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2009.09.02

『オウガにズームUP!(3)』読了

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オウガにズームUP!(3)』(穂史賀雅也/MF文庫J)読了。

3話構成の連作短編集の形式になっている。一話目、二話目は、前巻でけっこうユージの気持ちもハッキリした感じがあって、あまり動きが無かったな。2巻でククルに対して、今の関係の肯定する立場に立ったことで、あまりユージの葛藤が無くなってしまっているんだよね。すでにユージはククルを受け入れている。あとは関係をゆっくり育んでいくだけ。今はその関係構築の状況なので、大きな事件が起こらないのは、むしろ正しい。今は平凡な日常を積み重ねて、お互いを知っていくことが必要な時期なのだ。

一話目の「12/12」については、新キャラ登場の回として、アリアンナこと姑さんの登場してきたわけですが、結局、ユージとククルの絆を再確認する回だったのはまさにその象徴。お互いのことはすっかりわかっていると言う感じの関係性には、思わず「夫婦か!」とツッコミを入れたくなってしまう。いや、夫婦なんだけどな。そんな感じで、少しずつ関係を深めていく二人の描写が、穂史賀雅也らしい繊細な描写があって、見事だと思うのだった。

一方、二話目の「バード・ウォッチング」については、ユージとククルの関係性に、今後の波乱の目が生まれつつあると言うことがハッキリと示される回になっている。ヤクモンやら日下部やら、ユージに対して好意のありやなしやと思われる女子の存在をククルが知ってしまうと言うところが新展開。ユージが意外とモテていると言うことを知って、非常に複雑な心境に陥っているらしきククルの描写がキュート。風呂場やユージに相対したときだけ表層化するところなんかが妙にリアルだよな。ククルも女の子だよ。ユージ本人はまったく自覚のないまま、水面下での抗争は激化していくのであった。いやー、女子ってマジでおっかないですね。なんと言うか、このあたりの男子と女子の意識のズレをきちんと描いているところも、作者らしい丁寧な心理描写であると思ったな。こういう心理の描き方に、直接的に描かないところに作者のセンスが垣間見える。僕は穂史賀雅也のこういうところが好きなんだよ。カッコいいよね。

しかし、一番仰天したのが、三話目の「理科準備室の星々」。こーれーはーすげえ。穂史賀雅也がフルスロットルになっている。ユージとククルの話しからは離れて、事前にちまちまと脇役で登場したり、噂話だけで出ていたりした二階堂少年の、恋の物語。理科準備室の、静かなイメージが、ぶわっと広がりを見せるシーンがあちこちにあって圧倒させられる。二階堂少年が、居眠りをしている上村先生との距離感が狭まっていくシーンも良い。世界が収束し、二人の距離が吸い込まれるように近くなっていく引力と言うか、二階堂少年の気持ちが反転する瞬間の世界を揺るがす、しかし、静かな激震とでも言うべきものが感じられるのだった。この短編は本当に素晴らしく、久しぶりに満足感のある短編を読んだという実感を感じられるのだった。

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