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2009.09.30

『シャギードッグ(4) 人形の鎮魂歌-reborn-』読了

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シャギードッグ(4) 人形の鎮魂歌-reborn-』(七尾あきら/GA文庫)読了。

超能力にサイボーグに超人的な武術家と、まこと七尾あきらの本領が全部つまった感じのあるシリーズとなって来た。デビュー以来、長く付き合ってきた作者だけに、原点回帰とも言えるこの作品を読んでいるだけでいい気分になる。この人はオカルトとサイバーパンクの両方が大好きで、双方を融合させたひどく変わった世界観を(初期には)構築していたのだが、4巻に入って、ようやく世界観と物語ががっちりと組み合ってきたように思う。

瀕死の重傷まで追い込まれた大介が、迫るカイとの再戦を前に苦しみ、桂翁の助けを借りて自分の本当の覚悟を見出すまでの過程がとてもエキサイティングであったな。一言で言えば、”自分を知ること”という単純な言い方が出来るけれども、その本当の自分に気がつくのに、桂翁の”無私なる愛”に触れて、覚醒するという流れが凄まじい展開だった。読んでいない人にはピンとこないかもしれないけれども、桂翁の”愛”と言うのは、単純に言えば”相手を救うために殺すことを決断できる”ほどの愛なのである。完全無欠に殺意を持って殺しにかからなければ、大介の目が覚めないと判断すれば、本当に殺すことに躊躇いのないほどの愛なのである。勿論、本当に殺してしまった時の後悔はすさまじいことになるだろう。自分の”ふところに入れた存在”(これもまた桂翁の一風変わった愛のあり方だ)を殺すことは、翁にとっては”自分の精神を殺すこと”と同義なのだ。彼は、自分を殺す覚悟をもって相手を殺す。救うために殺すことを決断する。でもね、桂翁はそれをにこやかに言うわけだ。「これからあなたを殺します。強くなりたかったら生き残りなさい」となんでもないことのように言うわけだ。だが、それは翁が酷薄な人物であるということでは勿論無い。”ただ、自分が破滅することさえも平然と覚悟しているだけのこと”なのだ。まさに、凄絶な愛のあり方であると言えるだろう。

大介は心の底から後悔する。殺されることではない。桂翁に”自分を殺すことを決断させてしまった”ことを死ぬほど後悔する。これほどまでに優しい人間を、空前絶後の異能者を、古今無双の武術家の、そのすべてを賭けさせてしまったことを本当に後悔するのだ。その狂おしいまでの後悔が、正と死の狭間で、大介を覚醒させる。その過程が、桂翁の賭けさせた物の大きさがひしひしを感じられるからこそ、その覚醒にも説得力があり、感動的とさえいえるものになっていると思うのだった。

さて、本編についても少しは語ろう。前巻までにおいて、大介を瀕死の重傷まで追い詰めたカイとの戦いについては、実は決着はつかないまま終わる。友人の仇にして、自分自身を瀕死にまで追い込み、人格的な死さえ呼び込んだ相手に対して、大介はどこか憧れと喜びを持って対峙することになる。それは、これまでどこか”戦士としてのあり方”に恐怖感を抱いていた大介が、ようやく”力”を持つもの、戦士としての精神のあり方を受け入れたということを意味する。戦士とは、自らの力と技を磨きぬき、自らの誇りを賭けて強者と戦う人種である。自らが身に着けた力を振るうことに喜びを覚え、戦いの中で生死を賭けることを何よりも尊ぶものたち。大介は、ついに自らの力への喜びを自覚し、戦士の道を歩むことになったのである。その時点で、友人の仇という名目は消え去る。友は、戦いの中で全力を振り絞って戦った誇り高き戦士であり、それを実質的に殺したカイを恨むべきものではない。カイもまた一人の戦士として大介と戦い、”大介の父”にひたすら執着し続けた彼も、ついには戦いの中で生きる大介の存在を認める。父の替わりではなく、シャギードッグ(むく犬)と呼ばれた自分自身を認めてくれたことに大介は喜び、いつか来る闘争への喜びを胸に、その場は別れるのだ。戦士としての生き方を、これから大介は選んでいくのだろう。

その後の話はほとんど余談のようなものだ。あいも変わらずオズを狙う組織たちが、罠を張り巡らせてオズの捕獲に乗り出してくる。だがしかし、少しずつ人間的な感情に芽生え、まりんと大介にたいする情を持ち始めたオズ、そして誰よりも強い意志を持つまりん、戦士として覚醒した大介の三人が揃った以上、こいつらは最強のトリオだぜ。沙織を利用し、多くの人々の心を操り道具とする存在に対して、大介の、まりんの怒りが爆発する。退屈を紛らわそうとしているだけに見えるオズもまた、まりんの願いを受け入れて、沙織を救うために力を振るう。

人はさまざまな存在につながって生きている。社会や組織、未来や過去、自分の資質にさえ縛られ、操られている。だが、唯一選択できることがある。その中で”なににあえて縛り付けられるのか”と言うことだ。自分の意思で自分を束縛する存在を決めたとき、束縛はマリオネットの糸ではなく、前へ進むための強き手綱になるのである。

最後に彼ら3人が望んだものは、まだ曖昧で形の無いものかもしれないけれども、少しでもよりよい選択を望んだ彼らの望みは、おそらくは正しいものなのであろう。それぞれがゆっくりと自分の選択を積み上げていく中で、彼らの未来は、まだ曖昧なまま、輝きを放っているのだった。

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2009.09.29

『GENEZ(2)』読了

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GENEZ(2)』(深見真/富士見ファンタジア文庫)読了。

作品には関係ないけど、『剣闘士 グラディエータービギンズ』のシナリオを深見真が担当しているそうでちょっとびっくり。ゲームのシナリオなんて書いていたんだ…。これは主人公はマッチョ美女にしてプレイするしかあるまいな。と言うわけで買おう。

それはともかく。正義の傭兵学校(なんて胡散臭い組織だ)を舞台にしたシリーズも2巻目。どうやらそれなりに人気があるらしく、最近のラノベリスト(造語)の趣味も多様化しているなあと思ったが、案外若い人たちはフルメタと同じ箱で消費しているのかもしれないな。正直、フルメタよりもかなりタチの悪い作品だと思うんだけど(自分たちを正義だと確信しているあたりとかね)、まあそのあたりも中二病の一言で決着つけられるのかもしれないなあ。

主人公サイドが自分たちを正義とみなしているあたりは、この作者の場合、本気で書いているのかどうか洒落がよくわからなくて困る。そんなわけは無いとは思うのだけど、本気で書いていないとも言い切れない書き方をしているのが不安をそそるよな…。若い読者に歪んだ価値観を植え付けなければいいのだが、まあよく考えてみれば若さとはすなわち偏狭な価値観を抱えているということでもあるので、この作品はこの作品で正しいのかもしれないと思えてきた。この作品に疑問を覚える人は別のところに行けばいいんだし、心地よさを感じる人は読めばいいんだ。

前置きが長くなったけど内容について。傭兵でありながら平凡な日常(書いていてなんだがなんだそれは)を謳歌している謙吾がハマっているオンラインゲームの販売会社、ウェルトゥスから立ち込める黒い影。その調査に赴いた謙吾たちは、ウェルトゥスのたくらむ陰謀に直面する。と言うわけでウェルトゥスが雇った別の傭兵派遣会社との熾烈な戦い、新しいヒロインの登場、激しいバトルの末のピンチに次ぐピンチ、と言う感じでエンターテインメントを十分にこなしている。レーベルのわりには残酷描写もきちんと力を入れているのも好印象。シビアな世界感をきちんと描こうという誠実さが感じられた。

ただ、ちょっと説明台詞くさいというか世界の暗部はこんな風になんているんですよ的な伝奇的捏造部分が鬱陶しいが、これはまあそういう作品だから仕方が無いのかもしれない。このあたりに拒否反応を示す人もいるような気がするが、読者に対する意識喚起と言う意味ではこれぐらいあざとい方がいいのかもしれない。もちろん作者のバイアスがかかっていることは弁えた上で読まないといえないけどね。

つーか、深見真を読む場合、作者のバイアスをきちんとより分ける目を持たないと作者の偏見に巻き込まれるよなー。いや別に貶しているわけじゃなくて、作者には作者の考えがありそれを否定するつもりはないんだけど。ただ、作者の作品は大好きだけど、自分とは考え方が相当に違うので、そのあたりの切り分けは必要だよね、と改めて思うのだった。

作品そのものはきちんとエンターテインメントをしていて良かったと思いますよ。個人的にはマイルドな深見真だなあ、と言う印象だけど。僕はもっと中二病を極端にこじらせた深見真の方が好きなんだけどね。この作品、作者にしてはちと健全過ぎるかと(自分の価値観を押し付けるなよ)。

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買ったもの

1.『レンズと悪魔(11)魔神集結』 六塚光 角川スニーカー文庫
2.『ばけてろ 成仏って、したほうがいいですよね?』 十文字青 角川スニーカー文庫
3.『友だちの作り方』 愛洲かりみ HJ文庫

買った。

しかし十文字青は書きすぎだよな…。月間レベルだ。少しは休んだほうがいいのではないだろうか。

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なんとなくコミックギア関連の話題

http://home.att.ne.jp/wave/applepop/#200909-28_1

http://d.hatena.ne.jp/ruitakato/20090812

ちょっと前の話題になるが、コミックギアの製作体制について高遠るいが批判していた。自分は漫画家ではないので高遠るいの怒りの本質というのはピンと来ないのだが、おそらく高遠るいは「オレがおもしれえと言ったらおもしれえんじゃあ!」と言う信念の人なんだろうな。で、そういう信念の人が同じ職場でお互いの漫画に口出しするようになったら、罵倒批判の嵐でまともに製作なんて出来るはずもなかろうな。もし罵倒批判がなかったとしたら、お互いになあなあで済ませる仲良し空間が出来上がると。高遠るいが気持ち悪いと言っているのはそういう製作環境であるのだろう、と推測は出来る。

結局、作品の面白さなんてものは唯一絶対のものなんてものはなく、誰か一人の価値観がすべてを支配できるわけでもない。高遠るいが怒っているのは仲良し空間を形成することで、自分の”エゴ”剥き出しにした作品作りを排除してしまうことになるについてなのだろう。

まあ個人的見解としては面白ければ製作サイドの事情などどうでもいいとは思うのだが、正直、コミックギアはそんなに面白そうな感じがしないんだよな。大掛かりな同人誌みたい。それをわざわざ非難する高遠先生は本当に損な役回りをする人だなあと思った。ある意味人が良すぎるよね。

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2009.09.28

『純潔ブルースプリング』読了

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純潔ブルースプリング』(十文字青/角川書店)読了。

十文字青の幻の受賞作が満を持して刊行。作者の処女作なのにここまで刊行が伸びてしまったのは、まあ一読すれば明らかではあるな…。全然ライトノベルじゃねえんだもん。学園小説大賞でもこれを出版するのは冒険だったろうな。と言うか、もしこの作品でデビューしていたら十文字青の作家としての方向性もまったく変わっていたかもしれない。どっちかと言うと滝本竜彦的なえぐりこむような青春文学の方向性に入っていた可能性もあるような気がする。本当に、このタイプの作品で受賞しておきながら『薔薇のマリア』を書かせた編集部は慧眼だったのか無謀だったのか…。個人的にはよく薔薇のマリアを書かせたものだと感心してしまったよ。

