さんの感想を見てる限りでは面白そう。なんとなく避けてたんですが、これはいいかもしんない。よし、買おう。

P.S. テスタメントの感想期待してます。でもアレを真面目に書くのは大変そうだ……

投稿: SHI-NO | 2009.12.01 02:08

キャラクターの描き方がすごくアクロバティックなので、そのあたりに戸惑うかもしれません。あんまりラノベの定石に則っていないんですよね。でも、そこが作者の個性だと思っています。

テスタメントについてはー…えー正直、自分の手に負えません。ウィトゲンシュタイン曰く「語りえぬものについては、沈黙せねばならない」そうですが、自分にとってこの作品はまさにそれ。作品が語っていることについて十分に理解が及んでいないので、うかつに書けない感じです。
いつか語りたいとは思いますが、いつになることやら…。

投稿: 吉兆 | 2009.12.01 13:33

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