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2009.10.01

『絶対女王にゃー様』読了

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絶対女王にゃー様』(J・さいろー/ガガガ文庫)読了。

J・さいろーがJ・さいろーらしさを出したままライトノベルを書ける場所は、やはりガガガ文庫だったか。この仄暗く粘着質なエロスと青春の日々を描きながら、なんとかライトノベルの領域に留めている、ような気がする。まあ気のせいのような気がしないでもないけどな。ともあれ、僕の好きなタイプのJ・さいろーであったと言える。

普通に優等生で要領よく日々を過ごしている中学生、輪玖。彼の幼馴染であり、現在は引き篭もっている香苗の部屋で、そのチャットルームを見つけたとき、彼は”にゃー様”と出会った。にゃー様は12才で絶対女王様で多くの奴隷に傅かれている。チャットルーム『にゃー様の宮殿』の中ではまさしく彼女は絶対の女王様なのだ。

興味も尊敬も持てない父親。引き篭もっている香苗。要領良く過ごしてはいるものの退屈な学校生活。それらに飽き飽きしていた輪玖は興味本位で『にゃー様の宮殿』にアクセスする。バーチャルセックスやら奴隷やら、最初は嫌悪感とほのかな好奇心でアクセスしていた輪玖は、”にゃー様”とチャットをするうちに、だんだんとそのキャラクターに惹き付けられていく。頭が良くて機知に富み、ユーモアもあるが、それでいて無邪気な残酷さを持つ”にゃー様”。最初は高をくくっていた輪玖は、彼女に惹かれていくことを押さえられなかった。思春期の青臭い性衝動やら独占欲、ドロドロとした薄暗い感情を玩弄する”にゃー様”に翻弄される輪玖。

”にゃー様”との密会を繰り返しながら、チャットの向こう側にいる彼女の素顔を想像しながら、彼は一方で日常を過ごしていく。腐れ縁の香苗。ほのかに憧れを抱く結華。彼女らとの部活動を共に取り組みながら、彼女らに”にゃー様”の面影を反映させてしまう輪玖。”にゃー様”はどこにもいなく、誰でもないがゆえに、彼の心を縛り付ける。彼女らと”にゃー様”は違う。そう思いはするものの、”少女”と言うものに対する幻想が立ち上がってくるのだ。

恋や愛なんてものはよくわからない。思春期の衝動は、それに明確な言葉を付与することは出来ない。輪玖は自分でもよくわからない、性欲のような恋愛感情のようなそれを、現実には存在しない”にゃー様”に対して抱き続ける。それは彼の周囲にいる少女たちも同様で。彼女らもまた恋愛も性欲も区別がつかない、そんな”幼さ”がそこにはある。

言葉に出来ない衝動に振り回される、いっそ醜く汚らわしいとさえ言える姿を、どこか繊細に、リリカルに描いてしまうところが、J・さいろーにはある。茫漠な心の内に振り続ける雨音。それを打ち消すために誰かを求める心。それらを赤裸々に描きつつ、どこまでも純粋に描いているところが素晴らしいと思うのだった。

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