とは言え、この作品には十文字青のすべてがつまっていると言っても過言ではない。十文字青的な芯はまったくぶれていないようだ。この作品を読んでいると、たしかにそこには『薔薇のマリア』のような自己に対する無力感とその克服があり、『ぷるりん。』『ぷりるん。』のような世界に対する不条理に打ちひしがれるところがあり、『ANGEL + DIVE』のように奇矯な登場人物が織り成す物語がある。今作のそこかしこに後の作品の萌芽があるのだ。まさしくこの作品は十文字青の原点と言えるのだろう。

この作品は、明言はされていないが終末の物語である。いつか世界が終わることが決定された世界。だが十文字青の興味深いところは、いわゆるセカイ系とも思われる設定を置きながら、それに拘泥しない。”世界が終わること”そのものは、たいした問題ではないのだ。世界が終わる。いつかはすべて消えてなくなる。怒りも哀しみも友情も恋も。すべてははかなく消える定めだ。ならば、終わることが決定された世界では、怒りも哀しみも友情も恋も意味をなさないのであろうか、と言う問いかけがそこにはある。

世界が終わるその時まで。彼らは笑って恋をして生きていく。すべてがなくなるとしても、なくなるその瞬間まで日常を積み上げていく。しかし、十文字青はことさらに世界の終りを強調したりはしない。”なぜならそれは当たり前のことだからだ”。世界と言うものを個人に収斂させるのならば、世界と言うものはいつ終わってもおかしくは無い。だがそれを嘆くことで何が得られよう?それを人生の一大事だとわめくことでなんの意味があるだろう?そこには世界を救うヒーローはいなければ、世界を斜に構えるニヒリストもいない。ただ、いつか終わる世界の中で、当たり前に苦しみ、理不尽に怒り、困難に立ち向かう姿があるだけだ。

それこそが世界の終りに立ち向かう唯一の手段であり希望なのだ、と思うのだった。

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買ったもの

1.『真マジンガーZERO(1)』 脚本:田畑由秋 漫画:余湖裕輝 秋田書店
2.『創世の契約(5)新天地』 花田一三六 Cノベルスファンタジア

買った。

1は真マジンガーが終わったテンションのままに、つい…。

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2009.09.27

『晴れた空にくじら(3)浮鯨のいる空で』読了

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晴れた空にくじら(3)浮鯨のいる空で』(大西科学/GA文庫)読了。

晴れた空にくじら完結編…って、えーマジかよ…。まだまだ話としてはこれからじゃん。納得いかねーなー…いや、打ち切りなんでしょうけどねわかってますよ。

まあ残念なこと極まりないけど、鯨船という架空のテクノロジーを基幹に置いた冒険ロマンとしてはきちんと物語を締めているので、不満はそれほど多くない。基本的に、クニの敵討ちの物語が軸になっていて、その過程で雪平とクニの間における感情のやりとりが主眼となっている。クニは仇を討つことが出来るのか、と言う側面と、そもそも仇を討つことそのものが正しいのかとい倫理の問題を巡って、雪平とクニが対立する。無論、そのやりとりの中でお互いを意識し始めてロマンスの花が咲いてくるのだが、作者らしくそのあたりは実に上品に描写しているのはさすがである。ラブコメを期待している向きには不満もあろうが、そういう話じゃないしな…。

敵討ちにすべてを賭けているクニに対して、戦争が終わったら一緒に貿易でもやろうと持ちかける雪平に対して、クニは答えを返さない。それに対して、自分はクニの力になれないと無力感に囚われる雪平が、最後に決断する展開は、お約束と言ってはなんだが、非常に”正しい”展開だと思う。復讐は何も生み出さない。新たな憎しみを生み出すだけであり、憎しみの連鎖を断ち切るためには誰かが耐えなくてはならないということを、復讐以外の未来を雪平がクニに提示することで決着をつけている。

そして、それら人間の争いすべてを俯瞰するように存在する”浮鯨”の存在。人間とは異なるスケールで存在するそれが、人間の諍いすべてを包み込んでいる。短い巻数の中、浮鯨という超越したスケールの存在もきちんと織り込んでいるあたり、作者の設計の確かさを感じるものの、やはり3巻で終わらせている影響か、いささか説明不足である印象を否めないのだが、それはむしろ作者の手腕を褒めこそすれ、貶めるものではないだろう。ただ、自分はもう少しこの物語に耽溺したかったと言う気持ちが引き起こしたものであろうと言うことは、自覚しているつもりだ。

きちんと決着はついているものの、勿体無いなあ、と思わざるを得ない最終巻だった。まあ惜しまれて終わるうちはまだしも幸福な終わり方ともいえるが。そのように自分を慰めるのだった。

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2009.09.25

『臓物大展覧会』読了

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臓物大展覧会』(小林泰三/角川ホラー文庫)読了。

タイトルのそぐわぬドログチャスプラッタホラー…に思わせておいて、実のところハードSFの要素を多分に含んだSFホラーに仕上がっているのはさすが小林泰三と言ったところか。恐怖をテーマにしておきながら論理的と言う奇妙な作風は相変わらずだよな。9編の物語が収められているのだけど、奇譚としか言いようがない不思議な作品や、徹頭徹尾グロい作品もあったり、スラップスティックとしか言いようがない(でもホラー)作品もあったり、実にバラエティ豊かである。もちろんSFマインドも存分に振るわれており、実に窓口の広い作品と言えよう。

以下各話簡易感想。

「透明女」
作中最大のグロ度を発揮する作品。透明女が主人公の周囲に暗躍し始める展開はまさにオーソドックスなホラー。途中、事件の捜査に現れる刑事たちのやりとりはユーモラスと言ってもいよいのだが、そのユーモラスな語り口さえ最後のどんでん返しにつながっているあたり、実に精密に構築されていると思われる。透明女誕生編はマジで気持ち悪くなるスプラッタぶり。さすがのオレも食事中に読んだら気持ち悪くなったぜ(食事中に読むなよ)。

「ホロ」
ホラーと言うより、人間の実存をめぐるSFの側面が強いかな。己という存在の不確かさ。魂の所在についての話。他者の存在に疑問に陥った男の行き着くところは、自己存在の否定に他ならない。まあこの手の思考実験はわりと自分もしたことがあるのであまり意外性はなかったかな。それまで信じてきた土台がぐらぐらと揺れ動いていく不安感を感じ取れるかどうかが重要。

「少女、あるいは自動人形」
これまた自分の信じている出来事がどんどん揺れ動き、現実感を喪失していく系の物語。信じたことがことごとく霞のように立ち消え、その中でも確かなものをつかもうと足掻き、つかんだところで足の下の落とし穴に落ちるという意地悪さ。基本は「ホロ」と同じ構造の作品だよな。

「攫われて」
ラストのオチは大体冒頭で予想がつくのだが、とにかく全編に漂う”悪意”の描写がすごくてむせ返りそうになる。純粋なグロ度では「透明女」には劣るが、人間が悪意をもって人間を傷つけるという描写が強烈。人間は己の欲望のためにはいくらでも残酷になれるものなのだ。途中、誘拐犯と女の子の駆け引きのシーンは、どこかジョジョを思わせるスリリングなものなのだが、”悪意”がその駆け引きを本当にグロテスクなものにしている。ラストはどこか切なく物悲しささえ感じるシーンが印象的。

「釣り人」
うん、これは一つのブラックジョークと言ってもいいんじゃないかな。途中、どう考えても文章がつながっていない箇所があって、その不自然な部分を解き明かそうと主人公たちはするのだが、解き明かされた真相は、なんと言うか本当にどうでもいい感じですよね。こんなことを明らかにしていったいどうすればいいのやら。あ、けっこうグロいかもしれないね。

「SRP」
特殊部隊SRPに所属するイノウ・ブキチは霊能力者である!彼は東京で起こるさまざまな妖怪事件に立ち向かい、先祖から伝えられた小槌の欠片を使って召喚をおこなうのだ!すなわち”カプセル妖怪”を!と言う感じの話だけどちょっと嘘。カプセル妖怪だけ本当。ともあれ妖怪退治に奔走するブキチくんなんだけど、強くなる敵についには人間新兵器と協力し、魔王山ン本太郎左衛門(山ン本五郎左衛門のもじり)を召喚し最後の戦いに向かう。その戦いの行方は!敵の正体とは!と言うところでSFに入る。地球の物質はすべて分子で出来上がっているが、実は分子というものは宇宙では圧倒的な少数派に過ぎない。科学では解明できないダークマターが大多数だ。これは分子で構成されない知性人とのファーストコンタクトものでもあるわけですね。作者頭おかしいんじゃないの。

「10番星」
クラスメイトが見つけた10番目の惑星とは。そんな宇宙への憧れから始まる凍りつくようなホラー。世界がどんどん変わっていく恐怖も去ることながら、他のあらゆる恐怖に負けて、新たなる恐怖の担い手になることで恐怖から逃れた友人の精神が不憫さを誘う。

「造られしもの」
ロボットによって人間の行うことが何もなくなった時代。家の仕事も勉強もなにもかもロボットが肩代わりしている時代。一人の男が苛立ちを抑え消えれずに苦しんでいた。この生活では、自分はロボットの奴隷に過ぎないのではないか!人間が寄って立つ基盤は存在しないのか!惑う彼のもとに同様にロボットに頼らず生活をしている女性に出会う。そこで人間の芸術こそがロボットも持ち得ない唯一の拠り所なのだという信念を得るのだった。しかし…男が安らかな眠りについた時、すべては崩れ去る。それまで男が築き上げてきたものすべてを否定しつくした最後は、物悲しさ、やるせなさと共に、信じることができたものが、本当の真実であるということ語っているように思える。それが彼本人の真実でしかなかったとしても。

「悪魔の不在証明」
もうこれホラーを書くつもりないだろ?極めて論理的な会話を繰り返し、神の存在証明について対立する主人公と神父。この主人公と神父のあり方を突き詰めるのがこの作品の根幹であろうか。つまり、人は何をもって人と呼ばれるのか。信仰によって慈愛のある人物と生きてきた神父が、信仰を失ったとしたら(彼を束縛する規律を失ったとしたら)そこには何が残るのか…。人間のプリミティブな情動の恐ろしさと言うか、人間は獣の情動を法と宗教で縛り付けているのだな、と言う話。もちろん最後に恒例のそれまでの物語をひっくり返す趣向は健在。わりとパターンなのかね、こういうの。

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買ったもの

1.『クシエルの矢(1)八天使の王国』 ジャクリーン・ケアリー ハヤカワ文庫FT
2.『クシエルの矢(2)蜘蛛たちの宮廷』 ジャクリーン・ケアリー ハヤカワ文庫FT
3.『ノーストリリア【人類補完機構】』 コールドウェイナー・スミス ハヤカワ文庫SF
4.『天冥の標(1)メニー・メニー・シープ(上)(下)』 小川一水 ハヤカワ文庫JA
5.『ユーベルブラット(10)』 塩野干支郎次 スクウェア・エニックス
6.『ベルセルク(34)』 三浦健太郎 白泉社

買った。

クシエルの矢はとあるサイトで読んだ感想がきっかけで。なにやら本格ファンタジーであるらしいのだが、同時にえぐいまでに女性性と言うものを描きこんでいるらしい。処女信仰っぽいものをぶち壊してくれる作品だといいなあ。あと小川一水の全10巻の大河小説も刊行開始。上下巻あわせて1巻と言うカウントか?だとすると本当に凄まじい大河小説だな。講談社BOXも少しは見習え(なんの作品かは言わないが)。

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2009.09.24

『空ろの箱と零のマリア(2)』読了

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空ろの箱と零のマリア(2)』(御影瑛路/電撃文庫)読了。

