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2009.10.13

『アンシーズ~刀侠戦姫血風録~』読了

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アンシーズ~刀侠戦姫血風録~』(宮沢周/スーパーダッシュ文庫)読了。

TSジャンルとしてはなかなかの一品。元少年の美少女と言う存在のどこか倒錯的でアンバランスな魅力に惹かれるものがある人にはぴったりの作品と言えるだろう。思うにTSものの魅力とは、少年性を持ちえた少女と言うジェンダー的にはどこにも存在しえぬものとは、どこか少年性を持つがゆえの無防備さ、無垢さが付与され、少女的なくらい部分を持たない至高の存在へと消化するのである。

さて、今作はTSものにして学園異能を志向しており、両方の面でなかなかに意欲的な作品であると感じた。男子校に転入したはずの主人公、トモが巻き込まれたのは、少女同士の戦闘空間。そこでまったく状況を理解出来ないままに戦いに巻き込まれていくというのはまさに学園異能の基本であり、オーソドックスなものに過ぎないと言えるだろう。だがそこにTSを絡めることによって、単なる学園異能が、非常に新鮮なものになっているように思う。どこを向いても美少女だらけの桃色空間。しかしてその実体は、己の男をかけた熱い戦いの場なのである。このギャップが良い意味での違和感を生み出しており、非常に倒錯した世界が繰り広げられるのである。

トモを取り巻く面々もまた個性的だ。トモにアンシーとなるきっかけを与えてくれたヒカル。男だけど普通の女の子以上に女の子をしえている、つまりは男の娘であるリキオウマル(リカ)、状況を理解しないままにトモがそのカタナを折ってしまったことにより、元アンシーであり今は少女であるミツウ。彼女たち(?)に囲まれながら、トモは戦うこと、正確には戦うことによって相手から奪ってしまうという事実に怯える。戦いをする理由を持たないトモにとっては、ただ戦いを拒否することしか出来ない。このあたりはまあ当然の展開なんだけど、そこから場を動かすのに現れたヨロコのキャラクターがなかなかに強い。アンラッキーセブンと呼ばれ、ただカタナを折ることにのみ執着するヨロコに対して、トモは、そのカタナが周囲の人間に及ぶときになったとき、ようやく振るうことが出来るようになる。

ただ、この部分が難しいところで、主人公は誰かを守るためにカタナを振るうわけだが、それは自分の理由ではないと言える。他者に戦うための理由を預けてしまっているということにもなる。それが、最後にミツウを助けようとしたトモの心を容易く打ち折らせた理由であろう。彼は信念と呼べるものがなく、決意の弱さと言うことが出来るかもしれない。そこで背中を押してくれる存在がヒカルに当たる。その意思の強さがトモの願いを引き出し、戦うための理由を生み出すことになるのだ。

まあ作品構造的にはヘタレ主人公の成長物語として組みあがっているし、何度も逃げようとする主人公が、周囲の人間に支えられて前に進んでいくという展開も上手い。ぶっちゃけ、その過程おいて、ヒロイン(?)たちとのやりとりがとても良い。まあヘタレな主人公が女の子になってしまえば可憐というスキルを身に着けたりするし、元男なのに非常に女の子しているミツウさんも可愛いし、リキオウマルとのアレは百合なの?なんなの?と頭が痛くなるし、乱暴な口調の美少女っていいよね…と言う感じのヒカル立ったりするわけで、キャラクターが非常に魅力的なのもとてもよろしいかと思います。

ヒカル、ヨロコについての秘密はほとんど明らかになっているといっても良いけど、今後の展開の伏線として存在しているのだろうし、続編に期待したいところです。

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