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2009.10.30

『さよならピアノソナタ encore pieces』読了

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さよならピアノソナタ encore pieces』(杉井光/電撃文庫)読了。

シリーズ外伝にして完結編。成長して結婚のことまで考えるナオの姿はなかなか新鮮な気がした。杉井光がこの年代を描いた作品は初めて読んだような気がする。まあでもそんなに描き方は変わらないかな。杉井光は基本的に引き出しがものすごく狭い人である印象があるのだけど、その意味では今回の完結編についてもいつも通りの安心感がある。良いか悪いかは別の話だけどね。

以下各話簡易感想。

「sonate pour deux」
ナオと真冬のプロポーズにまつわる話。同時に大人になったフェケテリコの面々の後日譚でもあり、まあ作者は本当に読者の求めるものをよくわかっているなあ、と感心した。もっともナオを始めとして元フェケテリコの面子は大人になっても何一つ変わらず、そのあたりは高校生のときの延長として描かれているのは気になるところではあるが…まあこれは言いがかりに近いものかもな。ともあれ、とあるピアノソナタにまつわる調査を依頼されたナオが、その想いを汲み取り、真冬への気持ちを固める過程まできちんとまとまっており、美しく感じられるのだった。

「翼に名前がないなら」
大学時代のフェケテリコ。そのサポートメンバーに抜擢された橘花の目から見た響子と千晶の姿が描かれる。神様のメモ帳のアレはこのあたりの時代なんかなー。話としては、まあ作者お得意のコンプレックスからの克己がテーマ。橘花が視点人物になっているため、成長物語をもう一度やり直しているのかなーと言う印象。フェケテリコの二人のキャラは完成されているから動かしにくそうだもんなー。

「ステレオフォニックの恋」
みんな大好きユーリ君の登場です。このシリーズを読んでいる人はみんな一度は彼が主人公の話を読んでみたかったんじゃないかな。あ、ヒロインだっけ?まあ紆余曲折あった結果、ユーリは自分の気持ちを理解するわけだけど…これはなんとしても響子さんには世界を革命してもらって一夫一婦制度を打破してもらう必要がありますなあ。現在の社会では受け入れられないような気がするよ…。

「最後のインタビュー」
本編の方ではそれとなく匂わされていた響子の革命家としての始まりが語られる。とは言え、これはあくまでもきっかけであって、響子が真の意味で革命家を目指すには、もう一か二ステップぐらいありそうな気もするが…。まあそのあたりは語られないうちが花なのかもしれないな。

「だれも寝てはならぬ」
おまけと言うか、ゲストと言うか、とにかく哲朗の話。結婚を報告してきた息子に仰天してオタオタして、そして彼なりの区切りをつけるまでの過程が非常に叙情的でかつ軽薄とも言える筆致で描かれており、ああ哲朗の話だなあ、と感心した。距離を隔てていても心がつながっているなんて、キザ過ぎてびっくりするけど、こういうのを書かせると作者は本当に面白いなあと思うのだった。

これで完結。泣いても笑っても続きはない。勿論彼らの物語はこれからも続くし、人生はこれからだけど、それを見ていくことは読者には出来ない。その後の人生に幸多からんことを祈りつつ、彼らとの別れを噛み締めたい。

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