相変わらずやたらとわかりにくいのだけど、なぜか読みにくさを感じないのが本当に不思議だ。文章そのものは平易でわかりやすいんだよな。その平易な文章で理解し難い内容を書くのがこの作者の真骨頂なのだが、その”理解し難いことを書く”と言う過程そのものが非常にスリリングであるのが面白いところだ。

はっきり言って、この作品は非常に難解である。犯人の動機がまずもってすとんと腑に落ちないし、最後の解明編に入ってさえ、事実関係がややこしく、ややこしい事実関係を元に展開される動機はまたわかりにくくなる。そのわかりにくい動機で犯行を行う犯人に対して、これまた理解のしにくい理念で立ち向かう主人公。でも、そこに理屈がないわけじゃないんだよね。確かにそこには理屈は通ってはいるんだ。ただその理屈が普通に考えると納得できないだけで。理屈だけを見ると(その感情の流れを無視すると)、確かに理屈はあるんだよな。そのあたりが、当たり前のことをむやみにわかりにくくしているラノベミステリの多くとは異なるところであり、この作者のユニークなところであろう。主人公の特異性を”日常を愛すること”というだけで説明しているあたり、顕著だよな。一見、平凡だけど、そもそも日常ってなんなんだろう?と考えると話がややこしくなってくる。別に”いつもと同じ”と言うことが平凡と言うわけではないよな。いつもと違うことが起ころうとも、それさえも含めて”日常”だと考えると、存外日常というものも幅広くとることが出来そうだけど。まあ考えすぎてもしょうがないことなのでそれはさておき。

物語は、自分自身を乗っ取られてしまう一輝が、マリアとともにその箱の”所有者”に立ち向かうというところが基本的なラインとなっている。ただ、今回の一輝は、以前の「拒絶された教室」での実感を失っており、マリアとの関係に齟齬が生じている。その隙をつかれて危機に陥ってしまうわけだが、逆に言えばその隙さえ埋めることが出来れば今回の所有者など物の数ではない、とも言える。しかし、そこに落ち着くまでの、少しずつ自分が乗っ取られていく不気味な理不尽さなど、作者特有の”得体の知れない気持ち悪さ”は十分に発揮されており、素晴らしい。どこにも出口がないような閉塞された息苦しさをこうまで表現するというのは、この作者特有のものであろう。しかし、その一方で、そのどこにも行かない(行けない)息苦しさをマリアと言う強靭である(あるいはあろうとしている)少女の姿を描くことによって、風穴をあけようという意図も感じられる。それはライトノベル的には正しいのかもしれないが、果たして作者の描く作品に必要な存在であるのかについては今後の展開を待つ必要があるだろう。言うなれば、作者のこれまでの作品は、”マリアのような存在がない”世界をひたすら描いてきたと言えるわけで、そのことが作品にどのような影響を与えるのか(救いを描くのか、そうでないのか)はこのシリーズの重要な要素となると思うのだった。

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買ったもの

1.『15×24 link one せめて明日まで、と彼女は言った』 新城カズマ スーパーダッシュ文庫
2.『15×24 link two 大人はわかっちゃくれない』 新城カズマ スーパーダッシュ文庫
3.『アンシーズ~刀侠戦姫血風録』 宮沢周 スーパーダッシュ文庫
4.『逆理の魔女』 雪野静 スーパーダッシュ文庫

買った。

いやーまさか新城カズマの新刊を2冊同時に、しかも毎月刊行だなんて幸せすぎますよ。毎月楽しみだわい。あとスーパーダッシュ文庫の新人賞を2冊とも買ってしまった。なんとなく心惹かれるものがあったからなあ。

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2009.09.23

買ったもの

1.『シドニアの騎士(1)』 弐瓶勉 講談社
2.『無限の住人(25)』 沙村広明 講談社
3.『シスタージェネレーター 沙村広明短編集』 沙村広明 講談社
4.『ヴィンランド・サガ』 幸村誠 講談社
5.『下りの船』 佐藤哲也 早川書房
6.『洋梨形の男』 ジョージ・R・R・マーティン 河出書房新社
7.『不思議のひと触れ』 シオドア・スタージョン 河出書房
8.『鏡の影』 佐藤亜紀 講談社文庫

買った。

いやー『シドニアの騎士』にはびっくりさせられるよなー。作者にしては驚くほど”わかりやすい”話になってる。ある種のベタな話を真正面から描くつもりみたいだ。今までのやり方を捨てるのはリスキーだが、新しい境地を目指していると言うことで期待したい。まあ作者の資質と合わなくてぽしゃる可能性もあるけど…。

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『私立! 三十三間堂学院 (9)』読了

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私立! 三十三間堂学院 (9)』(佐藤ケイ/電撃文庫)読了。

学園戦略群像ラブコメもはや9巻。しかしまったくテンションが落ちないということは素直にすごいと思わざるを得ない。たくさんの登場人物をこれでもかと登場させながら、全員のキャラを立たせると言う難事をたやすく(見える)成立させてしまっているのだ。どのキャラクターも活き活きと描かれており、実に魅力的である。佐藤ケイと言えば、”萌え”をツールとして利用しまくる作家であると言うのは定説ですが(たぶん)、キャラの立て方は意外とオーソドックスなんだよな。キャラクターを動かすのに、派手はキャラクター性は、実はあまり必要ない。まったくいらないわけじゃないけど、すべてではないと言うべきか。あくまでもキャラクターを動かすのは、キャラクターの背負った背景であり、エピソード。萌え(だけではなく、極端なキャラクター性)はあくまでも装飾品の一つでしかない、という割り切り方が見事と言うほかは無い。自分は群像劇を描くときは、キャラクターはエピソードで語ってほしいというタイプなので、佐藤ケイは実に見事な群像劇の描き手であるなあ、と毎回思っていることなのだがあらためて感心してしまったのだった。

今回はバンド結成を目指す”まこ”と雷花がメイン。バンドを組もうとアプローチするまこに対して、それを断り続ける雷花がいろいろとぶつかり合いながら、音楽祭に向けて活動していくのが物語の中心となる。学園唯一の男である法行もそこには関わってくるのだが、まああまり二人の関係に介入してくることはない。まあ事件の発端ではあるのだけどね。法行に音楽祭で花束を渡そうとする策士たちの暗闘が繰り広げられ、さまざまな要因が絡み合って波乱の音楽祭が生まれていくと言う舞台設定まで巧みに生み出していく作者の手際の良さは瞠目に値するだろう。その音楽祭を取り締まる生徒会の面々のキャラクターもここでいろいろと描写され、始めの方ではただのかませでしかなかった南や千秋などのキャラクターも補強され続けている。とくに南はどんどんキャラ格が高まっているので、おそらく作者としては今後活躍させるキャラクターなんじゃないかな、と思う。今は仕込みの時期なのではあるまいか。

さまざまな思惑が絡み合い、最終局面に向かっていくのだが、その混乱の中、雷花の抱えている葛藤を強引にねじ伏せていく展開はなかなかに迫力があった。ご都合主義と紙一重だが、それを感じさせないのは入念に構築された舞台設定のたまものであろう。そこに至るまでの物語にきちんと説得力が生まれているからこそ、雷花の葛藤を乗り越える姿が説得力も持つのだ。その雷花を支えるまこたちの活躍も見事だった。法行はすっかり名脇役と言うか、縁の下の力持ち的な役割になっているが、まあこいつがメインになると話がややこしくなるからこれでいいのかもなー。

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2009.09.21

『嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん(8) 日常の価値は非凡』読了

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嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん(8) 日常の価値は非凡』(入間人間/電撃文庫)読了。

この作者の文章は癖が強すぎて本当に読みにくいなー、と毎度のように文句をつけようかと思ってたのだけど、今回は予想外につるつる読めてしまって自分でもびっくり。まあ確かに恒例の読みにくさの主要な原因である「嘘だけど」が少なめであることも、今回の読みやすさに一役買っているような気もするが、なんと言うか、全体的に文体を改造してきているような気がする。勿論、読み手である自分が慣れてきた、と言うところもあるかもしれないが、それ以上に、作者が今までの自分の文体を”壊そう”としているように感じられるのだ。

過剰に装飾的な文体はこの作者の個性とは言え、ちと強すぎるところがあるので読者としては今後の展開を考えると不安要素ではあるからな。この文体はみーまーだからこそ許されるのであって、他のシリーズでもこの文体を維持していくのはあまりプラスにはならないので、文章のあく抜きは必要なところではあるよな。まあ余計なお世話だけど。

今回は群像劇を目指しているとのことで、多くの登場人物を並列して描くと言うところも、文体の多様さを追求している感じが出ており、興味深く感じた。大きな事件を描くのではなく、それぞれ独自の目的を持った登場人物たちが、それぞれ自分の目的を追求した結果、物語が動いていくと言う展開はそれなりに群像劇をきちんと描いているように思う。もっとも、キャラクターの描き方がゆるく、あまりキャラが立っていないところがあるのが残念なところと言える。キャラクターはそれぞれ過剰なまでに記号付けはされているのだが、その背景までを立たせるところまでは向かっておらず、どのキャラも似たような、つまりは入間人間的なキャラに留まっている。過剰に記号的で、饒舌で、回りくどい言葉を弄する、と言う意味ではまったく入間人間的なキャラクターであると言うことが出来るだろう。

その点は惜しく感じるところもあるが、概ねそれぞれのキャラクターが事件にそれぞれ知らぬうちに介入して、それぞれに自分なりの決着を付けていくので、それなりにラストにはカタルシスはあるように思う。まあ個人的には途中でフェードアウトしていくキャラがいたり、そもそも事件そのものはしょぼく、全員が事件に介入しているわけではないので、やや群像劇的なサスペンスを期待すると肩透かしを食うところがあると思うのだが。ちょっとそこまで突き詰めてくれても良かったのではないかなあ。

まあ読み手が全員それを望んでいるとは限らないので、これはこれでいいのかもしれないけどね。

おまけ。種島くんはひょっとして入間人間の別シリーズの登場人物かなにかだろうか?あからさまに伏線が張られているのに、今回の事件にはまったく関係が無いみたいだし。最後に出くわした親子は明らかになにかを隠している感じだしな…。来月に出る作品とやらになにか関係があるのかな?

