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2009.09.14

『敵は海賊・短篇版』読了

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敵は海賊・短篇版』(神林長平/ハヤカワ文庫JA)読了。

『敵は海賊』シリーズの短編集。よほど短編が少なかったのか、20年以上前の作品と書き下ろしがごっちゃになっている。そのわりには違和感をほとんど感じさせないところに神林長平のオンリーワンなところが出ているようにも思うのだった。

以下、各話感想。

「敵は海賊」
短編版にしてオリジナルでファーストな「敵は海賊」、と言う事は読んでから知った。それぐらい現在の作品との相違点は少ない。むしろ現在の「敵は海賊」が持っている要素をすべて持っており、その意味ではすでにこの時点で世界観は完成されていると言える。ラテルもアブロもいつも通りの彼らであり、違和感はない。もっとも後年におけるメタ的な視点はなく、とある女性を助けることになった二人がある都市で繰り広げることになるドタバタアクションであり、真っ当な娯楽作品になっている。とは言え、ラテルの判断が必ずしも論理的ではなかったり(途中で必ず論理の飛躍がある)、何が正しく何が間違っているのかよくわからなくなっている展開など、後年の「敵は海賊」シリーズの萌芽も芽生えており、単にシリーズの原点と言うだけにとどまらない内容だと思う。

「わが名はジュティ、文句あるか」
ジュティって誰なのかなあと思いながら読んだが、どうやら『敵は海賊・A級の敵』に脇役で登場していたらしい。綺麗さっぱり忘れてた。
内容は宇宙を舞台にしているものの、完全に幽霊奇譚となっている。幽霊が異星生物になっただけですね。自らの忌まわしき過去から生み出された亡霊に対して、それに対決するジュティの姿が描かれる。夫や母子の愛憎などを含めても、これ舞台を地球にしても全然問題ない話だよなあ。

「匋(ヨウ)冥の神」
海賊王である匋冥の良心である白猫クラーラと魔銃フリーザー誕生秘話。もっとも、かつて匋冥がとある少年に語った(と本人が主張する)内容を、その少年が改めて語り直す話になっているので実際のところは分からない、というメタな部分は自分の親しむ『敵は海賊』らしさを今巻収録作の中では最も強く感じさせられた。本編ではほとんど神か悪魔に等しい超越性を身に付けている海賊王に対し、今作における匋冥は頭が切れ、若く、野心に溢れているものの、一個人としてのパーソナリティが現れており、興味深い。無論、前述の通り真偽の不明なメタフィジカルな部分があるので、海賊王本人の格を落とさないというところも、ほとんどアクロバティックと言っていい語り方(騙り方)に作者らしさを感じる。

「被書空間」
『戦闘妖精・雪風』とのクロスオーバー作品。ラテルとアブロが雪風の世界に入り込んでしまって、”雪風”とニアミスするという話。雪風世界を、メタ認知がわりと進んでる敵は海賊シリーズで読み解くため、かなり作品のコアな部分を解釈しているような気がする。まあここでの解釈が正しい保障もまたメタ認知になってしまうのだけど。ファンサービス作品でありながらクロスオーバーと言う概念自体が実に神林的と言うのも面白い話だ。クロスオーバー自体にメタ構造が埋め込まれていると言えなくもないもんな。

とかなんとかそんな感じ。

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