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2009.10.16

『クシエルの矢(2)蜘蛛たちの宮廷』読了

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クシエルの矢(2)蜘蛛たちの宮廷』(ジャクリーン・ケアリー/ハヤカワ文庫FT)読了。

クシエルの矢シリーズ第二巻。と言っても、本来は1千頁以上になる長大な作品を三分冊にしたらしいので、作品的にも時系列的にも一巻をそのまま引き継いでいるらしいので、物語は一巻からそのまま継続。前作まではまだまだ序盤も序盤、ここからが本番と言うわけだ。

今巻においても天使の血を引く人々の国、テールダンジュの闇を見据えるフェードルだったけれども、なんと物語の途中において罠に嵌められ、テールダンジュからは蛮族と侮蔑されるスカルディア(おそらくガリアがモデル)がに追放されてしまう。この過程のあっと驚く怒涛の展開も見物だが、スカルディアにまたしても奴隷として売り飛ばされてしまったフェードルとその護衛者ジョスランの苦闘が始まるのであった。

良かったなーと思ったのは、スカルディアは物語的にはテールダンジュを征服しようとする略奪者ではあるんだけど、スカルディア人そのものは、野蛮ではあるが陽気で気の良いところもある人々であると描写されているところ。単純に悪役として描くのではなく、敵ではあるが、彼らなりの文化があり、愛情も持った愛すべき人々でもあるところは、物語に大きな広がりを与えているように思えるのだった。そんな愛すべき人たちが、それでもテールダンジュ人を殺し、略奪を行っていることは間違いなく、人間同士でありながら分かり合えない悲しさと言うものが出ている。それまではただ顔の無い敵でしかなかった存在に対して、知ってしまったが故の葛藤を覚えるフェードルの心の動きも丁寧だと思うのだった。

物語としては、フェードルとジョスランは奴隷として拘束されているので、大きな動きは少ないのだが、それゆえに内面の葛藤や戦いの側面が大きかったように思う。蛮族には決して屈そうとしないジョスランと、スカルディアの内部に入り込んででも情報を持ち帰ろうとするフェードル。前巻まではただお互いのことを気の食わない奴だと思っていた二人が、協力して戦いを始めようとする過程の対立や融和のやりとりなど、まさかここまで二人の交流にスポットが当たるとは前巻までは想像もしなかったのでびっくりした(なんかジョスランは流血女神伝におけるエドみたいな役回りだな)。

おそらく物語最大の敵手、スカルディア諸部族の盟主ヴァルデマール聖王に対しても一歩も引かず、ついには脱走した二人がテールダンジュにたどり着くまで冒険行も一筋縄ではいかなく、本当に波乱万丈な人生を送っているなあフェードルは…と思ったりするのだった。

ついに黒幕を突き止めたフェードルが、デローネイの本当の主に出会い、協力を約束することになる。テールダンジュは内部で分裂し、スカルディアのヴァルデマールの剣が迫る状況の中、果たしてフェードルは何が出来るのか。大変良いところで次回に続いてしまったので、早く最終巻となる続きが出て欲しいものです。

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