おまけのおまけ。ラストの引きにはちょっと苦笑。本当にこの作者はまともに”引く”と言うことが出来ないみたいだな。あざといを通りこして逆に感心しました。

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買ったもの

1.『夏のあらし(6)』 小林尽 講談社

買った。

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2009.09.20

『ラプンツェルの翼 III』読了

51ow4ehpmdl__sl500_aa240_ラプンツェルの翼 III』(土橋健二郎/電撃文庫)読了。

あからさまに次回に続く、か…!と思わないでもなかったが、逆に言えば4巻が出ることは確定していると言うことなので、わーい4巻が出るーと言うことが嬉しくないこともなかったりして。…まさか4巻出ないとかそういうことはないよなあ?明らかに途中でありがら続きが出ないツァラトゥストラの階段のこともあるのでちょっと不安が拭いきれないのだが…いや、ここは作者を信じよう。続きを出してくれるに違いない。実を言えばツァラトゥストラの階段の続きも未だ待っておりますのでよろしくお願いいたします。

さて、作品について。僕はこのシリーズは、ラノベ化された寄生獣、つまり”人間”と”そうでないもの”の間に理解と愛は存在しえるのかを書いている作品だと思っているのだが、その意味では3巻はやや大人しいと言わざるを得ない。”天使”とは完全に人間とは異なる知性の持ち主として描いてきたシリーズなのだが、3巻において、奈々以外の天使が数多く存在するにつれて、”天使”も長く生きるにつれて、それ相応の”人間らしさ”を取得しているということが明らかになって来た。冷徹に計算と合理に基づいているように見えた”天使”も、自らの欲望、すなわちエゴに支配されているということがわかるのだ。典型的なのが”お姉様”の存在なのだが、この人、人間を支配しようと言う欲望に明らかに突き動かされているよな。天使は人間を従える上位の存在だ、と言う思想が、その冷徹な仮面から漏れてきているのがわかる。東京に配属されているエリート天使たちも、結局の自らの生存、保身のみを追及するエゴの持ち主であり、人間に対するものはもとより、仲間たちの命さえ、自らの保身に利用している。

自身の生存を第一義に置くというのは生物としては決して間違っていないのだが、その生存のために同族の犠牲を強いる時点で、純粋に生物的な本能とは言いがたい。冷徹で合理的かもしれないけど、その行動原理はエゴそのものであり、極めて人間的と言うことが出来ると思う。ただし、その人間性と言うものも歪ではあると言えるのだが。

そこに、感情などによって同族どころか異種族である天使を助けるために自身の保身を捨て去る側面を持つ”人間”が登場する。我らが主人公の遼一くんである。もっとも今回はあまりに歪なエゴを発揮する天使たちに対して、人間として激しく友愛の意味を問うことに留まっており、お互いをコミュニケートするところまでは行っていない。これは、今までは遼一と奈々の個人的な間柄で積み上げてきた理解のやりとりを、さらに広げて人間と天使とのものに広げようという展開なのではないかと思う。人間だけでなく、天使である奈々さえ大切な存在であると認識している遼一が、自ら命の選択をしなければならない状況に陥ったとき、果たしてどのような選択をしていくのか。そのあたりに現時点のテーマの重要なところがありそうな気もするのだった。

あとは続きを早く出してくれることを祈るばかりである。

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2009.09.19

『ピクシーワークス』読了

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ピクシーワークス』(南井大介/電撃文庫)読了。

びっくりするぐらい硬派な物語だったなー。あちこちで引用されていることからもわかるけど、神林長平リスペクトのところがあるのも興味深い。モチーフをいくつか使用しているだけで物語としては別物なんだけど、ぶっちゃけ物語の基本が戦闘妖精と言うか戦闘機のAIが重要な役割を果たすあたりなんか、とても神林長平っぽい気がする。マシンに魂が宿る、と言うのは基本よねー。

ただ、そのマシンと出会うのが女子高生たち、と言うのが非常にライトノベル的ではある。この女子高生たちが実にタフでまっすぐなところは、本当にいまどきだよなあ。すでに機械知性との邂逅も、もはや男の子の専売特許ではなくなってしまっていると言えるのかもな。もっとも自分は別に機械知性に対するロマンチックさと言うものを感じたことはないので、別に気にならないんだけどね(じゃあ言うなよ)。

しかし、この女子高生たちは本当にタフだなー。どんな困難があろうとも、諦めるどころか闘志を燃やし続ける女の子たちが強すぎる。無理を通して道理が引っ込む。もちろん、その無茶を通すだけの実力があっての話だけど。そういうタフで前向きな主人公たちが、一心に戦闘機を飛ばすと言うためだけに力を注ぐと言うだけの物語なのだが、それが面白いのは、彼女らの明るさに起因するところが大きいのだろう。なにかにひたすらに打ち込むことの美しさと言うものがそこにはあるように思えるのだった。

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2009.09.18

買ったもの

1.『ミストボーン-霧の落とし子-(3)白き海の踊り手』 ブランドン・サンダースン ハヤカワ文庫FT
2.『鋼殻のレギオス(14)スカーレット・オラトリオ 富士見ファンタジア文庫
3.『GENEZ(2)』 深見真 富士見ファンタジア文庫
4.『桜木メルトの恋禁術』 森田季節 MF文庫J
5.『いつも心に剣を(3)』 十文字青 MF文庫J
6.『ローゼンメイデン(2)』 PEACH-PIT 集英社
7.『シグルイ(13)』 原作:南條範夫 漫画:山口貴由 秋田書店
8.『ジャイアントロボ 地球の燃え尽きる日(6)』 脚本:今川泰宏 漫画:戸田泰成 秋田書店

買った。…二日間で一万円は買いすぎだろう、と思った。

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2009.09.17

『森口織人の陰陽道 巻ノさん』読了

51sknezcwl__ss500_森口織人の陰陽道 巻ノさん』(おかゆまさき/電撃文庫)読了。

3巻目にしてついにタイトルであるに似つかわしい作品になったようで、ついに主人公である森口織人自身が妖怪とのバトルに参戦。まるで学園異能みたいな話になっていきました。織人を狙ってくる天魔に対抗するために、修行に打ち込むことになる織人の運命は…と言う展開なんだけど、そこはおかゆまさき、ちまちまと真面目に修行編なんかやりません。初雪さんとデートしたり、例によって彼女の妄想に振り回されたりしつつ、修行編はさっさとクリア。天魔との戦いが始まります天魔は強大な敵なんだけど、そこは主人公、新たに得た力を武器に、仲間とともに戦いを挑むわけなんだけど、予想以上に真面目にバトルしていて、その点は意外だった。織人の能力もギャグじゃなくて、地味ながらサポート能力としては役に立っているし、驚いたことにバトルにおける駆け引きめいたものさえやっているあたり、本当に驚いてしまった。これって本当に学園異能だったんだな…。ドクロちゃんほどのラノベの極北を一度極めてしまうと、ちょっと普通の方向性も試してみたくなるのかもしれないなあ。まあ結局クライマックスまで初雪の妄想で締めるあたりはさすがおかゆまさきと言っても良いような気もするけどなー。そんな感じで、おかゆまさきらしさは確かにあり、それでいてきちんと伝奇アクションとしての体裁も整えているところを評価すべきであろうか。ラブでコメ分は初雪さんとのキャッキャウフフ場面で補充しているし、なんだかんだでハーレム状況が継続している感じもあるし、真面目にライトノベルをしていると言う言い方も出来るかなー。

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買ったもの

1.『魔法先生ねぎま!(27)』 赤松健 講談社
2.『史上最強の弟子ケンイチ(35)』 松江名俊 小学館
3.『月光条例(6)』 藤田和日郎 小学館
4.『結界師(26)』 田辺イエロウ 小学館
5.『お茶をにごす。(10)』 西森博之 小学館
6.『絶対可憐チルドレン(18)』 椎名高志 小学館
7.『コピーフェイスとカウンターガール(3)』 仮名堂アレ ガガガ文庫
8.『絶対女王にゃー様』 J・さいろー ガガガ文庫

買った。

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2009.09.16

『今日もオカリナを吹く予定はない』読了

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今日もオカリナを吹く予定はない』(原田源五郎/ガガガ文庫)読了。

いわゆる学園異能に属するタイプの作品だと思うのだが、敵となるのは”死角”で、主人公たちの能力が”空気を読める”ことだというあたりが、その、なんと言うかアレだな。まあそれが何を意味しているのかはともかく、涼宮ハルヒ的な変人たちと一緒に仲良くエキセントリックな毎日を送る系の話にもなっている。うーん、個人的には日常系非日常をやるのだったらそれを徹底させて、わざわざバトル要素を入れる必要はないんじゃないかと思うのだが、ハルヒの後追いだとなかなか難しいか。これでバトルがなかったら本当にハルヒって感じだもんなあ。

もっともバトルと言っても、能力が”空気を読める”と言うあたりからがなかなかにクールだ。物語を冷静に見ているところがあって好ましい。バトルそのものも、あまりバトルバトルしていないし、”空気を読める”能力が絶妙なしょぼさをかもし出しているのも好感触。なんだかんだで主人公がオンリーワンの能力だったりするあたり、ある意味、学園異能の王道と言う感じなのだが、少なくとも現時点ではまったくプラスの方向にそれが役に立ってないあたりも素晴らしい。

このように要素要素はなかなかに王道と言う感じなのだが、その処理の仕方があまりにもクールすぎるところがこの作品の特筆すべきところなのであろうと思われる。なかなか苦労しそうな主人公の能力が絶妙に役に立たず、ピンチに陥るところはさすがだった。これ、毎回、発動条件が変わるのならば、次はどんなしょうもない展開になるのかというところでもけっこう引っ張れるよな。

しかしよくわからんのは最後のオチだよな…。井波は一体どこに行っていたんだぜ?残り数ページでどうケリをつけるのか心配になっちまったぜ。しかも、その理由が明かされないし…。これは明らかに次回作への布石だよなー。

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2009.09.15

『君が僕を どうして空は青いの?』読了

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君が僕を どうして空は青いの?』(中里十/ガガガ文庫)読了。

これはすごい。

平凡な中学生、淳子の学校に転校してきた商店街の神様、”恵まれさん”である真名。淳子は彼女と出会い、そして強烈に惹かれていく。それまで経験したことの無い感情に戸惑う淳子だったが、自分の感情に翻弄されながらも真名との距離を縮めていく、と言うのが基本的なストーリー。もっとも”恵まれさん”は神様と言っても超自然的な存在ではなく、言うなれば一種の巫女のようなものだと考えればわかりやすい。決してお金には手を触れることが出来ない”恵まれさん”は誰かから施しを受けなければならず、施しは”物”で受け取らなければならないので、結果的に商店街が潤うわけだ。俗な言い方をすれば、商店街のキャンペーンガールのようなもの。…そのように淳子も思っていた。

淳子は真名に強烈に惹かれる反面、同時に、”恵まれさん”なんてものをやっている真名のことがどうしても理解出来ない。お金を使わないで生活する?そんな不便なことを大真面目にやっているなんてバカみたいだ。そんなの嘘に決まっている。どこかでこっそりとお金を使っているに決まっているんだ。…そのように淳子は思い込んでいた。

真名の”執事”である縁から、謎めいた真名の過去を囁かれる淳子。”曖昧”な言葉を許さない真名の、奇妙な過去。”恵まれさん”になった衝撃的なきっかけ。それを囁かれ、淳子は心の中で想像をめぐらせる。真名の心中を想像する。きっと彼女は月の荒野にいるに違いない。寂しく孤独な月の荒野。誰もいない世界。惹かれる相手だからこそ、その心中を理解したい、その”本当”を知りたいという焦燥感。…淳子はそれに耐えられなかった。

思い込みと焦燥に突き動かされて、淳子は真名の領域に足を踏み込む。真名の心中を暴きたいという欲望に流されて、淳子はその言葉を紡ぎだす。「どうして空は青いの?」

言葉の正しさのみ従う真名は、正しく言葉を返す。「君が僕を」

おそらく淳子は”届いた”のだと思ったろう。月の荒野におわす姫の御許へ。そばにあることを許されたのだと。孤独な彼女を癒す存在になったのだと。これで終わればすべては万歳。めでたしめでたし。淳子の思いはつながり、彼女は正しく、そして報われる。

ところが、そんな彼女に冷や水をぶっ掛けるその言葉。NGワード1。くずし文字で書かれたその”恵み札”。それが淳子の傲慢を暴き立てる。

結局、淳子が惹かれていたのは、彼女が勝手に妄想していた真名であった。正確には、惹かれたゆえに、”こうであろう”と思い込んだ真名でしかなかった。真名は淳子が思うような、そんな都合のいい存在ではなかった。真名はもっと透徹していた。完全に自分の人生を見つめていた。自分の在り方を受け入れていた。”かわいそうな自分”などに酔っていなかった。すべてはそうであろうと思っていた淳子の願望に過ぎなかった。

それを思い知らされたとき、淳子に出来ることは、羞恥のあまり逃げ出すしかなかったのである。

37歳になった淳子はかつての自分を振り返り、自分の失敗を思い返す。「どうして空は青いの?」それは現実を生きる人の数だけ答えがある。答えのために人が生きているのでは断じてないのだ。

