『Re:SET 想いと願いのカナタ』読了
『Re:SET 想いと願いのカナタ』(月島雅也/GA文庫)読了。
GA大賞優秀賞受賞作。例によって新人好きの病気が出てしまったので買った。うん、これは良く出来ている。まあ最近の流行なのか、ギャルゲ攻略ルート選択物(長い)、まあ端的に言えばスマガみたいな話。うん、スマガ後だとこの手のタイプはすごく厳しく見てしまうのだが、それを踏まえたうえでも良く出来ている。その良く出来ていると言う感じは、新しいことをしているわけではないが、丁寧に作っている感じなので、新鮮味は無いが感触は悪くない。
物語は、まあ要するに、各ヒロインルートでバッド(つーかデッド)エンドを迎えてしまった主人公が、神様の力を借りて、世界にバットエンドもたらすものに立ち向かおうぜ!と言う展開になるのだが…あ、しまったこれは物語の根幹部分だった!読んでいない人は今書いたことは素直に忘れて読み込むのが最善の道でありましょう。
ちょっと話はもどって。とあるところに姉妹がおりました。姉は自堕落で適当でだらしなく、親からはいつも怒られています。妹は几帳面で秩序を信奉しているので、姉の自堕落さが許せません。いつも姉につっかかってはやり合っています。ある日、妹さんの方は気がつきました。両親に頼まれた機器がなにやら不正な動作しており、事件の予感がしてきました。いやーな予感をして(監視をサボって寝ていた)姉を叩き起すと、寝ぼけた姉もびっくり仰天。二人しておろおろするばかり。しかし、このままにしておいては、両親に管理不行届として厳罰を受けることは間違いなし!二人は必死になって原因を究明をするのでした。
さて、そんな出来事など露知らず。陽介は自分の女性恐怖症に悩んでいた。男には普通に話せるのに、女の前では緊張で言葉が出なくなるのだ。自分のやっかいな体質に悩みながら、親友の月真とつるむ毎日。だがここで彼は一つのハプニングにより、二つの選択肢を得ることが出来ることになる。クラスのアイドル、俄皇かなで。もう一人はミステリアスな御影映。二人の少女と出会い、どちらかの少女と深く関わることになる。まあ学園異能の常でそれぞれが持つ秘密を知ってしまう陽介。なぜか女性恐怖症も完治し、より急速に仲を深めていく。
しかし、それらの喜びの日々は脆くも崩れ去っていく。魔法使いと擬態人間。相反する存在が最後の総力戦に向けて急激な動きを見せる。その流れにまきこまれ、どちらの場合でも陽介は事件に巻き込まれ大ピンチに陥るのだった。そこで現れるのが第三の選択肢。ものぐさな姉と几帳面な妹は、事態を収拾するために、二人の女性とは仲良くならなかった世界の陽介と月真に声をかける。「あの子たちを助けて!」と。脱線するけど、このあたり本当にヒドイよね。姉妹の都合に振り回されて全然本人の意思が入っていない。まあ陽介はその世界の自分とシンクロすることでモチベーションを得たわけだけど、これってすっかり利用されているよな。まあバカな子ほどかわいいいいますか…。だがそんな単純バカだこそ、それぞれの世界では出来なかった”力”に覚醒する。する、つーか理屈はよくわかってないので思い込みでなんとかしている。ノリの勢いだけでスーパーヒーローになった陽介に与えられたものは、平和な幸せに過ぎないあたりはまあそれでいいのかなあと言う気もするが、月真自身はこの事態のある意味原因でもあるわけだから、責任を取っているわけだし…、ついでに願い事はかなったみたいだし、まあハッピーエンドだといっていいんじゃないかしら。
要するにバッドエンドなんてくだらねえぜ!ズルでもなんでもハッピーエンドにしてやらあ!と言うのが基本コンセプトであって、本当にスマガでしたね。まあスマガとはテーマの突き詰め方、掘り下げ方とは比較にも出来ない大きな差があるけれども、これはメディアの差を考えれば仕方のないところ。なにしろリーダビリティは抜群であるし、メタ構造にデビュー作から自覚的とは、なかなか有望さを感じる新人であるように思う。
この物語は一発ネタなので続きは出ないだろうが、”姉妹”関連の話は今後もありそうな気がする。達者ではあるが掘り下げが甘いという印象なので、その印象が続編でどこまで払拭できるかが今後の鍵か。作品自体は凄いとは言わないけど、ループものが好きな人なら気軽に楽しめるタイプなので、一つどうぞ。濃ゆいものは別のところに言ってくんな旦那ー。よろしく!
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