« 『電波女と青春男(3)』読了 | トップページ | 買ったもの »

2009.11.22

『ぐらシャチ』読了

514udjw4xgl__ss500_

ぐらシャチ』(中村恵里加/電撃文庫)読了。

中村恵里加らしい、すごく意地の悪い話だった。いやー、作者自身はまっとうなボーイミーツガールを描くつもりだったのかもしれないけど、そこにファンタジーではなく、作者独自のリアリズムを持ち込まれており素晴らしいな、と思いました。なんつっても、ラノベではスルーされてしまいがちな、”異種間の交流”と、その困難を描いているという作者のダブルブリッドから継承されているテーマが、より進化した形で現れている。未知の存在である異種との交流は、ただそれだけでスリリングなものなんですよね。冒頭における喋るシャチとの遭遇というところはどこかスラップスティックな印象さえ与えられるのだけど、グラと名付けられたそのシャチが、”とある姿”でヒロインの榛菜の前に登場してきたことから緊張感が高まってくる。結局、グラと榛菜は、同じステージで物事を考えていない。グラは最初から自分と榛菜は違いの大きい存在であることを知った上で、自分を否定しないでくれた榛菜に惹かれている(みたい)なのだけど、榛菜はその違いがどうしても飲み込むことが出来ずに、不安にかられ、恐怖するようになる。まあこれは榛菜を責めるのもお門違いと言うもので…。基本的に人間は自分の同じ形容をしているものは、自分と同じ思考が通用すると自然に思ってしまうよね。だから”あの姿”で現れたグラに、自分の思考をどうしても押し付けてしまう。まあそれがさらに混乱を引き起こしているわけだけど…。まあそれがなくては、”違う”と言うことさえ榛菜は気がつかなかっただろうから、この過程は必要なものだったのだろう(少なくともグラと榛菜の関係の上では)。あとなー、最終的に一応二人の関係に一つの区切りがついて、少なくともお互いが”違う”と言うことを受け入れることでコミュニケーションの土台が生まれるんだけど、そこに至っても結局失われたものは、救われないものは残るというのがすごくハードだな、と思いました。この世には奇跡などは無く、あるのはただ結果だけなのだ、みたいな。厳しい話ですよ、本当…。

作品としてはこれ一つで綺麗に完結しているとも言えるけど、まだ相互理解のきっかけをつかんだだけとも取れるので、続編もないともいえないかなー。これ以上の結論を出すのは難しいような気もするけど…。しかし、異種間の交流の不可能さを証明して終わった(だが一筋の希望は残した)ダブルブリッドの、その先を描くのがきっと作者の次のテーマなんだろうな、と思うので、新しい世界を見せてくれることを期待したい。

|

« 『電波女と青春男(3)』読了 | トップページ | 買ったもの »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/29313/46830710

この記事へのトラックバック一覧です: 『ぐらシャチ』読了:

« 『電波女と青春男(3)』読了 | トップページ | 買ったもの »