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2009.09.14

『敵は海賊・短篇版』読了

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敵は海賊・短篇版』(神林長平/ハヤカワ文庫JA)読了。

『敵は海賊』シリーズの短編集。よほど短編が少なかったのか、20年以上前の作品と書き下ろしがごっちゃになっている。そのわりには違和感をほとんど感じさせないところに神林長平のオンリーワンなところが出ているようにも思うのだった。

以下、各話感想。

「敵は海賊」
短編版にしてオリジナルでファーストな「敵は海賊」、と言う事は読んでから知った。それぐらい現在の作品との相違点は少ない。むしろ現在の「敵は海賊」が持っている要素をすべて持っており、その意味ではすでにこの時点で世界観は完成されていると言える。ラテルもアブロもいつも通りの彼らであり、違和感はない。もっとも後年におけるメタ的な視点はなく、とある女性を助けることになった二人がある都市で繰り広げることになるドタバタアクションであり、真っ当な娯楽作品になっている。とは言え、ラテルの判断が必ずしも論理的ではなかったり(途中で必ず論理の飛躍がある)、何が正しく何が間違っているのかよくわからなくなっている展開など、後年の「敵は海賊」シリーズの萌芽も芽生えており、単にシリーズの原点と言うだけにとどまらない内容だと思う。

「わが名はジュティ、文句あるか」
ジュティって誰なのかなあと思いながら読んだが、どうやら『敵は海賊・A級の敵』に脇役で登場していたらしい。綺麗さっぱり忘れてた。
内容は宇宙を舞台にしているものの、完全に幽霊奇譚となっている。幽霊が異星生物になっただけですね。自らの忌まわしき過去から生み出された亡霊に対して、それに対決するジュティの姿が描かれる。夫や母子の愛憎などを含めても、これ舞台を地球にしても全然問題ない話だよなあ。

「匋(ヨウ)冥の神」
海賊王である匋冥の良心である白猫クラーラと魔銃フリーザー誕生秘話。もっとも、かつて匋冥がとある少年に語った(と本人が主張する)内容を、その少年が改めて語り直す話になっているので実際のところは分からない、というメタな部分は自分の親しむ『敵は海賊』らしさを今巻収録作の中では最も強く感じさせられた。本編ではほとんど神か悪魔に等しい超越性を身に付けている海賊王に対し、今作における匋冥は頭が切れ、若く、野心に溢れているものの、一個人としてのパーソナリティが現れており、興味深い。無論、前述の通り真偽の不明なメタフィジカルな部分があるので、海賊王本人の格を落とさないというところも、ほとんどアクロバティックと言っていい語り方(騙り方)に作者らしさを感じる。

「被書空間」
『戦闘妖精・雪風』とのクロスオーバー作品。ラテルとアブロが雪風の世界に入り込んでしまって、”雪風”とニアミスするという話。雪風世界を、メタ認知がわりと進んでる敵は海賊シリーズで読み解くため、かなり作品のコアな部分を解釈しているような気がする。まあここでの解釈が正しい保障もまたメタ認知になってしまうのだけど。ファンサービス作品でありながらクロスオーバーと言う概念自体が実に神林的と言うのも面白い話だ。クロスオーバー自体にメタ構造が埋め込まれていると言えなくもないもんな。

とかなんとかそんな感じ。

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ドラクエ9プレイ日記(11)

つってももうやることはあまりないんだけど。

・とりあえずサンディさん復活まで。寝ぼけてじゃれ付いてしまったと言うひどすぎる理由で襲ってきた真・ヌシ様を倒して天の方舟をゲットだぜ。これで各地のドロップアイテム回収も楽になる。

・今まで行けなかった場所に行ったりもするけど、クエストが多すぎて回りきれなかった。クエスト、楽なのもあるけど、かなり厳しい条件もあって悩む。まあ目的も無いんだから、暇に開かせてやればいいだけの話なんだけどね。

・とりあえず宝の地図の攻略にいそしむことにする。レベルを上げたり武器を強化したりする。と言うかそれしかすることがない。

・とりあえず、今ははぐれメタルを狩ってレベル上げに勤しんでいる。主要な職業ぐらいは極めておきたいところだよな。

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買ったもの

1.『Re:SET 想いと願いのカナタ』 月島雅也 GA文庫
2.『わが愛しき娘たちよ』 コニー・ウィリス ハヤカワ文庫SF
3.『赫眼』 三津田信三 光文社文庫

三津田信三の新作は、なんか表紙を見ているだけで呪われてきそうだな。

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2009.09.13

『クイックセーブ&ロード』読了

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クイックセーブ&ロード』(鮎川歩/ガガガ文庫)読了。

時間SFとしてはそれほど精度が高くないので、ちょっと残念な気持ちになった。普通にライトノベルとして読むのならそれほど気にはならないのだが、青春SFとしてはちょっとねー。主人公が頭が悪くてイライラしてしまうのもマイナス。クイックセーブ&ロードは問答無用の凄い能力なので、頭がいいとあっという間に事件解決してしまうということもあるので、主人公の察しの悪さでバランスをとっているのだろうけど、読者としても明らかに悪手である選択をしている時点で、この主人公に感情移入をするのは難しいんじゃないかな。ミスによって詰んでしまった状況の解決手段もフェアじゃないしなあ。先輩に答えを教えてもらうのはちょっと問題じゃないかと思うんだが。いや、そんなの読み手の勝手な思い込みと言われればそうなんだけどな。ジャンル・ライトノベルにそんなお約束なんざ関係ないと言われたら反論するつもりはないんだけどな。でもなーせっかく自分で作ったガジェットについては、出来る限りルールは明確にしておいて欲しいよなー。トライアンドエラーがテーマになっているのなら、その辺はハッキリして欲しかった。まあ自分が考えていたテーマそのものが違っていているのかもしれないけどもね。実は青春の全能感とその失墜をテーマにしていたりするのかなー。うーん。

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買ったもの

1.『晴れた空にくじら(3)浮鯨のいる空で』 大西科学 GA文庫
2.『シャギードッグ(4) 人形の鎮魂歌-reborn-』 七尾あきら GA文庫
3.『神曲奏界ポリフォニカ・クリムゾンS(5)』 榊一郎 GA文庫

買った。

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2009.09.10

『ミスマルカ興国物語(5)』読了

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ミスマルカ興国物語(5)』(林トモアキ/角川スニーカー文庫)読了。

またしても新キャラ登場、さらにパリエルの素性が仲間内にばれる、とそれなりに話は動いているような…そうでもないような…。結局、紋章を一つ手に入れるまでドタバタしただけとも言えるな。紋章を手に入れるために忍者の隠れ里(だったテーマパーク)に向かったマヒロ王子たちが、紋章を手に入れるために試練(みたいなアトラクション)をこなすと言う、まあいつも通りの林トモアキだったよ。マヒロを追うルナス姫たちの追っ手も迫り、さあスペクタクルアクションの始まりか!?と思ったけど勘違いでした。まあそんなもんだよな。今回はあくまでも小競り合いと言うか、帝国の真の作戦発動までの時間稼ぎ的な意味合いが強いのだろう。マヒロも紋章を手に入れることを優先しており、お互い、まだ本当の戦いの時期は来ていないという判断があるので、深追いはしないし、されないと言うところか。お・り・が・みの登場人物の子孫と思われる人物も登場したり、明らかに人間じゃないっぽい人も登場したり、ファンにはくすぐられる部分もあるなど、さすがこの作者はサービス精神が旺盛だな、と思いました。まあ、物語が本当に動き出すのは次の巻かなあ。なんとなくインターミッション的な巻でしたね。

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2009.09.09

『翼の帰る処(2)-鏡の中の空-(下)』読了

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翼の帰る処(2)-鏡の中の空-(下)』(妹尾ゆふ子/幻狼ファンタジアノベルス)読了。

本来は異世界大河ロマンの要素が強かったシリーズだったが、少しずつ神話の時代が現出してくるという展開に興奮が留まるところを知らない。ヤエトは、あくまでも彼が仕える皇女のために働いているのだが、彼の持つ”恩寵”の力は彼を決して人間の諍いのみに目を向けさせることはないのだ。まあそれを言っては、彼自身は人間同士の争いにだって首を突っ込みたくはないのだが、すでに皇女を見捨てることなど出来ない、そして彼が本質的に持つ王佐の才はヤエトを決して望みの隠居生活に浸らせてくれることを良しとしないのだった。隠居を決め込むには、彼はあまりにも有能すぎるのである。しかも、極端なまでに自己と言うものを軽んじ、利他的(と言うより排自的)な精神は、そもそも彼自身を楽な道へ歩ませてくれるない。というよりその意思がない。このあたりにヤエトと言う人物の矛盾と陰影が存在していると言えよう。彼は人間としては歪なのだが、その歪さが人を惹き付けることにもなるし、反発されるところでもある。どちらにせよ彼に平和な日常は訪れることはないのである。南無三。

常に何がしかの厄介事に巻き込まれるヤエトだが、自らの恩寵を使いこなすことが出来るようになるとともに、神代の時代が現出し始めていることを知る。(無駄に、どころか彼本人を滅ぼすほどに)責任感の強いヤエトは、”知ってしまった”ことに対する責任を果たすべく、神話の時代からの滅びにさえ立ち向かうことになるのだった。皇族の継承争いに介入し、皇女の生き残る目を模索しながら、同時に彼は世界を救う試みを行わなくてはならない。だが、彼に悲壮感はまるでない。日々の不平不満を口にしつつ、愚痴を垂れ流し、ふらふらになりながら、一歩づつ物事に取り組んでいく。その姿勢こそが多くの人に信頼される彼の美質であろうが、結果、ますます深みにはまっていることに本人も薄々感じてはいるものの、あえて困難な道を歩んでしまうところが実に愉快で魅力的な人物と言えるだろう。本人にとっては気の毒と言うほかないのだが。

物語は世界の行く末に暗雲が経ち込めていることを予感させながらも、皇位継承を軸に進んでいる。四大公家の一角たる黒狼公に任じられてしまったヤエトは、領地で起こる問題に対処しつつ、皇女を支えていく。皇位からは最も遠い存在でありながら、才気を見せつつあるものの、まだまだ子供っぽく、ヤエトを困らせる皇女との主従のやりとりのおかげで、殺伐となりかねない継承争いをどこか微笑ましげな印象を与える。だが、生き残りを模索して第二皇子との共同戦線を取り付けるも半ばに、第三皇子の暗躍がヤエトたちを襲いくる。その陰謀に立ち向かう皇女たちの運命やいかに…という展開もまたサスペンスフルでとても躍動的である。背後でうごめく神々の動きと、表側の人間たちのドラマは少しづつ交わり始めており、物語の行く末は未だ見えてこない。未来視の力を持つ女性と出会い、救い主としてみなされてしまったヤエトの行く末は。自らの道を歩み始めた皇女の未来は。

4冊目にして物語は未だ天井知らずに面白くなっている。要素の一つ一つに物語としての面白さが凝縮された作品と言ってよいだろう。現時点で、もっとも先が気になるファンタジーであると断言してもかまわないのではないかと思うのだった。

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買ったもの

1.『嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん(8) 日常の価値は非凡』 入間人間 電撃文庫
2.『森口織人の陰陽道 巻ノさん』 おかゆまさき 電撃文庫
3.『私立! 三十三間堂学院 (9)』 佐藤ケイ 電撃文庫
4.『ラプンツェルの翼 III』 土橋健二郎 電撃文庫
5.『空ろの箱と零のマリア(2)』 御影瑛路 電撃文庫
6.『ピクシーワークス』 南井大介 電撃文庫

