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2009.10.08

『いつも心に剣を(3)』読了

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いつも心に剣を(3)』(十文字青/MF文庫J)読了。

なんか十文字青の感想ばかり書いているような気がするんだが、恐ろしいことに全然気のせいじゃないんだよな。今年の十文字青は本当に書きまくっているな。一作ごとのテンションも高いし、反動がちょっと心配。まあ余計なお世話か。

内容は、相変わらず期待を裏切らぬ出来。本格的と言うか正統派なファンタジーと言ってもいいんじゃないだろうか。単純な善悪に落とし込まない世界観の見せ方が非常に魅力的。1巻、2巻ではややもすると魔女側の方が虐げられた側のように見せておいて、3巻目では(勿論復讐の念もあるにせよ)普通に敵対者である人類を虐殺する側面を見せてきているのが良かった。今までの描写で魔女側に同情的にさせてきていた読者の予想を裏切る描写をしながら、魔女たちの行為自体は今までと何も変わっていないところが見事。元々、魔女たちならばこれぐらいはするよなー。その分、人類側にも正義はあって、今までの妄信的なところも決して無意味なことではないと見せている。今までの汚いと言ってさえ良い描写にも、生き延びるための綺麗事ではすまない覚悟のようなものが感じられるようになるところが良い描写だと思った。ハイジロの存在を考えてみると、人類と魔女の戦いそのものを操る存在がいて、今後、そこが焦点になるのかもしれないが、絶対悪を倒して終り、なんていう能天気な結末を作者が描くとは思えないので、どのような展開になるのか期待したいところだ。

あと、登場人物が魅力的に、また多様に描けているというところも相変わらず良い。セルジュは本当に可愛いなあ、と思うのは僕だけだろうか?親友だと思いたかった相手をつなぎとめるためだけにレーレを自分の物にしようとしたらレーレにも情が沸いてきちゃうなんて、悪人にはどうやってもなれない感じが可愛いと思うんだけど。ヨナハンはあそこまでセルジュに好き好き光線を出されているのに気がつかないとか死罪に値する鈍感ぶりだ。レーレでさえ気がついたんだぞ。とは言え、この二人はどうにも報われそうにないな…。その意味ではこの作品に登場するカップルには幸福になれそうな人たちが誰もいないけど。レーレとユユのカップルも、どこまで行っても悲劇の匂いしかしないし。今回はついにそのあたりがはっきりと現れてしまって、本格的に離れ離れになってしまった。引き裂かれた二人の運命の流転の急展開には驚かされてしまった。十文字青特有の畳み掛けるような怒涛の描写もあって、圧倒されてしまう。ラストの悲劇的で寂寥にみちた引きは、続刊を待ち望ませるには十分だ。

はっきりとは言及されてないけど、レーレとユユはそれぞれ人類側と魔女側に分かれて行動することになるのかな。より一層、悲劇の可能性が高まるけど、逆に調和の鍵にもなるのかな。予断を許さない展開だなあ。

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コメント

一巻が出たころから、売れてくれーって管理人さんが唱えてた本ですね。最近よく古本屋で見かけます。中古で出回るようになったってことは新刊も売れてるんでしょう。

ちらちら立ち読みしてみたりするんですけど、中世なのに主人公のメンタルが現代ヘタレ少年まんまなのはこれいかに。佐藤賢一の『赤目のジャック』くらいは歴史を感じさせてくれ。ラノベってことでいろいろ規制があるんでしょうが、主人公がもう少しタフじゃないと、最終巻まで生き抜けない気が。まあでも、作者としては別に歴史を語りたいわけではないのか。

投稿: 暗黒 | 2009.10.10 10:31

うーん、主人公のキャラクターを、現代のヘタレ少年と読み取られておられる時点で、僕とは作品の解釈が違いすぎますね…。勿論、作品の解釈の仕方は自由ですが…。ただ、登場人物たちのメンタリティが現代的に描いていると言うのはその通りだと思います。十文字青は中世をリアルに描こうというつもりはありましないのでしょう。歴史ロマンを求めていると肩透かしを食うかもしれません。

ただ、佐藤賢一とは作品のスタンスが異なりすぎているので比較の対象としては適切かと言うと疑問ですかね。佐藤賢一は歴史を題材にして自分なりの”中世”を描き出そうとしているわけですが、十文字青は一貫して描き続けているテーマは、あくまでも現代的なものです。この作品も中世的な世界はあくまでもツールで、偏見と差別に基づく価値観の対立を描くところが本義なのでしょう。その意味ではそのどちらかに優劣をつけるのは難しいところであると感じますね。

また、歴史ロマンもフィクションであるというところは意識するべきだと思います。佐藤賢一も本当の中世人を描いているわけではなく、あくまでも作者のフィルターを通した中世人であり、それもフィクションに過ぎないと思うのです。無論、そこに”リアルな中世”を感じさせるのは佐藤賢一の手腕は非凡であることは間違いないですね。僕もすごいと思います。

投稿: 吉兆 | 2009.10.10 14:01

ああ、例によって十文字青なる作者については何も知りません。魔女狩りを題材にしてたので、百年戦争を題材にした「赤目のジャック」をなんとなく思い出しただけです。

立ち読みというか飛ばし読みというか、分量的には全体の5分の一も読んでないので、読み込んでるわけじゃないです。主人公の第一印象がそんな感じだっただけで。

(架空の)中世を舞台にするのはいいけど、登場人物がモロ現代人ってのは前々から違和感があって、少しはその辺意識してくれよってのがあるんですけどね。歴史はオタク界でも人気はないようで。多くの人は気にならないんでしょうね。どうせフィクションなんだから現代の感覚でいいじゃん、と。

“中世”が単なるツール扱いなら、購買意欲はだいぶ減退かなあ。

投稿: 暗黒 | 2009.10.10 18:01

異世界なら異世界なりの文化、習俗があって、そこには現実とは異なる考え方があるべき、と言うスタンスですね。その気持ちは自分にもありますし、そういう異世界を幻視させてくれる作品も素晴らしいものだと思います。そのタイプで自分が印象に残っている作品だと、ジョージ・R・R・マーティンの『氷と炎の歌』シリーズなどすごくよかったですのでお勧めです。今なら文庫で出ているのかな?また一連の佐藤亜紀の作品は、そもそも架空の歴史の登場人物たちの文化背景を説明さえしないというところはすごいので、一読の価値はあるかも。ただ、理解できないならば読者が悪いといわんばかりの作品なので、お勧めはしにくいんですけどね。

とまあ、異世界を異世界として描く(現代とは異なる文化、習俗を描く)タイプの作品は素晴らしい作品が多いんですが、最近、現代的な描き方でもいいんじゃないかという気もしてきました(その現代的なテーマが鋭く、きちんと描かれていればですが)。ファンタジーと言っても杓子定規に捉えず、面白ければ良いかな、と。

投稿: 吉兆 | 2009.10.11 21:09

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