« 『アンシーズ~刀侠戦姫血風録~』読了 | トップページ | 買ったもの »

2009.10.14

『逆理の魔女』読了

51cylgffbl__ss500_

逆理の魔女』(雪野静/スーパーダッシュ文庫)読了。

ちょっと霊視の能力を持った主人公が、奇妙な魔女と出会った事で、奇怪なる世界に足を踏み入れることになる…と言う基本的なラインはいかにも学園異能なのに、なんと言うことだ!どう考えても異能たる魔女よりも一般人たる主人公姉弟の方がキャラが濃いじゃないか!ギャグならともかく、これシリアスなのにこんな設定はアグレッシブすぎるぜ。主人公はいかなる状況に陥っても冷静かつ的確なツッコミを入れ、歌手にして弟ラブな姉は紛れも無い一般人のくせに、魔道の世界に足を踏み入れても一歩も後ろに引かねえ!魔術師相手に不意打ちかまして拉致尋問とかちょっと自重した方がいいよ。それについて、なんだかんだで見守っている主人公もまたさりげなく常軌を逸していると思う。そして、そんな姉弟に振り回される”魔女”って一体…とかおもってしまうよ。すごいなー、いわゆるキャラ的な役割が完全に逆転しているんだなー。本来、新しい世界の窓口となるべき役割の魔女が、実は当たり前の(まあ、この姉弟は当たり前とは言い難いが)日常を知ると言う物語になっているのだ。これは作者の目の付けどころが上手いなーと素直に思いました。こんな手が残っていたとは。

これ、いわゆる普通の小説が、”こちら”から”向こう”に行く話なのに対して、”向こう”から”こちら”に歩み寄る話になっているんだな。結局、逆理の魔女こと逆月雨坏が、それまで孤独に魔術に取り組んできた魔女が、当たり前の日常を知るという話になっていて、主人公たちが魔術に対して抵抗感を持たないキャラ設定にするために、”目”の設定があるのだなと思うとともに、これはスレてしまった読者そのものの視点をも現しているのだろうと思うのだった。つまり、現在のラノベにおいて、異能バトルなんて珍しくもなんともなく、そういったものに普通にスルーして受け入れてしまう読者の視点を取り入れ、その上で物語を紡ぐというなかなかに技巧をこらしたことをやっていると思うのだった。

もっとも、もし続きを出すのであれば、魔女側の事情を出さないわけにも行かず、普通の学園異能になりかねないところが恐れるべきところではある。スーパーダッシュ編集部においては、この作品の長所をきちんと理解した上で続編を作ってもらいたい。最後までお姉ちゃんのスタンガンと鉄拳で終わらせたら神だと思う。

昨日書いた『アンシーズ』と併せて、これほどの作品が佳作になるというところにスーパーダッシュ小説新人賞の人材の厚みを感じる。選考委員が変わっても、品質はそんなに変わってないのだな、と思うのだった。まあ傾向は変わっている気もするけどね。

|

« 『アンシーズ~刀侠戦姫血風録~』読了 | トップページ | 買ったもの »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/29313/46486452

この記事へのトラックバック一覧です: 『逆理の魔女』読了:

« 『アンシーズ~刀侠戦姫血風録~』読了 | トップページ | 買ったもの »