本当は昨日買ったのだが書き忘れた。ドラクエやるのに忙しかったんだよ。

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最近のアニメ

8月は観ないアニメは大鉈を振るってバッサリと切って捨てたので大分減った。これで少しは楽になる。アニメを観ててストレスをためてしまうなんて、不毛も極まると言うものだ。
以下、視聴ランキング。

 1.真マジンガー 衝撃!Z編
 2.CANAAN
 3.化物語
 4.Phantom ~Requiem for the Phantom~
 5.青い花
 6.東京マグネチュード8.0
 7.亡念のザムド
 8.懺・さよなら絶望先生
 9.うみねこのなく頃に
10.ニードレス
11.狼と香辛料Ⅱ
12.涼宮ハルヒの憂鬱
13.GA 芸術科アートデザインクラス
14.ティアーズ・トゥ・ティアラ
15.うみものがたり
16.プリンセスラバー!
17.バスカッシュ
18.クロスゲーム
19.鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST
20.かなめも(視聴中止)
21.宙のまにまに(視聴中止)
22.よくわかる現代魔法(視聴中止)
23.蒼天航路(視聴中止)
24.グインサーガ(視聴中止)
25.咲 -Saki-(視聴中止)
26.シャングリ・ラ(視聴中止)

1位から3位については鉄壁にして順位変わらず。化物語の最新作がいろいろの厳しい内容だったが、まあ失速していると言うほどではないな。4位から10位についても多少の順位の変動こそあれ内訳は変わらず。面白いなーと思いつつ観ている。11位以降もとくに変更はない。いろいろ気になるところはありつつ、面白いので観ている感じ。と言うわけで、評価としてはそれほど動きはないと言える。ただ、8月は観ていない作品についてはバッサリ視聴中止(録画も消した)を行ったので、大分すっきりしたかな。なんとなく惰性で観ているのは良くないよねやっぱり。

1位から3位まで。
真マジンガー衝撃Z編の面白さはブレないねー。作中最大の萌えキャラがあしゅら男爵なのは周知の事実だと思うけど、十造おじいちゃんの萌え度もかなりのものだ。この人、序盤に死んでいるくせに、そのあともしょっちゅう登場するので、全然死んだ気がしねーぜ。しかも、コンピューターおじいちゃんとして大復活!今川監督はマッドサイエンティストとあしゅら男爵が本当に好きなんだな…。オレも大好きだぜ!
CANAANも面白いよなあ。なんかアルファルド大好きリャン・チーが暴走をしまくっていて、物語がよくわからんところに向かっているな。勝手なことばかりするリャンは、確かに綿密に計画を構築するアルファルドにとっては邪魔か…。まったく無表情に切り捨てるアルファルドは怖いけど、そのくせアイドルソングをきちんと知ってたり、人間の『愛情』に興味を持ったり、まあ人間の感情を理解しない(あるいは省みない)怪物に違いないけど、変なキャラになっている。なにを考えているのかさっぱりわからんぜ…。わからないと言う意味ではカナンもそうだけど、こやつは野生動物のようなものなので分からないのが当然なのだからすでに自分の中では腑に落ちているので問題なし。ゲーム『428』をやったおかげで、キャラクターの関係性について理解が深まったこともあり、より面白く観ることが出来そうな感じ。
化物語。するがモンキーまで、まったく不満の無い内容だった。よくあの原作をここまでシェイプアップ出来たものだなーと感心することしきり。キャラ萌えアニメとしてはすさまじいレベルだ。ただなーなでこスネイクは、製作体制に問題が出ていると言う噂もあって、今後どうなるのか心配だなー。駿河の前半のトークをほぼカットと言うのもすごくがっかりしたし。もうちょっとなんとかならんかなー。

4位から10位まで。
Phantom。ファントム学園の開始にはみんなびっくりするよな。アリプロの曲があんなに合っていないOPは珍しいぜ。キャルの成長ぶりに阿鼻叫喚が巻き起こったのは皆見事な紳士ぶりだなと思った。
青い花。ふみちゃんすげー!別れようとか行っておきながら心の寄り所を求める杉本先輩を一刀両断。女ってこえーなー。
東京マグネチュード8.0。なんかどんどんきつい展開になっているんですけど…。ここからどんな地獄が展開されていくんだ…。
亡念のザムド。もう視聴者なんてものを完全に無視した地味アニメ。人間関係のゆらぎとか、そういうものを楽しむ作品よね。
懺・さよなら絶望先生。うん、面白いんだけどとくに何も言うことがねえな。原作に忠実であまり実験的なところが少ないんだけど、化物語の負荷が大きいのかもな。
うみねこのなく頃に。もう大爆笑。いや笑っている場合でもないんだけどな。人間が疑心暗鬼にどんどん追い込まれて狂気に走っていくのがほとんどギャグとしか思えない。悲劇は喜劇と表裏一体ってか。
ニードレス。うん…おもしれえんだよな。基本的にギャグ一辺倒なのに、ギャグに流されないアークライト様が素敵だ。波状攻撃をかけてくるギャグをクールに受け流す姿に痺れる。

11位以降。
とりあえず、視聴していて苦痛が勝ってきた作品を切り捨ててみた。決して駄目な作品ばかりというわけではないが、個人的に趣味に合わなかったんだな。
狼と香辛料Ⅱはいちゃいちゃアニメだけど、ちょっと商売関連の駆け引きが分かり難いかな…。まあ原作を読んでいれば問題ないけど。涼宮ハルヒもなー、今回の話はノレない。エンドレスエイトで致命的に視聴意欲をそがれてしまったからなー。完全に惰性と言う感じだ。GAは観方が分かってきた気がする。ティアーズ・トゥ・ティアラはちょっと淡々と進みすぎかなー。シチュエーションは熱いのに、演出が淡々としているのが惜しい。うみものがたりは変身美少女ものと思わせておいて、登場人物がどんどんダーク化していくのが痺れる。メインヒロインをここまで汚すなんて…。プリンセスラバーは…うん、だんだん良くわかんなくなってきた。ハーレムは好きだけど、なんか違うなあ…。バスカッシュも順調に失速しつつあり、もはや視聴は意地の領域の入りつつある。こういう作品じゃなかったよなあ…オレが観たかったバスカッシュは…。クロスゲームと鋼の錬金術師は日曜のなんとなく時間が空いている時間帯に放送しているのでつい観ている。まあ面白いかどうかはよくわかんないんだけどな。

8月の視聴状況はだいだいそんな感じでした。

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2009.09.08

『428 〜封鎖された渋谷で〜』をクリアした

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428 〜封鎖された渋谷で〜』PS3版をクリアした。白と黒の栞も出したし、一応一通りクリアできたかな。あと金の栞というやつもあるらしいが…まあ近いうちに何とかしよう。

PS3版はハイビジョン出力やリアル5.1チャンネルサラウンドに対応、との事だが、Wii版をやっていない自分にはよくわからなかった。あんまり画質とか映像には興味が無いタイプなんで我ながらあまり信用ならないけれどもね。でもまあ、画面が綺麗だと長時間プレイしていても疲れにくいというのま間違いなくあるよな。携帯ゲームとかは画面が小さいと長時間プレイしようとするとすぐ疲れてしまう自分としては、PS3版を購入したのは正解だった模様。土日で一気にプレイすることが出来た。

結果から言うと、大変満足の出来る内容でした。正確には、事前に予想していたよりもはるかに面白かった。ひさしぶりにゲームにハマる楽しさを味わうことが出来たよ。やっぱゲームにハマるって言うのは幸せな時間だよな。

何人かの主人公の物語があって、その物語を追って行くうちに、別の主人公との関わりが生まれ、つながっていく快感が、もっともこの作品を進めていく上で強いものだった。ある人物の行動が、他の人物の物語に間接的に関係していく、と言う、”つながり”の快感。序盤においてはこの快感がプレイする原動力が大きかった。そして物語が進んでいくにつれて、それぞれの物語が佳境に入っていくにつれて、大きな物語が生まれてくる。すべての物語が怒涛の展開を見せる中で、同時に”すべての物語がつながっていく”と言う快感もより強くなり、クライマックスの一気呵成に突き進む物語は壮絶と言ってもよいものになる。それは単に物語の力と言うよりも、主人公たちの行動が重ねあわされていくことによる物語のリレーが、大きく物語のテンションに関わっているように感じられるのだった。

本編を終えた後は、あまりのテンションの高さに呆然としてしまった。多くの登場人物たちが限界ギリギリの、さらに多くの偶然に助けられ(なにしろその偶然に助けられなかったせいで何度もバットエンドを迎えてしまっているのだが、物語がつながったときの嬉しさはひとしおだ。バットエンドを迎えたとしても、そこで意識を切らしてしまうことなく、新しい道を模しようと言う意思を引き出してくれると言う意味でもこの作品は優れている)、最終的な大団円につながっていくまでの物語はすさまじかった。あまりのテンションの振り幅のせいで、うっかり感動してしまったくらいだ。友情、愛情、親子の感情、とにかくさまざまな問題が一つの物語につながっていくことは、並大抵のものではないと思うのだった。

以下余談。

ボーナスストーリーもやってみた。我孫子武丸のストーリーについては、あー泣かせに入っているなーと言う感想しかもてないのだが、まあ本編で放置されていた鈴音の話をフォローしているのでまあいいか。ちょっと我孫子シナリオは、独白がおっさんくさいんだよな。少年の独白とは思えないが欠点だ。

TYPE-MOONシナリオは、まあTYPE-MOON以外何ものでもなかった。短いながら、超人的なアクションにかっこいい警句(主に大塚明夫)、ぶつかり合う因縁。それらを上手く消化していたなー。もっとも428的には浮いていること甚だしいので、428プレイヤーがどう思うのかは不明。まあ場所が変われば世界も変わるんですよね。

あとアニメの『CANAAN』における大沢マリアのカナン好き好きぶりが本編公式であったことに驚いた。マリアの記憶喪失回復のきっかけからしてカナンってのは、本当にマリアはどんだけカナンが好きなんだよ。お父さんの立場ねーな。

『CANAAN』を観ているだけでは分からなかったアルファルドやカナン、マリアやミノさんの前日譚としても非常に面白く、いろいろ腑に落ちる感じ。アニメはアニメで、前知識なくても面白いようにきちんと作っているけど、やっぱりゲームをやっておくとキャラクターへの知識が深まるよね。特にアルファルドは、ゲームの方でも不気味な迫力があってよかった。一般人の目から見ると、アルファルドって本当に怪物だよなー。超怖えー。アニメではカナンが超人に近いからこそ、比較してアルファルドも怪物ではなくなっていると言う意味もあるのかもしれない。

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2009.09.07

『ドラゴンランス(1)(2)廃都の黒竜(上)(下)』読了

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ドラゴンランス(1)(2) 廃都の黒竜 (上)(下)』マーガレット・ワイス&トレイシー・ヒックマン/角川つばさ文庫)読了。

RPGファンタジーものとしてはすでに古典と言えるドラゴンランスシリーズ。角川つばさ文庫版が出ていたのでつい買ってしまった。恥ずかしながら、ドラゴンランスシリーズは存在やあらすじだけは知っているものの読んでいない箱に入っていた作品なのだが、これを機会に読了本の箱に入れて行きたいところだ。

