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2009.11.26

『スクランブル・ウィザード(5)』読了

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スクランブル・ウィザード(5)』(すえばしけん/HJ文庫)読了。

今回は幕間的な話。前巻における一花による魔法テロの決着の後、日常に戻った月子と十郎。一躍アイドルとなった月子が多忙な日々を送る中、唯一の肉親を失った十郎は失意を抱えたまま教師としての日々を過ごす。今回はそうした日常を過ごしている二人と、その周囲にいる人々の日々を描いた作品となっている。月子の慌しい日常と、彼女を心配し、支えようとする友人たち。かつての捻じ曲がった自分から立ち直った駿介の、健やかな成長が見られるエピソード。十郎に恋する唯里の、恋や自分の将来についての悩み。そして、一花の思い出を呼び覚ましながら、もがきながら前に進もうとする十郎。そして一花の命を実質的に奪い、決定的に道を違えた能勢が、十郎との始めての出会いを思い返すエピソードなど、掌編と言えるいくつものエピソードを紡ぎながら、現在の物語におけるそれぞれの人物の持つ立ち位置を再確認をしているのだ。小さなエピソードをいくつも重ね合わせているという意味で、ある意味では変形した短編集と言えなくも無い。長編の中にいくつもの掌編を埋め込んでいるという感じかな。短いエピソードの中にも、それぞれのキャラクターが非常に端正に立っており、見事だった。この作者は本当に物語の手続きが巧みだな、と改めて感心したのでした。いや、地味だけど、この巻とか本当に上手い。短いエピソード群の中で、それぞれのキャラクターを際立たせる手法が尋常じゃない。一つ一つのエピソードは本当に短いのに、読み終わった後は、それぞれの人物が何を考え、何を苦悩し、それを乗り越えていこうとしているのかがきちんと伝わってくる。それも長編ではなく、ほぼ掌編と言うエピソードを作中にちりばめる形でだ。これは素直に褒め称えるしかないなあ。いや、冗談抜きで、これは小説の作り方のお手本みたいな作品。すごい。

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