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2009.10.15

『クシエルの矢(1)八天使の王国』読了

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クシエルの矢(1)八天使の王国』(ジャクリーン・ケアリー/ハヤカワ文庫FT)読了。

生まれ持った”クシエルの矢”によって<アングィセット>ととしての生き方を余儀なくされた少女、フェードルを主人公とした絢爛豪華で刺激に満ち満ちた大河ファンタジーロマン。こういう華麗と退廃がセットになったような物語は大好物だわー。

中世ヨーロッパ的な世界観を持ちながら、建国神話からして性的な営みを神聖なものとしてみなす土台があるため、娼婦はおしなべて神に仕える巫女、神娼と呼ばれている世界。そこでは春をひさぐことは汚らわしい行為ではなく、むしろ神に仕える望ましい行為とされている。建国神話における懲罰天使クシエルの矢の刻印によって、アングィセット、つまりは被虐的性的嗜好者として生まれついたフェードルは、謎の貴族、デローネイの奴隷として、その才能を開花させることになる。だがデローネイは決して娼婦としての彼女を求めたのではない。娼婦としての役割とともに、彼が仕える主を守るため、宮殿にうごめくさまざまな陰謀を突き止めるための間諜として、フェードルの力を求めたのだった。厳しい教育を受けながら、デローネイに対する恩とともにある憧れを胸に、フェードルは美しく、賢明で、淫蕩な神娼として成長し、デローネイの期待に応えていく。伏魔殿とも言うべき大貴族たちの夜の営みの中から零れ落ちる真実を拾い集めていくのだ。

<アングィセット>が伝説の存在として敬意と侮蔑をもって迎えられたりと、キリスト教的な世界観からは解き放たれた中世的な世界で紡がれる宮廷陰謀劇。その中で陰謀の真実に肉薄していく娼婦と言う設定だけでもわくわくする展開なのだが、登場するキャラクターを一筋縄ではいかない魅力的な人物ばかりだ。美しく賢いが、奔放で行動力に溢れる主人公フェードル。フェードルが幼少時に出会い、その後、親友となるツィンガン族の王子を名乗るヒアシンス。頭の固いキャシリーヌの修道士にして剣士ジョスラン。謎めいたフェードルの主、デローネイ。その友人にして宿敵、美しくも残酷な女貴族メリサンド。活き活きとした登場人物たちが、独特の文化と習俗を持つテールダンジュ国を舞台に動き回る。

貴族たちをたらしこみ、利用する。陰謀と裏切りが交錯する宮殿の中で、フェードルはどこまでも大胆に行動を開始する。目の前の人間が漏らす言葉を自分の中で組み上げ、一つの真実を掴み取る。そこにはフェミニズム的な呪縛を解き放たれた、しなやかさが見えるように思うのだった。

この巻にて一つの陰謀は潰えたが、またしても新たな火種が生まれている。それに対してフェードルはどのようにして立ち向かっていくのか。美しく、タフで、魅力的なヒロインの物語は始まったばかりである。

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