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2009.09.27

『晴れた空にくじら(3)浮鯨のいる空で』読了

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晴れた空にくじら(3)浮鯨のいる空で』(大西科学/GA文庫)読了。

晴れた空にくじら完結編…って、えーマジかよ…。まだまだ話としてはこれからじゃん。納得いかねーなー…いや、打ち切りなんでしょうけどねわかってますよ。

まあ残念なこと極まりないけど、鯨船という架空のテクノロジーを基幹に置いた冒険ロマンとしてはきちんと物語を締めているので、不満はそれほど多くない。基本的に、クニの敵討ちの物語が軸になっていて、その過程で雪平とクニの間における感情のやりとりが主眼となっている。クニは仇を討つことが出来るのか、と言う側面と、そもそも仇を討つことそのものが正しいのかとい倫理の問題を巡って、雪平とクニが対立する。無論、そのやりとりの中でお互いを意識し始めてロマンスの花が咲いてくるのだが、作者らしくそのあたりは実に上品に描写しているのはさすがである。ラブコメを期待している向きには不満もあろうが、そういう話じゃないしな…。

敵討ちにすべてを賭けているクニに対して、戦争が終わったら一緒に貿易でもやろうと持ちかける雪平に対して、クニは答えを返さない。それに対して、自分はクニの力になれないと無力感に囚われる雪平が、最後に決断する展開は、お約束と言ってはなんだが、非常に”正しい”展開だと思う。復讐は何も生み出さない。新たな憎しみを生み出すだけであり、憎しみの連鎖を断ち切るためには誰かが耐えなくてはならないということを、復讐以外の未来を雪平がクニに提示することで決着をつけている。

そして、それら人間の争いすべてを俯瞰するように存在する”浮鯨”の存在。人間とは異なるスケールで存在するそれが、人間の諍いすべてを包み込んでいる。短い巻数の中、浮鯨という超越したスケールの存在もきちんと織り込んでいるあたり、作者の設計の確かさを感じるものの、やはり3巻で終わらせている影響か、いささか説明不足である印象を否めないのだが、それはむしろ作者の手腕を褒めこそすれ、貶めるものではないだろう。ただ、自分はもう少しこの物語に耽溺したかったと言う気持ちが引き起こしたものであろうと言うことは、自覚しているつもりだ。

きちんと決着はついているものの、勿体無いなあ、と思わざるを得ない最終巻だった。まあ惜しまれて終わるうちはまだしも幸福な終わり方ともいえるが。そのように自分を慰めるのだった。

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