物語は指輪物語に代表される剣と魔法の物語。作品の外枠としてD&Dのノベライズと言う側面があるので、設定的な面はそちらに準拠しているけど、まあオーソドックスな剣と魔法の物語の知識があれば問題なく読める内容だ。エルフとドワーフ、ケンダー(ホビットみたいなの)、戦士に騎士にレンジャーに魔法使い。いわゆるそうした職業についている仲間たちが5年ぶりに再会し、ある探索の物語に向かっていく。鍵となるのは青水晶の杖を持つ蛮族の姫、ゴールドムーン。身分違いの恋のために部族を出奔し、放浪する彼女の持つ青水晶の杖をめぐり、冒険の旅は幕を開ける。

冒険の仲間たちは、ハーフエルフのタニス、ドワーフのフリント、ケンダーのタッスルホッフ、戦士キャラモン、その双子の弟の魔法使いレイストリン、騎士スターム。それにゴールドムーンと恋人リヴァーランドを含めた面々で旅立つ冒険の旅。だが冒険は当然のことながら安全には行かない。青水晶の杖を狙う、異世界の侵略者、ドラゴニアンたちとの戦いの末、タニスたちは、青水晶の杖とは、すでに世界からは立ち去って久しい古代の神々と深い関わりがあることを知る。世界にもたらされようとする災いに対抗するためには、真なる神々への協力を求めなくてはいけない。

冒険の旅を続けるタニスたちだが、皮肉屋で暗い激情を秘めたレイストリンを始めとして、仲間たちの間にさえ不和が広がり、冒険は困難に見舞われていくのだ。

このレイストリンと言う魔法使いは、タニスが表の主人公であるとすれば、彼は裏の主人公であると言える。彼の存在が、ありがちな”善”と”悪”に落とし込まれかねない物語を重層的で深みのあるものとしているように思う。レイストリンは、体の弱く、虐げられる少年時代を送った結果、強く、健康なものに対する嫌悪と、力に対する渇望に囚われた魔術師だ。だがその一方で、弱きもの、弱さゆえに悪に落ちるものに対しては、共感と優しさをもって接していく。世界のすべてを恨みながら、優しさの側面を見せるレイストリンのキャラクターは、実に陰影が深く、興味深い。

ここで感じられるのが、この作品は、善と悪の二元論に疑義を提示していると言うところだ。善は最初から善があるがゆえに善なのか?悪は悪として生まれついたがゆえに悪なのか?おそらくはそうではない。人は正しくありたいと思うからこそ善を希求し、弱さゆえに悪となる。物事を正義で断ずることのない豊かさを、この作品は持ち続けているように思えるのだ。

ずるくて汚いどぶドワーフたちも、弱さゆえに、虐げられたがゆえにずるく、臆病な彼らを、レイストリンは決して虐げない。弱さゆえの苦しみを、彼は知っているからだ。弱い自分を憎悪し、そんな自分をただ庇護しようとする兄に苛立ちながら、それでも彼は危ういところで悪に落ちるところにないのは、そのような優しさがあるからだろう。

真善美は、決して共通項があるわけではない。それらは独立した項目である。正しく真実でありながら醜いこと、美しいが誤っていること。それは人間の世では当然のことである。決して二元論で形作ることができるものではない。この作品は、”善”と”悪”の戦いを描きながら、”正しいこと”と”強いこと”と言う問題にも取り組んでおり、実に現代にも通じる問題意識を持った作品であると思うのだった。

つばさ文庫版収録に伴い、多くの人に読まれて欲しい作品である。もちろん個人的にも続きを大変期待しているので、途中で刊行中止などないよう、最後まで出版してくえれることを切に願うものである。

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2009.09.06

『サムライガード(4)』読了

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サムライガード(4)』(舞阪洸/GA文庫)読了。

美少女剣劇活劇も4巻目にして大蝦夷学園編の最終巻。まあ、相変わらずゆるーい作風は良くも悪くも健在だ。大蝦夷学園を舞台にした武器密輸の陰謀を暴く、と言う話なのだが、まあ今までどおり、なんにも変わらなかったや。例によって美少女に剣術バトルを繰り広げさせると言うそれだけの内容になっております。うん、まあ、そろそろこの作品について語るべきことがなくなって来た感じがありありですよね。一体、いつまで作者はアクションだけで持たせるつもりなんだろう…。正直、それほど楽しくないと言うか、全体的に物語が弛緩しているので、読んでいる方としても、あまり緊張感を維持できないんだよね。なにがあっても決して無残な展開はないだろうという、悪い意味での信頼感があるんだよなー。

主人公は相変わらず女の子にモテモテで、おいしいところだけ全部持っていく感じのエロゲ主人公ぶりは相変わらずだし、主人公をめぐるハーレム体制も磐石だしで、その路線は毎回のパターン通りなので、どうしても毎回同じことをやっている印象がある。と言うか、そもそも作品としてのまとまりが悪いよね。なんつーか、大蝦夷学園編を3巻もかける必要性はまったく感じられなかった…。もっと短くても良かったんじゃないかなあ。下手をすれば1巻でも収まったんじゃないかと思わないでもない。内容が散漫と言うか、薄めたスープを飲ませられたような感じがするんだよなー。女性キャラ分もアクションも剣術薀蓄もどれも中途半端、サスペンスとしても薄いと、どう評価したらいいのか困ってしまった。うーん。

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2009.09.04

『アップルジャック』読了

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アップルジャック』(小竹清彦/幻狼ファンタジアノベルス)読了。

主人公が心優しき殺人鬼(殺し屋じゃなくて)と言うあたりにTYPE-MOONの匂いがしてくるのだが、さらにその殺人鬼の元に少女がやってきて共同生活を始めると言う展開に至ってはどこのレオンよ、と思ってしまうのだが、この作品の非凡なところは、この殺人鬼は酒をこよなく愛し、とあるバーで、気の置けない友人と共に一時を過ごすというその空間の描き方がとても洒脱であると言うところだろう。決して殺人鬼と少女の世界に閉じていくのではなく、お洒落で粋なバーの雰囲気が物語に開放感を与えてくれるのだ。また、これは物語早々にわかることだし、さらに口絵の人物紹介でもばらしているので書いちゃうのだが、殺人鬼が通うバーには、美しき復讐鬼と、陽気な殺し屋が集い、お互いの素性を知らぬままに、酒を酌み交わし、友情を深めていく過程が非常に面白かった。

酒に良い、語り合い、今日の友情と未来の絆のために酌み交わす。そんな雰囲気が非常に美しくも楽しげで、いわゆる”伝奇”的な要素とはかけ離れたものがあるのだった。要素としては伝奇としか言いようのない登場人物であり、当然のようにバトル要素もあるのだが、しかし、バーにおける常連たちの空気はどこまでも陽気で親しげだ。少女もまた(酒は飲まないが)その空間に参加することになり、家族的な空間が構築されていく。殺人鬼と復讐鬼と殺し屋の、奇妙な宴は続いていく。その空間は少女の抱える物語を解決するために動き始め、少女を中心に構築されていく奇妙な仲間たちは、少女を助けるために戦いを始める。

少女を取り巻く、愛すべき”怪物”たち。決して表舞台に立つ事の無い、薄暗い欲望を抱えた彼らは、しかし、奇妙なまでに朗らかだ。自分たちは外道であることを知りながら、それを受け入れて生きることに後悔も躊躇いも後ろめたささえ感じることは無い。外道であり怪物である自分たちを受け入れ、その上で生きることの喜びを謳歌する。怪物たちの饗宴は、なによりも愛情深く少女を包んでいくのだ。

陽気な怪物たちに祝福あれ。自らの欲望に塗れながらも世界と折り合いを付けていく彼らの姿は、どこまでも楽しげだ。願わくば、彼らの空間が少しでも長く続いていく事を願わずにはいられない。ポップでキュートでマッドでクレイジーな彼らの愛情深い物語を紡ぐこの作品は、決してめでたしめでたしでは終わらないものの、どこか心に暖かいものを残していく。これはそんな作品であると思うのだった。

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買ったもの

1.『ワンピース(55)』 尾田栄一郎 集英社
2.『銀魂(30)』 空知英秋 集英社
3.『さよならの次にくる【新学期編】』 似鳥鶏 創元推理文庫
4.『ゾディーク幻妖怪異譚』 クラーク・アシュトン・スミス 創元推理文庫

買った。

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2009.09.03

『機動戦士ガンダムUC(9)(10)虹の彼方に(上)(下)』読了

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機動戦士ガンダムUC(9)(10)虹の彼方に(上)(下)』(福井晴敏/角川書店)読了。

ガンダムとは、ニュータイプとは、そして世界を揺るがすと言われるラプラスの箱の正体のすべてが明かされるガンダムUC完結編。いやー、本当にこの作品は厄い。最後の最後まで福井晴敏のオレガンダムサーガが迸っていた。”オレの”ガンダム、”オレの”ニュータイプ論を心行くまで語ってくれたと言う感じ。素晴らしいですね。まさに神話としてのガンダムを正々堂々と示してしまったと言う意味で、これはまったくガンダムだった。ガンダムとは人の思惟!人と人を繋げるものこそニュータイプ!そして進みすぎたニュータイプとオールドタイプの葛藤と対立。立ちふさがる荒涼たる暗黒の思惟。乗り越えられるニュータイプとオールドタイプの垣根。いやーすごいなー。まさに力作と言うか、ロボット物のジャンルを越えて、SFの領域に足をつっこんでいるよこれ。ガンダムってのはSFなんだよ!という作者の叫びが伝わってくるようだ。そうだよなー、言われてみれば、新人類と旧人類との泥沼の葛藤とか、いかにもSFチックな設定だもんなー。本当にSFだわ。それをストレートに主張してしまう作者には危ういと言うか厄さを感じないではいられないんだが、それを無視して突っ走るのが福井晴敏の真骨頂であるので、これはガンダム小説にしてまさに福井晴敏の作品と言うことができるだろう。いや、これは本当にこれは福井小説としても力作の一言だ。ニュータイプによる人類の革新の話題にまで話を飛躍させつつ、しかし、現実を生きていく人間たちの話にまとめたのは、どうなんだろう?物語を消化仕切れなかったのか。いやそうやって一つ一つ、地に足をつけて解決していくことは、真に分かり合うと言うことを言いたいのではないかなー、と思うのだった。

こうして世界は連邦とジオンのくびきから解き放たれ、その後の新しい時代に移り行く。そのきっかけとなる物語として、福井晴敏の伝奇作家としての手腕がまた唸る唸る。ガンダム史に刻まれる(捏造される)新たなる一ページがそこにはある。ネオジオンの最後を、ラプラスの箱の正体とともに、決着をつけてしまった力技には惚れ惚れとしますよ。本当に凄い捏造だよ。でもねー、この上での、その後、閃光のハサウェイに続いてしまうのだから、人間とは本当に救いがたい生き物だよね、と言う無常感に回収されてしまうところもまた作者の意図するところなんだろうなー。そうやって人間は過ちを繰り返し、それでも生きていかなければならないのだ、とか。

まあ、そんなカッコいいことを書いてみたけど、結局のところ「うひょーオレのガンダムが最高だぜー無敵だぜー」「オレの考えるニュータイプはこうあるべきだぜー」と主張しているだけと言う本当に厄い話なので、重度のガンオタの皆様は是非読んでみるといいんじゃないでしょうか。ガンダムに対する作者の暑苦しいまでの愛情が感じ取れて、楽しいですよ。ある意味。

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買ったもの

1.『バガボンド(31)』 井上雄彦 集英社

買った。しかし、又八のお袋さんがものすごく良い人になっていてびっくりする。言葉の一つ一つに深い愛情に満ち溢れており、凄く感情が揺り動かされてしまうなー。なんか騙されているような気もするが、とにかくすごいなあ。

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2009.09.02

『オウガにズームUP!(3)』読了

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オウガにズームUP!(3)』(穂史賀雅也/MF文庫J)読了。

3話構成の連作短編集の形式になっている。一話目、二話目は、前巻でけっこうユージの気持ちもハッキリした感じがあって、あまり動きが無かったな。2巻でククルに対して、今の関係の肯定する立場に立ったことで、あまりユージの葛藤が無くなってしまっているんだよね。すでにユージはククルを受け入れている。あとは関係をゆっくり育んでいくだけ。今はその関係構築の状況なので、大きな事件が起こらないのは、むしろ正しい。今は平凡な日常を積み重ねて、お互いを知っていくことが必要な時期なのだ。

一話目の「12/12」については、新キャラ登場の回として、アリアンナこと姑さんの登場してきたわけですが、結局、ユージとククルの絆を再確認する回だったのはまさにその象徴。お互いのことはすっかりわかっていると言う感じの関係性には、思わず「夫婦か!」とツッコミを入れたくなってしまう。いや、夫婦なんだけどな。そんな感じで、少しずつ関係を深めていく二人の描写が、穂史賀雅也らしい繊細な描写があって、見事だと思うのだった。

一方、二話目の「バード・ウォッチング」については、ユージとククルの関係性に、今後の波乱の目が生まれつつあると言うことがハッキリと示される回になっている。ヤクモンやら日下部やら、ユージに対して好意のありやなしやと思われる女子の存在をククルが知ってしまうと言うところが新展開。ユージが意外とモテていると言うことを知って、非常に複雑な心境に陥っているらしきククルの描写がキュート。風呂場やユージに相対したときだけ表層化するところなんかが妙にリアルだよな。ククルも女の子だよ。ユージ本人はまったく自覚のないまま、水面下での抗争は激化していくのであった。いやー、女子ってマジでおっかないですね。なんと言うか、このあたりの男子と女子の意識のズレをきちんと描いているところも、作者らしい丁寧な心理描写であると思ったな。こういう心理の描き方に、直接的に描かないところに作者のセンスが垣間見える。僕は穂史賀雅也のこういうところが好きなんだよ。カッコいいよね。

しかし、一番仰天したのが、三話目の「理科準備室の星々」。こーれーはーすげえ。穂史賀雅也がフルスロットルになっている。ユージとククルの話しからは離れて、事前にちまちまと脇役で登場したり、噂話だけで出ていたりした二階堂少年の、恋の物語。理科準備室の、静かなイメージが、ぶわっと広がりを見せるシーンがあちこちにあって圧倒させられる。二階堂少年が、居眠りをしている上村先生との距離感が狭まっていくシーンも良い。世界が収束し、二人の距離が吸い込まれるように近くなっていく引力と言うか、二階堂少年の気持ちが反転する瞬間の世界を揺るがす、しかし、静かな激震とでも言うべきものが感じられるのだった。この短編は本当に素晴らしく、久しぶりに満足感のある短編を読んだという実感を感じられるのだった。

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ドラクエ9プレイ日記(10)

・とりあえずクリアしたー。

・ドミールの里。空の勇者の老害ぶりはひどいな。「なんか気に入らん」という理由だけで襲い掛かってくるわ、酒を飲めば機嫌が良くなるわ、耄碌ジジイの典型って感じだぜ。ムービーパートは格好良かったけどね。

・カデスの牢獄。随分遠くまで連れて来られたものだなあ、と後で地図を確認してびっくりした。そもそも船でも行けないところなんだけど、どうやって行き来しているんだろう?闇竜さんの力なんでしょうか。

・大脱走の展開には納得。みんな帝国に逆らうだけの気骨ある人たちなので、チャンスがあれば当然反乱を起こすよなー。

・ゴレオン将軍の痛恨が痛かった。唯一ザオラルを使える僧侶を必殺されたときは頭を抱えたぜ。貴重な世界樹の葉を…。

・テンチョー来たー。

・神の国へ。まあ通り過ぎただけ。

・ガナン帝国城。ダンジョンの入り口でボスとは新しい。ゲルニック将軍はあんまり強くなかったね。ギュメイ将軍はさすがに強かった。こいつのまじん斬りはなんかおかしいぞ。ガスガス当るんだけど。地味に切り上げで転ばせて、まじん斬りの組み合わせはうざかった。まあ一回全滅したぐらいだけどな。皇帝陛下はギュメイ将軍に比べると楽だった。

・なんかなー、帝国関連のエピソードはちと微妙と言うか、あまり面白くないよな。突然、世界征服の企む悪の帝国なんて現れても、なんかドラクエ9的に浮いてると言うか…。登場キャラもあんまし魅力的じゃないしね。

・エルギオス関連。サンディさんは本当にぱないの…。あの深刻で悲劇的なエピソードを聞いて、エルキもすとかのたまうサンディさんには、一週して感心させられた。まあ確かに悲劇的だし、気の毒だけど、あの格好、言動はキモイよね。サンディさんは空気読まないだけに、真実を突くなあ…。

・個人的にはこういう物語に水を差すと言うか、常に客観視点を忘れない演出は好感が持てますね。だって、エルギオスの話が悲劇的なのはわかるんだけど、反応に困っちゃうもの。それはそれでキモイと指摘してくれるサンディさんは物語を一つの方向に向かわせようとする息苦しさに風穴を開けてくれる効果があると思いました。

・しかし、殺されたと思った主人公が、なんの説明もなく復活するのには吹いた。お前は不死身か。

・主人公が人間になっちゃいました。でも別に今までとあんまり変わらないよな。随分前からすでに天使の自覚なんてなくなっていたぞう。

・ここでまたしてもさすがサンディさん!天使たちがみな「お前だけが頼りだ!」とか言っている中で、「なんで主人公ばっか頼るの?そんな義理ないよ、このまま逃げちゃおうよー」とか言ってくれるサンディさんは、おそらく唯一”主人公自身”のことを心配している。世界のことなんて気にせず、主人公のことだけを考えているところがいいよな。これはRPGのお約束テンプレートに対するアンチテーゼであり、サンディさんは、常にサンディさんであり、”世間”とか”義務”とかそういうものから解き放たれている。畏敬の念さえ覚えてきたぜ。

・ラスダン。復活怪人は雑魚の法則に則り、それなりにレベルの上がった主人公パーティに一蹴される将軍たち。バトルマスターが無心こうげきを覚えたのが地味にでかい。おうえん、ためるで2ターンでスーパーハイテンション+バイキルト+無心攻撃でだいたい2200ダメージ。3ターンあれば勝てる。

・エルキもす…じゃないや、エルギオスとバトル。その前の闇竜とかのバトルはたいしたことなかったけど、さすがにラスボスだけあって、最終形態モードはなかなかに強い。まさかスーパーハイテンション+バイキルト+無心攻撃を2回あてても倒れないとは恐れ入ったぜ!まあ運が良かったのかもしれないけど、回復しつつ無心攻撃をぶちあてまくっていたら倒せた。

・エンディング。サンディさんがけなげで泣かせる。あれ?オレ、サンディさんのこと好きになってる?あの憎まれ口が聞けなくなるなんて寂しいぜ。そんな自分にビックリだ。

・まだまだ冒険は続くみたいだけど、しばらくお休みかな。気が向いたら続きやる。

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日々の雑記

・よーやく風邪が治ってきた…。今回の風邪は長引いたな。咳きがとまらなくて熱も出たりと、なかなか大変だったぜ。不摂生が祟っているのかもしれないな。

・ジャンプを読んでた。

・先週からぽっと出のキャラが今週死んだのだが、驚くべきことにその死に動揺している自分がいる。別にレギュラーが死んだわけでもないにな。作者のキャラへの感情移入させる手腕の巧みさには恐れ入るしかないな。

・ToLoveるが完結。これは打ち切りかなあ…。なんかここ数週の感じからすると、バタバタとした終わり方だ。まあハーレムエンドでだれも不幸にならない終わり方は、徹底したぬるま湯マンガを貫いたと言えるわけで、これはこれでブレが無い。意外と良い終わり方だったかも?

・鍵人が面白くないなあ…。悪役が最初は大物っぽくみせて、見る見るうちに小悪党になっていくのが読んでいてつらい。あと、最初に規定した主人公の能力にいきなり例外を作ってしまうのはどうなのか。論理バトルはやる気がないのかな…。

・ぬらりひょんも、非常に危惧した展開になりつつある。畏れが体系化され、バトル理論化していくのが非常に悲しい。これがジャンプマンガの運命なのか…。もう羽衣狐さまがどんだけエロ恐ろしい畏れを魅せてくれるのかしか期待するところないよ!

・めだかボックスとかね。僕はわりと好きなんだけど、このバトル展開はどんなものだろうね。西尾維新的にはもちろんこれぐらいは考慮していたと思うけど、本格的にバトルのか、それとも作者らしくスカすのか。どちらとも取れるので、良く訓練された西尾読者としては、どちらになろうとも受け入れる所存。

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買ったもの

1.『追憶五断章』 米村穂信 集英社
2.『金のゆりかご』 北川歩実 集英社文庫

買った。

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2009.09.01

『僕は友達が少ない』読了

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僕は友達が少ない』(平坂読/MF文庫J)読了。

ラノベ部と違って好き放題書いた、と言うのは作者の言だが…正直、ラノベ四コマと言う意味では方向性としては同じような気がする。と言うわけで、個人的にはラノベ部と非常に近い傾向があるかと思います。残念残念と強調されているけど、主人公はなんだかんだでリア充しているのであまり残念だとは思えなかったり。だって美少女と一緒にプールに行っている時点ですでにリア充決定じゃろ。その意味では登場人物たちに感情移入するのは難しいよなー。全然、残念じゃないもんなー。まあ素直に友情とか恋愛とかコメディを描くことが出来ない作者なりの韜晦と言うかツンデレなので、まあ一言で言えばいつもの平坂読だよね。

そんなわけで、友達がいない自分をひたすら自虐した駄目人間コメディに、ラノベ的(ラブコメ、ギャルゲ的)修飾を施すことで、得体の知れないものを作り上げており、作者の作品を愛好する人にはなんの問題もなく楽しむことが出来る内容になっている。平坂読はやっぱり自虐ネタが好きだなあ、と思うわけだけど、その自虐ネタを、あくまでもラノベ的フォーマットに乗せているために、忌避感を感じられにくいというところは手腕を素直に褒めるべきところだろう。初期作品では自虐がそのまま出すぎている傾向があったので、今作ではうまくベタに包んでいるあたりに、作者の確かな成長が見受けられる。…まあもうちょっと素直に成長してもいいんじゃないかなあ…と言う気もするのだが、素直な平坂読など平坂読ではないので仕方の無いところなのだろう。

ええと、内容については、非常に説明し難いな。なにか特筆したテーマがあるわけでもなく、なにかが過剰にあるわけでもない。隣人部のメンツの、一緒に遊んだり、いがみ合ったり、部員を募集したりする、平凡ながらケッタイな日常を描いている。なにも事件が起こらないのに面白い日常を描けると言うのは、けっこう大変なものだと思うのですよ。こんななんでもない日常を描きながら、作品としてはあくまでもラノベと言うフォーマットを外していないというのは非常に面白い感覚だと思う。ダラダラと部活をしてだべったりする楽しさと言うものを、このように上手く描いている作品はわりと貴重であろう。下手にサスペンスフルな作品を描くよりもかえって難しい方向だと思うので、作者の力量を軽く見るわけにはいかないのではないか、と思うのだった。

この良い意味でのやる気の無さがとても読んでいて気持ちが良いと思うのでした。なんとなく繰り返し読んでしまうタイプの作品だよな。その空気に何度も触れてしまいたくなると言うか。

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